第6話 フラグ回収しました
「オイ。ここだろ。テメェが探してた場所ってのは」
フードで顔を隠したままのリザルドは、目の前の建物で立ち止まり。私へ視線を移す。
そこは他のどのお店よりも大きな外観をしていて、木材だけで作られたログハウス感が凄くお洒落な場所だった。
そう。こここそが、私が探していた『勇者案内所』らしい。
「有難うございますーー!!おかげでようやく辿り着けましたよぉ~~」
「……はぁ。なんで俺がこんな目に」
あれからリザルドを引き止めては、何度も仲間になってほしいと駄々をこねていると。カルナが目を覚ましかけていたので、面倒なことになる前に私達は慌ててその場から立ち去った。
それからもリザルドはずっと文句たらたらだったけど。なんだかんだここまで連れて来てくれたというわけである。
「リザルドさんって、見た目通りツンデレですよね。最高です」
「つんでれ?ってのが何だか知らねぇが。馬鹿にされているのは分かる」
「馬鹿になんてしてませんよ!!寧ろ誉め言葉です!!ツンデレ受けは腐女子の宝庫ですから!!」
「…………あっそ」
自重を知らない私の腐トークに、もはやツッコミすらしてくれなくなったリザルド。
黒いフードの隙間から見える白い髪とくたびれた顔が、凄いドツボで今にも発狂しそうだったが。グッと堪えた。
「よし!では、勇者登録しに行きましょう!」
「は?ちょっ、オイ!」
嫌がるリザルドの腕を引っ張りながら建物の中へ入ると、そこはアニメや漫画で見るギルドという場所にそっくりだった。……というより、まさにそういう場所なのだろう。
可愛い受付嬢がいて、壁には大量の書類の様な紙が貼られている。その紙を見ている勇者達と思しき人達が「今日はこの魔獣退治に」とか「ここの魔人達を倒しに」なんて言いながら、紙を剥がして受付の人へと渡している。
「なんだか勇者っていうより、冒険者みたい」
「ぼうけんしゃ?」
「え、あぁいや。なんでもないですよ」
顔を見られないように俯いたままのリザルドは、なるべく小声で喋りながら、受付に並ぶ私の後ろにピッタリとくっついている。
ピ〇ミンかよって思って、その愛らしさについ口元が緩んでしまっていたが。よくよく考えたら、私がリザルドを一番危険な目に合わせてしまっているではないか?と、今更になって気付いてしまった。
もしもここでリザルドの正体がバレてしまえば、きっと私は……どうすることも出来ない。
いくら魔力が強くても、戦闘経験がない私が、この人数の勇者を相手にするなんて到底出来ないだろう。
そしてそれは、リザルドも分かっていたはずだ。
それなのに……私の我が儘に付き合ってくれて、ここまで着いてきてくれた。
「浮かれてる場合じゃない」
妄想を薙ぎ払うように頭を振って、にやける口を手でパシッと叩く。
私はここで勇者になって、今一番の推しキャラであるリザルドを守ってやるんだ。
そしていつか、カルナとくっつけさせる。
「なにやってんだ?順番回ってきたぞ」
肘でつつってきたリザルドにハッと我に返ると、貧乳の可愛い受付嬢が、笑顔作って私を待っていた。
「あはは!ごめんなさい!あの、勇者になりたいんですけど。ここで登録出来ますか?」
「はい。出来ますよ。勇者新規登録ですね。それではここにお名前とご希望の武器。それと、倒した魔族の数をお書きください」
「へ?倒した魔族の数って……いなかったらどうすればいいですか?」
「いない場合は、勇者登録が出来ません」
「なん……だと?」
待て。エドナからそんな話は一切聞いていない。
……いや。思えば最初から色々と説明不足だったのだから、こういう重要なところも伝え忘れているのはあり得るかもしれない。
「そんなぁ……どうしよ」
「知らねえぇよ。それとも……俺を倒しとくか?今ならテメェでもすぐに殺れると思うぞ」
「そんなことしませんよ!リザルドさんは仲間なのに」
「……そうかよ。じゃあ、都合よくここに魔族が来ることを願うんだな。ま。有り得ねぇだろうけど」
「あはは。フラグ立てるようなこと言わないでくださいよぉリザルドさん~~あははっ」
その瞬間。
ゴシャ!!と大きな衝撃音が鳴り響いた。
「フラグ回収しちゃった」
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