未来への第一歩

前世の私は乙女ゲームが大好きでよくやっていた。

その中でも『光の聖女の運命』は特にお気に入りで死ぬ直前までやっていたと思う。

でも!!モブキャラはないでしょう!?

転生するなら、ヒロイン。もしくは悪役令嬢っていうのがオーソドックスじゃん!!

まあ、私はヒロインの異母姉だけれど。

何というか、イーディス侯爵家は家族構成がすごい複雑だ。

長男がエドワード・イーディス。セリスティアより2個年上でイーディス侯爵家の嫡男。

嫡男とはいっても養子で跡取りが生まれなかった事から引き取られた。

このゲームの攻略対象の1人。

長女がマリアンヌ・イーディス。セリスティアとは同い年。正妻の娘で高飛車な正真正銘の悪役令嬢だ。

次女が私の転生した、セリスティア・イーディス。

娼婦の娘である事から、マリアンヌにはいつも虐められていた。ヒロインが侯爵邸に来てからは、マリアンヌの手と足になり動くか、ヒロインのサポートキャラになるかのモブキャラ。

三女がこのゲームのヒロイン、ミリアナ・イーディスだ。セリスティアと同い年でイーディス侯爵の愛人の娘。

15歳になると正妻が亡くなり、それと同時に侯爵は後妻を迎え、ヒロインもイーディス侯爵家の一員となる。

誰にでも優しく可愛らしい容姿のミリアナはどんどんこの国のトップ達を落としていくのだ。

攻略対象として、侯爵家の嫡男のエドワードにこの国の王太子、第二王子、公爵家の嫡男、敵国のスパイなんかもいた。

私は王太子以外は全部クリアしたけれど、王太子だけはできなかった。声が一番タイプだったから、顔を見るのも攻略するのも後に取っておいたんだよね。

今となっちゃ、後悔しかない。



ゲームとしてやっていた時は、すごい楽しかったけど…。自分がセリスティアとして生きるなら話は別だ。

だって!!

悪役になったらマリアンヌ共々処刑されるし、運良く、サポートキャラになっても政略結婚の駒としてどっかの貴族に嫁がされるんだよ!?

むりむりむり!!

どっちかというと、知らない奴に嫁がされる方が私にとってbad endだ。



ヒロインが侯爵邸にやってくるまで、あと5年。

この間に何とかしないと手遅れになる!!

そう考えた私は今の時点で変えれることは変えておこうという結論にたどり着いた。



まず手っ取り早く変えれるとすれば!!

そう、容姿だ。髪はボサボサ。肌はお世辞にも綺麗とは言えない。絶望的にも思えるけど今変えれるのはこれしかない。

私はそう思い、部屋にあったドレッサーの引き出しを荒らしまくった。(急いでいたから仕方がない)

すると、少し古いけどブラシが出てきた。

私はそれを掴み、ボサボサの髪を必死にとかした。

でも、私の髪は絡みに絡みまくっていて中々通らなかった。

それでも、私は辛抱強くとき続け、終わった時には癖のないストレートの黒髪がそこにあった。

艶があるとは言い切れないけど磨けばかなり綺麗になるんじゃないかと思えた。

まあ、これは時間が解決してくれるよね!!

少し楽観的に考え、髪はひとまず置いておくことにした。

そして、この肌。ずっと、部屋の中にいたから焼けてはいないけど酷く荒れている。

思えば顔を洗った記憶がない。

私はゾッとした。前世の記憶が戻った今の私に顔を洗わないなんて不潔でしかない。

私はそう思い、すぐに顔を洗おうと思ったけどすぐに思い立った。

洗面所はこの部屋にはない。

はぁ、まず掃除からか。



数時間後

まだまだ掃除し切れていない所はあれど、使いそうな所の掃除を終えた。後で、もう少し掃除しないとね。そう思いながらも、私は念入りに自分の顔を洗った。

すると、顔の垢がどんどん取れていった。

置いてあった新品の石鹸を使ったため、顔がスッキリとした。

だいたい、これくらいかなと思い、顔を拭いて鏡を見ると、そこには別人がいた。

真っ白な肌に整った顔立ち、綺麗な紫色の瞳。

えっ、美少女じゃん。

髪はさっきのままだからあれだけど、確かに美少女がそこにはいた。

マジか。モブキャラがまさかの美少女。

こんな事で綺麗になるんだったら、何でゲーム内ではブスだったんだろう。

疑問に思ったけれど、すぐに思い出した。

セリスティアは肌の手入れを全くしていなかったから、そばかすがいっぱいあった。

そして、デカい眼鏡もかけていた。

よし、これからはちゃんと肌の手入れをしよう。眼鏡をかけなくてもいいよう、視力を保とう。

心の中でそう決意した。



私はこれからどうやって未来を変えていくかを考えていたかったのだけれど、別館に人がやって来た。

そして、私の部屋の前まで来ると、

「お嬢様、入ってもよろしいですか?」

と聞いてきた。

「どうぞ。」

私がそう言うと、入ってきたのはメイド服を着た女性だった。

「セリスティアお嬢様。これから、私が身の回りのお世話をさせていただきます。」

丁寧にお辞儀されて、少しびっくりした。

だって、あの侯爵が私にメイドをつけるとは思わなかったのだから。

「えっと、よ、よ、よろしくお願いします…。」

私は消え入りそうな声でそう答えた。

私は一応、ヒロインがやって来るまで表面上は取り繕うことにしたのだ。

もし、ヒロインも転生者でヒロイン特権で処刑されたら堪んないしね。

だから、今はボサボサで地味なセリスティアちゃんだ。

「私はユラと申します。どうぞ、何なりとお申し付けください。」

ユラは人の良さそうな笑顔でにっこりと微笑んだ。

こ、この人の笑顔、癒される…。

私が何ともふわふわとした気分に浸っていると、

「お嬢様、とにかくお食事をお持ちいたします。もう夕食の時間でございますから。」

そう言ってユラは部屋を出ていった。



この時、私は気付いていなかった。

あんなに汚かった部屋が隅々まで掃除されているのを不思議がらない人がいない事を。

そしてそれを私がやったとバレてしまっていることを。



それから、また数週間が経ち私は完全な美少女と化した。

毎日、お風呂に入って髪を洗っていると、だんだん艶がでてきてすごく綺麗になったのだ。

私的にはヒロインの顔よりセリスティアの顔の方が好みだと思うぐらいにまでなったのだ。

これは未来を変えるための第一歩だと言っていいだろう。いや、二歩ぐらい進んだかも?

この調子でどんどん行動していけば未来を変えられる可能性が高い。

私はやるわよ!ゲームの運命なんかに従ってやんない!!

私はセリスティアとして二度目の人生を謳歌して見せる!!

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