第10話 ボロボロになったラブレターの話【アイ・真理】
旅行の最終日、小島とアイは早起きをして海沿いを2人で散歩していた。
何気ない会話をしていると、アイが突然「トシ君って好きな人いるの?」と切り出した。
小島は、ちょっと焦った。
というのも、ずっと真理ちゃんのことが好きだったけれど、アイの方がもっと好きになっていたからだ。
小島は、どう答えて良いかわからず、思わず「いないよ!」と言ってしまった。
小島は嘘が大嫌いだ。
そんな嘘をよりによってアイについしまったので小島は動揺した。
そして動揺を隠すために、こんな話をした。
「去年、家の都合で引っ越す事になった子からラブレターもらったよ!
でも手紙が、どういうわけか全方向からホッチキスでガチガチに止められてて、全然開けれなくてさ…
読む時は、もうボロボロだったけどね!」
「あははは、トシ君の話って、いつも嘘みたいに面白いね。」
「みんなにもよく言われるけど、俺は嘘つかんよ!」
と言って小島はハッとした。
さっきアイに嘘をついたばっかりなのに、「嘘つかんよ!」という嘘をまたついちゃった!と…
小島とアイとは学校が違うので、この旅行が終わると、もう会う機会がない。
この旅行が終わる時、それはアイとのつながりが終わることを小島は理解していた。
まだ小学校5年生だったこともあってか、小島に告白したいといった気持ちはなくて、ただただアイのことが好きで、仲良く楽しく過ごしたいだけだった。
そんな最後の日の散歩なのに自分の嘘で台無しにしたことを11歳の小島は悔やんだ。
そんな旅行も終わりを迎え、小島は帰宅した。
アイが乗った車が去っていくとき、アイは小島に手を振ってくれた。
車の窓は閉まっていたけれど、口の動きで「バイバイ」と言っているのが分かった。
小島は、声を聞きたかったなぁ、と思った。
これが小島の人生に大きな影響を与えるアイとの最初の出会いである。
そして再会するのは、まだ何年も先のことになる。
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