第11話 いじめと集団リンチをされた話【堀田・先生・小島母】

小島は小学校の頃、自分は人気者だと思っていたし、ずいぶん威張っていることも自覚していた。

ところが、中学に上がると状況が一変する。

入学して早々に、小学校の時からよく遊んでいた同級生の4人が小島を無視し続けたのだ。

それは、おばさんから1万円をもらって一緒に猫を埋めた4人だった。

小島には無視をされる理由がよく分からなかったけれど、どうせヤンキーの堀田の悪知恵に3人が付き合っているだけだろうと思ったし、特に害もないので放っておいた。

すると、日に日にクラスメイトも4人と同じように、小島を無視するようになっていく。

そうなってからは早かった。

あっという間に同級生全員が一同に手を組み、小島1人を無視するようになる。

あまりの展開の早さに小島には、何がどうなっているのかさっぱり分からなかったし、まったく手を打つことができなかった。


そして行為は日に日にエスカレートしていく。

小島は野球部なのだけれど、買ってもらったばかりのグローブをカッターで切り刻まれたり、ノートや教科書は破られ、残った全ページに「死ね」と書かれたりした。

給食の時間は、グループごとに机を並べて食べるのだけれど、小島だけいつも教室の真ん中で1人で食べていた。

先生に「どうして1人で食べてるの?」と聞かれても「あ、大丈夫なんで。」としか答えなかった。


集団リンチもあった。

放課後の教室に呼び出されて、後ろからいきなり椅子を投げつけられ、その後はボコボコにされた。

顔中血だらけになって帰宅すると、母親はビックリしていたが、小島は階段から落ちたと言い張った。

その後も4回集団リンチされて合計6か所の骨折を経験する。

けれど学校が動くことはなかった。

なぜかというと小島は頑なに他校の生徒と喧嘩したと言い張ったからだ。

そんなひどい目にあっているのに小島の心はなぜか折れることなく、20人が相手でも勝てるように毎日山に入って1人で修行を開始する。

小島は、誰かに頼ったり、泣いたり、謝ったりなんてするくらいなら死んだ方がましだと考える中学生だったのだ。

そんな訳で大人に何一つ話さなかったこともあって、問題が表ざたになることはなかった。


小島はずっと1人の時間を過ごしていたけれど、孤独な時間を使って、自分なりに何でこんなことになったのかを考えたりもした。


「同級生のほどんどは、同じ小学校から上がってきた連中だ。

中学に入ってすぐ無視されたということは、小学校からのことが原因だな!

でも嫌われることをしたっけ?

ムカついたらすぐ無視したけど…ムカついたら普通無視するよな…これは問題無し!

気に入らなければ暴力振るったけど…これは暴力を振るう、ちゃんとした理由があるから…これも問題無し!

俺と遊ぶときは、必ず50円か100円を持ってこさせたな…俺と遊ぶと楽しいから当然だな!

俺に金を持ってこない奴は、ハブ(仲間外れ)にしたけど…タダで俺と楽しむなんて厚かましいにもほどがある!これも問題無し!」


てな具合で、小島には、無視されたり集団リンチされる理由がわからない。

そこで、クラスの様子を観察してみることにした。

目が合うと、また面倒なことになるので、自分の席から一歩も動かず、机の一点を見つめながらクラス全体にアンテナを張った。

教科書もノートも使い物にならないので、休み時間だけでなく授業中も観察に集中できた。

そんなことをずっとしていると、クラスメイトがどれくらい授業に集中しているかも把握できるようになっていった。

そしてクラスメイトが友達と話している言葉のトーンや間で心の中で何を思っているのかも何となくわかるようになった。

そして、やっと自分がいじめにあう理由が分かってきた。

俺って嫌な奴だったんだ!と。


小学生の時にみんなにしてきたことを悪かったと反省したし、仲良くは無理でもできる事なら普通に学校生活を送りたいと思うようにもなった。

けれど、みんなに謝る気にはなれなかった。

ただ、前とは違う『新・小島』としてみんなと関わろうと行動を変えてみることにした。


ある日、2人1組でグループ学習することがあった。

これをきっかけにしようと思った小島は、クラスで大いに嫌われている女子に「一緒にやろうか!」と声をかけた。

その女子は、うっとおしそうに「無理」と言った。

小島は「ブスのくせに!」と心の中で罵倒し、『新・小島』は消滅した。

そしてまた孤独な時間へ戻った。

そんなわけで小島は、中学1年生の間は1人で口を聞かない時間を過ごし続けた。


そんな状況が変わりはじめたのは、中学2年生の春に転校生が来た時からだった。

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