咲南の裏表
翌日の昼休み。
いつもの騒がしい女子5人グループの中で、楽しそうに話している咲南の肩をトントン、と叩く彰。
「ちょっといいか?」
「いいよ」
行ってらっしゃーい、と言われながら席を立つ咲南。彰と咲南が高校生ながらにプロの霊能力者であることは有名な話で、この学校の生徒であれば誰もが知っている事実だった。
「天気いいし、屋上でも行く?」
にこりと言う咲南。さてはタバコ吸いたいんだな、と彰は察する。
案の定誰もいない屋上についた途端、咲南はスカートのポケットからiQOSホルダーを取り出した。
「ちょうど一服したい気分だったの」
「体に良くないぞ」
「どうでもいいよ、そんなの」
咲南はそっけない様子で言うと、手際よくセットし吸い始める。その無表情な横顔からは、さっきまでクラスメイトと恋愛話で盛り上がっていたとは想像もつかない。
咲南とは小学生の頃からの付き合いだが、こっちの方が自然体なんだろうなと彰は感じている。
「で、どうしたの?あとそのタオル何」
面白くもなさそうな表情のまま聞いてくる咲南に、昨日の放課後に起きた出来事を話した。
「というわけで、一応咲南にもこのタオルから何か感じないか聞いておこうと思って」
と締めくくる彰に、珍しく感情を露わにした顔で咲南が言う。
「え、それ本気で、除霊依頼だと思ってるの」
この顔はーーああ、何かに引いている表情だ、と彰は考察する。
「いやだって、名前確認されたし・・・」
「わかった。貸して」
言い終えるのを待たず、彰が持っていたタオルを手に取る咲南。
「このタオルからは、好意しか感じないわ」
「コウイ?やっぱ何か憑いてるのか?」
「あんたと話してると、なんか宇宙人と会話してる気分になる・・・」
咲南がため息とともに煙を吐いた。
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