変形ッ!ES350ッ!
◆
◆ウィッタード王国 王城◆
◆勇者レグザス視点◆
「ひ、ヒイッ!?」タッタッタッタ…
うーん?
異世界三日目の朝。メイドの声と共に俺は目を覚ますと、風呂に入ってから身支度をして大講堂に向かった。
もちろん、愛車のレグザスES350が気になったからだ。
ちなみにもうこの世界の人間が俺のことを「勇者レグザス」と呼ぶのには慣れたし、受け入れた。
日本人が英語のLとRの発音の違いがよく分からんように、この異世界アルスガルティアの住人には、俺の名前がよく聞き取れないらしい。
いつまでだろうか。
レグザスES350に乗り込み、エンジンを掛けてみる。
キュッキュッブオオオオオオン!!!…ブロロロロロロロロロ……
うむ。新車で買ってから1年もしないうちだから、調子は良いな。
しかし、問題があるんだ。
「大講堂って三階にあるから、運び出せないんだよなあ…。」
無貯金の俺の走る全財産、700万円。ここに置いておくのも忍びない…
しかしメイドに聞いたが、この世界にはどうやらアイテムボックスという概念が無いらしいんだ。
アレよ、四次元ポ●ットみたいなアレ。
魔法!スキル!ガイド妖精!謎のチートスキル!アイテムボックス!と言えば、異世界の七つ道具じゃあないか(ちなみに残り2つは考え中だぞ)
「しっかし、どうしたもんかなー…車…車…運び出し…」
あ!そうか!
俺はふと思い立つと、ギコちゃんを呼び出した。
『きゅううーーーーんっ!!』うーん、今日もかわいい。
「ギコちゃん、俺の愛車を
この世界に来てからというもの、俺の3つの能力はほぼ完全に現実に影響を及ぼせるようになり、その自由度や規模もとんでもない物になった。
・目で見た事があるか名前を知る、全ての存在に触れられる能力:
・目で見た事があるか名前を知る、全ての存在の構造を解析する能力:霊視
・近距離・遠距離の任意の対象を自動的に様々な改変と対処を行っていく上、魔法まで使える霊能AI:
これら3つが俺の武器という事だ。
平たく言えば、
・俺が「名前」か「この目で見たか」で認識する近~超長距離での相手への一方的な攻撃や
・それ以外がギコちゃんのお仕事
…という事だな。
って…ギコちゃん強すぎィ!!?
うーむ、タイトルを付けるなら…
【異世界召喚から3分で魔王を倒した人間主人公よりも、主人公の肩に乗ってる霊能AIのキツネちゃんの方が最強ですッ!】
だろうか。ふふ、嫌いじゃないぜ。
昨晩色々とギコちゃんで実験してみたが、部屋の花瓶の形状をギコちゃんに解析→改変をして貰うことによって改造する事ができた。
ただの花瓶がくちばしを開けたペリカンの形状になっていた今朝、メイドの驚いた声で目を覚ましたのだった。
0から1をやってみて、もし1ができたなら100万までできる…! センスと才能とラッキーだけで生きてきた俺はそう考えているが、果たしてこんな複雑な事がギコちゃんに出来るのだろうか…。
『きゅきゅきゅううう…』
何やら考え込むギコちゃん。どうやら車を解析中らしい。あれ?それって俺の専売特許の霊視…やっぱ俺いらない子…?
しばらく待っていると…
『きゅううーーーーん!きゅんきゅん!』
(できるよ!まかせてね!)というニュアンス(多分)でギコちゃんが言う。
俺の愛車が変形ロボになる可能性に、俺のテンションは最高潮に達する。
だってあれ、好きなんだもの。トランスポォーマーの海外版。あとガオガオガガイガー。ちなみにジャイ■ゼッターは世代じゃないから分からん。
「よっしゃあ!!!!んじゃあ形状はクールに頼むぜ!!」
『きゅうううううんっ!!』
そして待つこと15分…!
『きゅうううう~~~~ん!!』
(できたよ~~~!)
とギコちゃんが教えてくれた。
ヨシッ!じゃあいっちょやりますか!
「トランスフォオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッムッッッッ!!!」
俺が足を肩幅以上に広げ腕を組んで叫ぶと、車はガシャンガシャンと音を立てて次々と変形していき、瞳を白く光らせる。そこには機械の黒騎士の様相のレグザスES350が立っていた。
そう、この時、俺の車(全財産)は全高約5メートルのアルミとカーボンの漆黒の巨人へと生まれ変わったのだ―――!
