ひとりぼっちの老女の霊

 数日後。咲南は午後の授業をサボリ、高宮に依頼された最後の調査対象を確認しに行くことにした。


 スマホで場所を探してみると、どうやら学校から歩いて20分ほどの住宅街にあるようだ。


 向かう途中、暑いのでコンビニでアイスコーヒーを買う。飲みながら歩いていると、後ろからやってきた大学生らしき男2人組に声をかけられた。


「ねえねえ、何してるの?学校サボってるなら、お兄さん達と遊ばない?」


 近所にあるのはそこそこ偏差値の高い大学のはずだが、生徒はこんな感じなんだな、と冷めた眼差しを向けながら咲南は思う。


「忙しいんで」


 短く断り歩き続ける咲南に、なおもしつこく絡む男達。面倒臭くなった咲南は、ある手段に出た。


「あ」


 咲南は2人組の間を見ながら声をあげる。


「どうしたの?」


 男の1人が怪訝そうな顔で、咲南とその視線の先にある何もない空間とを交互に見る。


 言いづらそうな表情を作り、口を開く咲南。


「えっと、私霊能力者なんですけど・・・」


 そこまで言うと、比較的大人しめにしていたもう1人の男が、


「え、もしかしてあの黒川さん?女子高生サイキックの」


 と驚いたように言った。


 咲南は、まあ、と頷く。

 

「それで・・・ちょっとやばいのがいるので、早く別の場所に行ったほうがいいですよ」


「やばいのって・・・霊ってこと?どこに・・・」


 男はそこまで言い、はっとなって咲南の視線の先を見た。


「うわあああやばい、逃げろ」


 雰囲気でやばさを感じ取ったのか、2人組は慌てて来た道を戻っていった。


ーーまあ、何もいないんだけどね。


 ふう、とため息をつき、コーヒーに口をつける。


 そのとき、うっすらと霊気を感じた。

 

 少し歩いたところに公園があり、その前を通り過ぎようとしたときに答えがわかった。


 公園にある砂場の前に、老女の霊がいる。


 霊を見かけるのは珍しいことではない。咲南の場合は弱い霊気も感じ取ることができるため、街を歩いているだけで目に入る。


 日常的なことなので、見かけたからといって特別何かをするということもない。


 だが、今回は何か気になった。

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