最後の調査対象

公園を通り過ぎて住宅街をしばらく歩くと、問題の建物が見えてきた。


道にちょうど突き当たりに佇むそれは、何十年も前に建てられたと思われる、大きな廃墟だった。4階建てで窓も多い。老人ホームなどの施設だったのかもしれない。


突き当たりまで歩くまでもなく、咲南は感じ取っていた。


ーーここは、複数いるわね。


強弱はあるが、確実に一体ではない。何体もの霊がこの廃墟の中にはいる。

しかし、そこまで邪悪な感じでもないため、放っておいても問題はないだろうと感じた。


道半ばで踵を返し、咲南は手早く友里にその旨を報告した。


友里からは一言「ご苦労さん」とだけ返ってくる。


「相変わらず、雑ね」


ため息をつき、咲南は元の道を歩き出した。

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