EP3 黒川咲南の共感
プロローグ 学校生活の息抜き
ああ、煙草が吸いたい。
昼休み。いつもの5人グループで楽しそうに雑談をしている最中、咲南は強く思った。
グループの1人、美由紀がバイト先のイケメン店長に恋をした話でさっきからずっと盛り上がっている。
「えーでも店長って何歳よ?」
この中で一番髪が明るく化粧も派手な舞衣が、からかうように言う。
「・・・30歳だけど」
「ええー!13個も年上じゃん!」
「やでも見た目若いんだって。まじかっこいいの」
美由紀はそう言いながら、更なる話がある、とでもいうように身を乗り出す。
咲南はこの時点で、先の話が見えた気がした。本題の相談はこれからか。
「でもーー」
「既婚者?」
美由紀がのんびりと続けようとしたとき、咲南はつい口を挟んでしまった。早く煙草を吸いに行きたくて、少しイライラしている自分を自覚する。
「え!さすが咲南、よく分かったね。実はそうなんだ・・・それで聞いて欲しいんだけどさ・・・」
昼休みが終わるまでに行けるだろうか、と不安になってきたとき、不意に肩を叩かれる。
「ちょっといいか?」
彰だった。今日はいい仕事するじゃん、と思いながら「いいよ」と席を立つ。
そのまま屋上に誘い、咲南はいつも携帯しているiQOSを吸い始めた。煙草は好きだが匂いが苦手な咲南にとって、iQOSはぴったりのツールだ。
彰の話は、くだらないものだった。
サッカーの試合後に、後輩の女子生徒からタオルを渡されたらしい。客観的に見れば単純に好意を持たれているだけなのだが、どういうわけか彰自身は、除霊のお願いをされたと勘違いしているらしい。
彰とは小学校からの幼なじみで、咲南はその鈍感さを何度も見てきているが、その中でも今回のは一層ひどかった。
「とにかく返しに行ってあげたら」
と助言だけして、あとは一服するのに集中することにした。
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