第7話拷問からの脱出1日目

目が覚めたが、違和感があった。左指に痛みを感じる。


左指を見るが、俺の左指はもう無かった。


昨日の夜の出来事は、夢では無かった。


俺は顔が真っ青になった。昨日解体された女性はそのまま放置されていた。


このままでは殺される。


俺は考えた。脱出する方法を。


もちろん何も思い浮かばなかった。だが、例の本の事を思い出した。


もし、俺に第5の魔法が使えたら?


俺は久しぶりにステータスチェックを行った。


ステータスチェックは通常魔法だ。


誰でも使える、俺でも使える。自分のステータスを確認するには最も簡単な方法だ。


「ステータス」


魔法を詠唱するとステータスウィンドウが現れた。


相変わらず、平凡な数値が並ぶ。


『だが!』


『タレント』

「eiπ+ 1 = 0」

「虚数魔法使い」レベル2

『ジョブ』

「戦士」レベル10


俺は目を見張った。以前はジョブ『戦士』レベル10と無意味タレント「eiπ+ 1 = 0」だけだった。


『勇者』や『ルーンナイト』のタレント持ちがいる勇者パーティに、タレント無しは価値が無かった。だから、俺は荷物持ちになった。 


俺には魔法使いのタレント等は無かった。


『あの本は本物だったのか?』


それだけでは無かった。


俺には1 つ魔法が使える様だ。


『鑑定』


幻の魔法『鑑定』!


この魔法はあらゆるものを鑑定する幻の魔法だ。


多くの魔法使い、賢者達が探し求めた魔法。それが俺に宿った。


だが、落胆もした。今、必要なのは攻撃魔法なのだ。拘束具を破壊し、リリーから逃げ遂せるには何か攻撃魔法がいる。落胆と同時に疑問がわく。何故、俺はレベル2なのだ?


たしかにレベル1から2のレベルアップなど僅かな戦闘でなる。


だか、俺はエリスと従者の契約魔法を発動させてから、1度も戦闘を行っていない。


『!』


俺は思いあたった。リリーの拷問?


俺は生き残った。


一方的になぶられているにしても、生き残った。


『それで経験値が得られ、レベルアップしたのではないか?』


仮説に過ぎないが、それしか思い到たらなかった。


レベルアップし、攻撃魔法を覚えるのが早いか、俺が殺されるのが、早いか......


どちらにしても、今日もまた、拷問を受けなければならない。


それだけは確かだった。


しばらくすると、この屋敷が雇っていると思われる覆面を被った男が二人、昨日の犠牲者の遺体の後片付けを始めた。

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