エピローグ 帰り道

「咲南。体、大丈夫か?」


 駅までの帰り道。彰が心配そうに咲南を見る。


「だるい」


 そう言う割に、元気そうな咲南。


「咲南が口寄せするとは思わなかったよ。疲れるんだろ、あれ」


 口寄せとは、霊を自分の体に招き入れることだ。高い霊能力がないとできない術で、そのまま取り憑かれる危険性もある。


「やるつもりはなかったんだけど。あんなやつれた顔見せられたらね」


 仕方なく、とでも言いたげな咲南。


「どういうことだ?」


「弟らしき霊に恐怖を感じながらも2ヶ月も放置していたのは、理由があるからでしょう?何かどうしても伝えたいことがあるのかなって思ったのよ」


 なるほど、それで最初に弟の霊のところに行ってたのか。彰は心の中で頷いた。


「咲南って優しいよな」


 心の声が、思わず口に出る。


「なにそれ。だるい」


 5月の生暖かい風が、2人の間をぬるく通り抜けていった。

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