違和感

 立花恵の家は、喫茶店から15分ほど歩いたところにあった。


 二階建ての一軒家で、手前に車を停めるスペースがある。玄関の横の花壇には黄色と青の花が綺麗に咲いていて、よく手入れもされているようだ。


 門の前で、恵は言った。


「今は父も母も不在なので、好きに調べてください」


「ご両親は、弟さんの霊の存在を?」


 と、彰。


「いえ、知らないです。私だけに聞こえてると思います」


 家に入り、恵の部屋のある二階へと案内してもらう。


 階段を上がり切ってすぐに、咲南はその存在を感じ取った。しかし、少し変だった。


「・・・この家にはいつから住んでるの?」


「弟が生まれたちょうど7年前からです」


 咲南の問いに、神妙な面持ちで答える恵。

 ふうん、と言いながら、廊下を歩き始める咲南。


「この7年間で、おかしなことは全く起きなかった?さっきの話以外に」


 咲南は恵の部屋を含め、トイレや両親の部屋なども軽く開けて覗く。彰は階段のそばで、その様子を見守っている。


「そういえば、弟が亡くなる以前にもラップ音とか、変な足音が聞こえたりとかはありました。両親に相談したこともあったんですけど、何も聞こえてないみたいで相手にしてくれなくて・・・」


 恵はすっかり忘れていた、という表情で答えた。


 咲南は廊下のつき当たりにある物置部屋を開けると、一言、


「彰、その子よろしく」


 と振り向きもせず伝える。


「わかった」


 彰が頷く。


 段ボール箱や埃を被った電子ピアノが置かれていた部屋の奥に、それはいた。ここでは警戒する必要はなさそうだった。


 咲南はゆっくりと奥に進むと、その場でしゃがみ目を閉じた。

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