焚き火
◆
◆魔王国エグゾリア 魔王城 跡地◆
【目的地に到着しました。音声案内を終了します。】
《ぬ…!?これは…!》
闇夜の中、魔王は目にしてしまった。
【目的地】に存在する、直径5kmにも及ぶ巨大なクレーターを――――。
目的地を誤った事を疑った魔王は、クレーターを中心に赤青2つの月明かりに照らされた周囲の山や川を観察する。それは日々王城より見渡し続けた、あの景色の特徴そのものであった。
《我が居らぬ間…魔族は滅ぼされたのか…!?信じられぬ…!》
よく見るとクレーター内に焚き火の明かりを発見した魔王は、そこへ降り立つ。
そこには、口をポカンと空けてこちらを虚ろな目で眺める、七将の姿があった。
・黒い霧を集合させたような身体に光る目を持つ『冥将』ゼロア
・蛇の尾を持つ左腕と蛇の頭を持つ右腕で、女性的な身体付きを持つ『毒将』アデラ
・オリハルコンを人型に押し留めたような巨躯『破将』ギガア
・頭自体が目玉であり、そこに魔法使い然とした帽子と、身体に玉虫色のローブを纏う『魔将』ザギヌル
・六対の黒い翼を持ち、頭上にノコギリ刃の輪っかを天使然として回転させている『天将』ゼクス
・30もの業物の剣や伝説級のハルバードが寄り集まって人型を成している『刃将』ジギス
・顔はヤギのようで人型の身体を持ち、歴代の魔物最高の知性を持つと称される 全魔王軍統括参謀『知将』ケルギア
《これはどういう事なのか…!説明せよ…!》
魔王が全員に向けて尋ねると、ところどころ
「生き残りでしょうか…? …い、いや、もしやあなたは…貴方様は、魔王…様ですか…?」
「こいつが全裸王?そんなわけあるまい」「ケルギアあなた、狂っちゃったのね…はあ…。」「オイモ、ヤケタ…」と、思い思いに他の六将がぼやく。
《我だ!我は魔王エグゾガルシアであるぞ…!》
(誰だ今、全裸王って言った奴は!)
「「「ま、まさか!?」」」ガタッと七将全員が立ち上がる。
《クク…!冥府の門番を百名ほど殺し…戻ってきてやったのだ…!》
もちろんデタラメであるが。
「「「ハハーッ!!」」」
全員が魔王の目の前に一斉に
《して、この惨状はどうなっておる…何が有った。ケルギアよ》
「ハッ!日付が先程変わりまして一昨日の昼のこと、空より巨大な炎の槍が降って参りまして…」
《炎の…槍だと…?》
「ハッ!その後王城は全て蒸発。我等七将のみ、ゼロアの亜空間移動によりとっさに難を逃れ、その後戻ってみると辺りは焼け野原に…!」
《信じられぬ…一体誰が…》
「それが…不明でございます…。そしてその数分後、更に恐ろしい事に…全長数十km…いえ…100…200kmほどはありそうな一つの巨大な隕石が天上に突如として現れ、空を覆い尽くしたのです…!!」
《…巨大な隕石…だと?》
直径30メートルの隕石を雨のように降らせる究極魔法「メテオレイン」は魔王も習得をしている。逆に言えば、それ以上の魔法は持っていない。
このメテオレインは対軍破滅魔法として、この世界に存在する魔法の中でこれ以上が存在していない魔法である。
全ての種族において攻撃魔法の適正が最も高い魔族の中で、更には全ての魔族を力で支配してきた魔王の限界をもってして、「巨大な隕石」なるものは再現ができない。
つまりは、有り得ないのである。
「はい、そして我々は再びゼロアの亜空間へと逃げ込み戻ってみると…ご覧の通りこの有様でして…元の焼け野原を越す、辺り一面の無の世界に…!」
《…あまりにも飛躍した話ゆえ分からぬが…考えられるとすれば何だ。答えてみよ》
「ハッ!僭越ながら私の考えを申し上げさせて頂きますと…その――巨大隕石は突如として現れ、突如として消えた事から自然現象ではない、としか―――。しかし魔王様以外にこのような魔法を使える者が存在するはずもなく、魔王様も存じ上げないとなれば…一体…。」
ケルギアは、魔王すら使えるはずのない事を知りつつも、そう答える。
《…そうか。ふむ…原因が分かぬのなら、この状態からの魔王軍の再興こそが唯一の行うべき事になろう…。》
「「「ま、魔王様!!」」」
七将は全ての部下を失い、戦線に生き残りが居なければ「魔王軍七名」となってしまった。そんな今、何を行うべきかも分からずただただ絶望をしていた。
それぞれに魔王の言葉が驚きとともに浸透し、七名の皆の瞳に光が宿り始める。
《ククッ…!七年前を思い出す。魔王を名乗り王座に就くより以前の、地を這ったような我をな…。世界の掌握と巨大隕石の謎…炎の槍…そして我を殺した者を見つけ出し抹殺する事…!
全ては再興を終えてからでも良い。なあに、我とそちらの力をもってすれば、一年と待たずに叶うであろう…。
なればこそ、今宵は語り合おうではないか…。たった八名の、魔王軍でな…!》
魔王軍は変わってしまった。そして魔王軍の千二百万の配下も、今は居ない。
七将のプライドは「視えない敵」という謎の存在により地に落ちた。
そして魔王は何より、肉体を含めた全てを無くしてしまった。
この世界にたった八人だけの魔王軍、その事実が、全員の心の距離を近付けていった。
その日のクレーターの奥底の焚き火は8名の笑い声とともに、朝方まで消える事が無かったという―――。
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