ケツァル――ルビー・ケツァルが野生に返ること
エル・シンラップ紙の記事で、ルビー・ケツァルの放鳥の記事を読む。先日、密輸船から保護された最高級の魔鳥の一羽だ。
頭の冠から長尾羽根まで、あらゆる種類の赤色に祝福されたこの鳥は、炎華鳥という別名どおりに飛翔姿がまるで命ある炎だ。嘆かわしいことに、長いあいだ、その美しさ故に富裕層の自己顕示欲の対象とされてきた。
ほんの数年前に飼育が禁止されたのは、皮肉にも、強硬に反対していた貴族の家が、この鳥を使った強盗に押し入られたためだ。
多くの種で、ケツァル科はさえずりに魔法を持つ。仕組みはいまだ不明ながら、対象の脳に影響し、魅了や混乱などの精神作用を及ぼすものだ。
本来は天敵たるヘビに抗するための力で、脳構造の異なるヒトには少々ゆがんだ形で現れたりする。ルビーの警戒音声は人体を強力に麻痺させる。さえずりは魔法発動に必要な動作であり、対象の聴覚に作用するわけではないから、耳栓も無意味だ。
今回の保護個体は囀りを封じるための喉焼きもされておらず、健康状態も良好だったらしい。様子見期間を経て特別に、王都竜騎兵専用の軍船での輸送を取り計らったのは、魔獣への関心が高い第三王女という話である。
島から東南へ海を渡る数日の航路のあと、ドファーラ大陸の故郷の密林へは目と鼻の先だ。二度と捕獲されず野生を謳歌してほしい。
新聞の挿絵にあった竜騎兵は壮年の紳士で、近衛兵の勤めも長いようだ。相棒となる騎竜へ愛情を注ぎ、尊敬の気持ちを強く持つ生き物好きでなければ、竜騎兵は務まらない。
彼ならきっと誠実に任務を果たしてくれるだろう。
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