霊能力漫画

「上野さん、黒川さん。本当にありがとうございました」


 家の門の前で、恵は深々と頭を下げた。

 駅まで一緒に行くことを申し出たが、夜道は危険だからと彰に断わられ、そのまま門の前で2人を見送った。


 咲南の話だと、弟は以前から家に住み着いていたあの悪霊の存在が心配で、でもどうにかする力もなく成仏しないまま家の中を彷徨っていたらしい。しかしそれが裏目に出た。悪霊が弟の霊の存在を利用して恵に取り憑こうとしたのだ。悪霊自体もそこまで力の強い霊ではなかったため、人間側が霊を受け入れる姿勢を見せないと取り憑くことができなかった。だから、弟のふりをして「遊ぼうよ」と誘っていたのだと言う。


 自分が弟だと思っていた霊は悪霊で、いつか取り憑かれていたかもしれないと思うと背筋が凍る思いだが、今は弟に気持ちを伝えられた満足感に満たされていた。


「美香にお礼の電話をしなきゃ」


 呟きながら、今度は霊能力を題材としたバトル漫画を描こう、と思った。主人公はもちろん、かっこいい女子高生だ。

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