第3話 午前三時の小さな攻撃

 私は今ここにいる。時間は夜中、今日も眠れないまま朝になりそう。外は雨で、閉めきったカーテンの向こうで雨粒が跳ねる音がずっと聞こえる。


 ベッドの中には小さな妖精がいる。四角いライトを持っていて、私と世界をつなぐ魔法をくれる。男の子であまりしゃべらない。私はアラームをつけない。つけても彼は起こしてくれない。私のことを怒っているのだ。

 彼だけじゃなく私以外のみんな。階段は転ぶしお湯は熱いし、犬は吠えるしおばちゃんは悪口を言いあってる。店員は嘘つきだし、友だちも彼氏もいない、暴力的だったし。仕事は疲れる。なにもしない私にみんな攻撃をする。みんな当たり前のことだ。時に魔法で攻撃される。私なんかの防御力では効果はばつぐんだ。しばらくまたなにもできなくなる。なにもしたくなくなる。

 私が攻撃される理由を考えてみた。四角い世界の向こうや、カーテンの向こうの世界にだって、私は大したことはしていない。ただここにいる。だけどそれが世界の人にとって攻撃の対象なら、私は元々そういうつくりで生まれたのだ。


 そんなことを考えながら、貯金を切り崩して暮らしている。貯金が底をついて、宅配便が届かなくなれば私はゆっくりと本当になにもできなくなるだろう。


 時々覗く向こうの世界の様子、嫌なことや危険なことがたくさんある。私はもうたくさんだ。この安全な小さな部屋から出たくない。出られないんだ。


 ある夜小さな妖精は四角い画面を塞いでいた。

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