第8話 笑ってくれなかった女の子【アイ・ペコ・ユウ・徹】

旅館に着いた早々に、小島はビックリした事があった。

ペコちゃんが「あれユウじゃない?」と言うので、ペコちゃんが指さす方を小島が見ると、旅館の入り口に本当にクラスメイトのユウがいた。

秩父から遠く離れた新潟県にユウがいたことに小島とペコちゃんは驚いた。


ユウは少し変わった女の子で、クラスの男子からは少し距離を置かれてたし、女子たちからも煙たがられている存在だった。

けれど小島とユウは、席が前後だったのでよくしゃべっていた。

そういったこともあってユウを見つけた小島は、ダッシュしてユウの所へ行った。

そして何やらユウと話したあと、ニヤニヤしながらペコちゃんとアイの所へ戻ってきて、こんなことを言い始めた。


「俺、ユウが特に好きなわけでもないけど、夏休み前に何気に『ユウ、今好きな人いんの?』って聞いたら、『いるよ!でも誰かは教えない。今年の夏は、その好きな人の家族と海に行くんだぁ。』なんて言ってたんだけど…それペンキ屋の徹君だったわ!」

と言って小島は1人でゲラゲラ笑っている。


さらに続けて、「ユウに『いつどこの海に行くかも知らなかったのに、まさか同じ旅館に泊まることになるなんて、こんな偶然すごいな~、びっくりしたよ~、いや~徹君だったか~、徹君か~、そっか~徹君だったのね~♪』ってユウに言ったら、顔真っ赤にして黙ったまんま下向いてやんの!」と、まだ1人でゲラゲラ笑っている。


アイはユウのことを全然知らないけれど、なんだかユウという女の子が可哀そうな気がして、小島をほったらかしてペコちゃんと一緒に旅館へ入っていった。

どうやら小島は、自ら好感度を下げてしまったようだ。

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