第13話 お年玉で10万円もらった話【トモ・ケイジ・小島父】

トモと一緒にいると小島は楽しかった。

1年間教室で誰かと話す事がなかったこともあって「ただ話すって事がスゲー嬉しい」と感じていた。

そして次第に小島も周りの目を気にせずトモと話すようになっていった。


「なー、トモ。お年玉で最高いくらもらったことある?1人から。」


「今年1万もらった!」


「へー、俺、小学1年の時に5万もらったわ。」


「マジ!?」


「うん、まじ。小学3年の時は10万くれた(笑)。」


「ぜってぇ嘘だ!」


「ほんとだって、親父の親類にケイジ君っていうヤクザがいて…」


「ぜってぇ嘘だ!!何でヤクザなのに刑事君だんだよ!」


「いや、ほんとだって、聞けよ(笑)。

10万円はケイジ君からもらったんだけど、姉ちゃんと兄ちゃんには1万円ずつだったのに俺だけ多くくれてさ、たぶん俺が可愛かったんだろうな(笑)」


「ぜってぇ嘘だ!!」


「ん?金額?ヤクザなのにケイジ君?それとも俺が可愛いこと?」


「全部!」


「どう思うかは、好きにしろよ。

俺は本当のことを言ってるだけだから。

でさ、ケイジ君、ヤクザだから親類から浮いてたんだけど、親父とだけは仲が良かったみたいで、2人でバカ笑いしながら話してた記憶があるんだよね。

小学3年の正月に、親父が運転する車でケイジ君と俺の3人で大滝村の山の中へドライブに行ったんだけど、狭い山道で車1台がギリギリ通れる道でさ、1台対向車が来て、どっちもバックして譲る気がなくてクラクションを鳴らしあってたら、親父が『ケイジ!行ってこい!』って言ったんだよね。

そしたらケイジ君が車を降りて、肩で風を切る歩き方って言うのかな?ベタなヤクザの歩き方って言った方が分かりやすいかな?まぁとにかく、ケイジ君が威圧感丸出しで対向車に向かって行ったら…ケイジ君の歩く速度と同じに対向車がバックしていってさ。

それを見ていた親父は車の中で大爆笑!

つられて俺も笑ってたんだよね。

ケイジ君と一緒にいると親父もよく笑うしおもしろくって、年に1回ケイジ君と会うのは楽しみだったんよ。

で、次の年の正月はキャッチボールをやる約束してたけど…ケイジ君、組の抗争でピストルで撃たれて死んでさ…」


「マジ!?」


「まじ。葬式は、たくさんの組員が来てて異様な雰囲気でさ…親父が棺の前で『けいじぃぃ』って叫んで泣いている姿に俺ももらい泣きしてさ、親父の見たことのない姿だったから…

でさ、親父が遺品としてケイジ君が着ていたスーツをもらってきて、家で着て見せてきたけど…死ぬほど似合わなくて、腹抱えて笑ったわ(笑)

ちなみにケイジ君からもらった大金のお年玉で、夢のビックリマンチョコを段ボール買いしてやった!

ビックリマンチョコ360個(笑)。

親にめっちゃ怒られたけど、学校ではヒーローだったわ!」


「小島ちゃん、その話…笑ったらいいの?悲しんだらいいの?どっち?…」


トモの半笑いで悲しそうな何とも言えない顔を見て、小島は笑っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る