第7話 笑ってくれた女の子2【アイ・ベッキー】

アイは、おなかを抱えて笑っている。

小島もアイと話すのが楽しくなってきた。


「でさ、ベッキーってホントどうしようもないヤツでさ、あいつのせいで、この前もみんなひどい目にあったんだよね。

野球の試合で球場まで、みんなでバスで行ったんだけど、いつも車酔いする奴っているじゃない?

それがチームメイトの浦ちゃんなんだけど、いつも窓側に座っててさ、その隣の通路側にベッキーが座ってたわけ。

しばらくしたら、やっぱり浦ちゃんが気持ち悪くなったみたいで、ベッキーが立ち上がって大きな声で『浦ちゃんがゲロ吐き…ウゲロロォロロォォ』って思いっきりベッキーが吐いちゃってさ!

吐いたところが通路だったから、溶岩みたいにゲロがゆっくり前の方に流れてきて…それを見てた4人が相次いでもらいゲロして…バスの中は地獄になったんだよね。」


「いやー!」


「ちなみに肝心の浦ちゃんは、その日吐かなかったよ。

俺はもらっちゃったけどね!」


「あははは、汚いけど、何かおもしろーい(笑)。

でも何でさっきから吐いた話しかしないの?(笑)」


「なんでだろうね?思い出しながらしゃべってたら気持ち悪くなってきちゃった…」


「もー、大丈夫?」


そんな心配をしてくれるアイのことを小島は「かわいいな」と思うようになっていた。


それからも車中で小島とアイは、たくさん話をして、いっぱい笑った。

学校での出来事や、ポピーの話、父親が馬に蹴り飛ばされた話、ガス爆発の話なんかもした。

けれど、姉にビンタされた後にチューをしてもらうエピソードは、アイには話さない方が良い気がしたので話さなかった。


秩父からの数時間の移動は、小島にとって、あっという間の出来事で楽しかった。

そして2泊3日の旅行先である新潟県の寺泊の旅館に着くころには、お互い「トシ君」「アイ」と呼びあうくらいまで打ち解けていた。

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