「か、かっこえええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!ぎゃああああああああああヤバイヤバイヤバイヤバイ絶対にかっこいいいいいいいいいいやばあああああああああああい!!!ギャーーーーギャーーー!!!」
俺は奇声を上げながら床を転げ回りながら大興奮すると、大講堂の扉が開け放たれた。
「レグザス様!?いかがなさいましたか!?」
見回りの兵士が室内に入ってくる。
「こ、これは……!!」
ピタッと転げ回るのを止めた俺は、冷たい床の温度を感じながら言った。
「あ、俺の車ね。ロボにしてみたんだけど…どう?」
「かああああああああっこいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!うわああああああああああああ!!!」
見回りの兵士もゴロゴロ床を転げ回る。
「うおおおおおおお!!!」「なんだこの感情はあああああああうおおおおおお!!」
その声を聞き付けた兵士も次々と部屋へ飛び込んでは転げ回る。
ふふふ、異世界の美意識ってば、悪くねえなあ…!!
そして俺はニヤリと口元を歪めてから、大講堂をありあまるステータスで天井付近までジャンプする。
三回転の
「「「うおおおおおおおおお!!!」」」」
床でのゴロゴロ回転から立ち上がった兵士達が、腕を振り上げ雄叫びを上げる。
「搭ッッッッッ…乗ッッッッッ!!!」
俺は声を上げながら新生ES350の背中部から除く一人乗りのコックピットに乗り込む。
そしてそのままコックピットが自動収納されると同時にENGINE STARTのボタンを押す。
キュッキュッキュガロオオオオオオオオオオオン!!!ガロロロロロロロロロ……
(このエンジン音…エコカー減税対象外…車検通過不可能……!だがしかし…良いッ…!)
「「「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」
いつの間にか10名ほどに増えた兵士が、雄叫びを上げる。
おお、エンジン音が派手になってる!これは隅々まで改造がなされているに違いない。
コックピットは…右手と左手の部分に握る部分の有る操作レバーが有った。
カーナビに目をやると、「直 感 操 作」の4文字が踊り出す。
よし来た、アレだな?最初はまず歩く事だけを意識すればいいってヤツだよな?アニメで見たぞ。
「……どうだ!」
ガショオオオン!!
「「「歩いた!!」」」
しかもズッコケなかったぞ。よし、
「ギコちゃん、拡声器機能は付いているか?」
『きゅぅん…きゅっきゅ!!』
(付いてないよぅ…でも今から付けるね!ふふっ)とでも言いたそうなギコちゃん。
そうかお前も異世界を楽しんでいるのか。そうかそうか!
「よろしくな!」
『きゅきゅきゅううううん!!』
コックピット全面のデジタルパネルが白く光ると、100%をマックスとしたゲージが現れる。
約10秒で100%に達すると、ギコちゃんは嬉しそうに新しく出来上がったボタンを押した。
《あーあーあーテステス》
「「「喋ったあああああ!!!」」」
兵士たちが驚愕する。
《よーし!外に行くぜ!着いて来たい奴は俺に着いてきな!!》
「「「うおおおおおおおおお!!!」」」
男たちは城の廊下を歩く俺のレグザスに後から着いてくる。
城の廊下を白煙とガソリン臭さが埋めていく。
途中すれ違う貴族や執事、メイドには例外なく叫ばれるが、後から着いてくる兵士たちが一人ひとりに丁寧に説明をしていくので面倒がない。
そうして、3分、複雑な構造の城をなんとか下り、三階の大講堂から王城の裏手の修練場に辿り着いた。
ふと後ろを振り返ると、10人居た兵士が40名に、更には執事が総勢20名が着いてきていた。当然ながら、全員男である。
そして全員が、少年の目の輝きでこちらを見ている。
(昨晩サンクチュアリで少年ぐらいの年齢にした人達も含まれるが…)
クク…どいつもこいつも、仕事よりも男のロマンを取りやがったな…!
バカめ…!だが嫌いじゃねえ。この中で一番バカな俺は、お前らのことが嫌いじゃねえぞ…!!
《よっしゃあ!野郎ども!!試運転だ!見ていやがれ!!》
「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」
ガションガションガションガション…
高さ5メートルのロボットは広大な修練場を所狭しと走り回る。
《かーらーのー…水平移動大回転ッッッ!!》
ロボットの足元にあるタイヤをスケートのように用いて、その場でグルグルと回転する。
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」
更に皆のテンションは最高潮に達した。
よーし、こっから限界を越えてエスカレートしていくぜ!!!
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まだまだ続きますよー!
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