第9話 知らないおばさんから1万円もらった話【アイ・ペコ・猫おばさん・小島母】

新潟県寺泊の三日月の形をした砂浜で、小島は初めての海を満喫していた。

砂浜でかけっこの競争もした。

小島とペコちゃんは、学年で1、2位を争うほど足が速かったので、アイはずっと遠くに置いてけぼりになっていた。


夜は子供たちだけで怖い話もした。

その時小島は、前の年に実際に体験したことを話した。


「学校が終わるといつも行く駄菓子屋があって、いつものように同級生4人と駄菓子屋にいたんだけど…

駄菓子屋のおばちゃんが見たことないおばさんと話をしてたから、俺が何かあったのか聞いたんだよね。

そしたら知らないおばさんが、『私は猫が好きで家でも何十匹も飼っているんです。今朝も猫に起こされました。それでこの先の道路で猫が車にひかれて死んでしまっているんですけど…私は急いでいて埋めてあげる事が出来ません。代わりにあの猫を埋めてあげて欲しいんです。お礼にこれを…』と言って1万円渡されてさ!

喜んで引き受けて4人で近くの野原に埋めてたんだけど…何かおかしいな?って思ったんだよね。

だって急いでると言ってたおばさんは、猫を埋めている最中も駄菓子屋の所から俺らを見ててさ、自分で埋められる時間あったじゃん!て思ったけど、お金もらってるし、まぁいいか!って感じで猫を埋めてたんよ。

でさ、埋め終わって駄菓子屋の方を見たらおばさんがいなくなってて…

田舎の見通しのいい一本道だし、ついさっきまでこっちを見てたから見失うわけがないのにさ。

だから急いで駄菓子屋に戻って店の中を探したのにどこにもいなくて…

ほんと不思議で消えたとしか言えないんだよね。

でも手元に1万円はあるし、結局5人で2千円ずつ分けて帰ったんだよね。

そしたら次の日、不思議な事があって…

何回頼んでも買ってもらえなかったファミコンを親が急に買ってあげるって言い出して、その時は嬉しかったんだけど、学校でその話したら、昨日猫を一緒に埋めた4人が同じように親から欲しかった物を買ってもらえる事になったっててさ…こんな偶然ある?

でも、この時はラッキー!くらいの話で終わってたんだよね。

それから何か月か経って、あの猫のおばさんに会ってから不思議なこと続いたよな、って話になって、家に帰ってから親に聞いてみたんよ。

『そういえばさぁ、あれだけダメって言ってたファミコンなんで急に買ってくれる気になったん?』て。

そしたら『あぁー、あの時はね、夢に会ったことのないおばさんが出てきてね。子供の今欲しがってるものを買ってあげなさい。そうしないと子供に不幸な事が起きますよ。って言われて、なんか気持ち悪い夢だったし、本当に不幸な事が起きても困るしね、買ってあげたんよ。』って言ったんだよね…

これ…マジな話。

あのおばさん…車にひかれた猫なんじゃないかって思うんだけど、どう思う?」


その話を聞いていたペコちゃんとアイは怖がっていたけれど、小島にとってペコちゃんの反応はどうでもよくて、鳥肌が立った白い腕をさすっているアイの姿を見て「かわいいなぁ」と思っていた。

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