回復魔法(?)

「な、なに!?回復魔法だと!?」

 一昨日までの事を思い出す。日本では俺は霊能者の仕事を通して、人を治し続けていた。


 霊能者というと占いと除霊が主な仕事に思われがちだが、俺は人の治癒もまた専門として行なっていた。


 霊能者を始めた最初期はそれこそ最初は肩こりしか治せなかったものが腰痛が治せるようになり、そして神経痛や痛み自体を治すことが出来るようになった。自力では限界を感じて"霊能AI:ギコ偽狐ちゃん"を生み出して以降は、分析解析能力も跳ね上がり、聴力、視力、精神病をある程度だが治せるようになっていった。


 しかし、ガンや肺炎などの治せないジャンルも確かにあったために、常日頃から研究を重ねていたのだった。


「た、頼む!教えてくれ!!」


 "異世界モノ読者"としては攻撃魔法にしか興味はないが、どちらかと言えば、俺は「回復魔法」の習得のほうが嬉しく感じる。


「ほう、ええじゃろ!まずはな…」

「あ、ちょっと待っててくれ。ギコちゃん!」


『きゅーーーーーんっ!!』

 しっぽフワフワお耳ピンピンの、手乗りサイズの狐ちゃんが突如現れ、俺の頭の上に乗る。


「ファ!?しょ、召喚獣かや!?お主いつの間に…」


「あ、ギコちゃんね。俺が霊能力でプログラミングした人工知能だ。

 このギコちゃんに回復魔法を見せてくれれば、勝手にラーニングするから、頼むわ。」

「な、なるほど…お主は何でも規格外じゃの。…うむ…要は知性の高いゴーレム…いや、人工の…精霊…?と言ったところかの?」

「あーあー、そんな感じ。んじゃよろしく。」


「ほい任された。――qorls farl eld phai norb twood psh...ヒール!」

 ポワっとした、柔らかな光が俺の全身を包み込む。

 春先に日光浴をして目を閉じたような、そのような暖かなイメージだ。


 これが異世界の…ヒール…!

「すげえ!っておお・・・!」

 昔やらかした足首の捻挫が治った気がする!な…!?ついでにグラグラだった歯も治ってる!!すげえ!


「レイン婆さんすげえ!大魔道士…いや、もはや賢者じゃねえか!!」

「ほっほっほ!賢者はエルフの森にしかおらんぞい。そんじゃ次はこれじゃ。ほれ、見学者達もこちらへ寄りなさい。」


 ぞろぞろと、遠巻きに先程のファイヤーボールからこちらを見ていた城の人間達が15人ほど集まる。寄りなさい、と言われて近付いては来るが、先程世界を破壊し掛けたためか、悪魔か汚物を見るような視線の15人は、俺の周囲には決して近寄っては来ない。


 うーん、ソーシャルディスタンス。別に密っても良いんだぜ俺はよォ…!!



「んじゃやるぞい。――qorls farl eld phai aseed laph greea...サンクチュアリ!!」

 地面から直径10メートルの光の魔法陣のようなものが滲み出し、俺達全員を取り囲む。

 そして、

「おお…!」「これが魔術師長様のサンクチュアリ…!」「まあ…!」と口々に全員が感嘆の声を述べる。

 そして次々に、「腹痛が治った!」「古傷が塞がっている!」「私は胸のしこりが治ったわ!」と、喜びの声を上げる。


 なるほど。こりゃ異世界の回復魔法のほうが有用性が高いみたいだな。

「ふう…こんなもんじゃな。サンクチュアリは…どうじゃ?習得はできそうか?なにせわしの回復魔法研究の集大成と言っても良い魔法じゃ。そんな簡単にはさすがのお主でも真似できんじゃろうて。」



「なるほど!!!ギコちゃん、習得できたか?」

『きゅーーーーーんっ!きゅんきゅんきゅうーーーん!』

 嬉しそうに飛び跳ねるギコちゃん。オッケーっぽいね。



「んじゃ、ギコちゃん!サンクチュアリ!!!」

『きゅーーーーんっ!!』


「ちょ、いきなり…!」

 レイン婆さんが止める間もなく、ギコちゃんはサンクチュアリを発動させた。さすが俺の作った霊能AI…いやコンコン!かわいいだけじゃ…無いッ!


 直径30メートルにも及ぶその光の魔法陣は、先程のレイン婆さんが出した魔法陣と比べると、かなり複雑な魔法陣で出来上がっていた。光も、目を覆いたくなるほどに眩しい。

 ククク…回復魔法、案外簡単だったな…!!しかし30メートルとは控えめな…もっとこう、直径300キロメートルはだな……。



 !?



 そして、ん??俺の身体から湯気が…そしてその場の全員の身体からも…???

「グッ…!」「うっ…!」「ギャアアア何だこれはああああ!!」


 全員が時間差でその場に倒れ込む。かくいう俺もその場に倒れ込んだ。

 とにかく身体が熱い。

「身体が…溶けちゃってるみてぇだ…!」


 とっさに口をついて出た自分のセリフが何だったのかすらどうでもいい…とにかく身体が熱くて…!

 そして口々に叫び声を上げるその場の16名と俺身体の熱と湯気が止まると―――



 ――――周囲に居たほぼ全員が"若返っていた"――――!


「はあああああああああ!!??!!??」

「お、お主!!これは一体どういう事じゃ!?」


 声を上げたのは、ウェーブがかった茶髪に赤みがかった瞳、丸メガネに魔法使い然とした帽子をかぶった14歳ぐらいのかわいい女の子…はっ!?


「ば、ババアなのか…!」

「今更なんじゃ!わしはレインのババアじゃ!ん?声が…」

 声が…声が…声優のいの●んになってんじゃねえかああああああああああ!!!!



「ババアアアアアア嗚呼嗚呼嗚呼!!?!?!?ど、どういう事だこれは!?」

 さすがにこれには混乱した俺は質問する。


 と同時に、周囲でたらい回しにされていた手鏡が俺にも渡ってきた。


 む…!?


「わ…若返ってる…!」


 俺の見た目も…16歳ぐらいになっていた。な、なんじゃこりゃあああああ!!

 あ、思い出した。身体が溶けるのはアレだ。名探偵だな。


「貸すんじゃ!」と鏡がひったくられる。


「ひ、ひいいいい!?」

 レインの婆さんもとい、レインのロリババアが声を上げる。


「わ、わ、若返っとるんじゃああああああああああああああ!!!!!!!!」



「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」」」


 周囲の15名も大声を張り上げる。なんだこれ、サンクチュアリでアンチエイジングしちまったのか!?あ…ありえん…!!


「こ、こりゃああああああああ宴会じゃああああああああああ!!!!!!」

 レインロリババアが声を張り上げる。


「「「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」」」

 なんだこの国、昨日といい今日と言い、宴会大好き国家なのか。


 まあいいや、かわいいモチニャゴ族のニャゴジローの作るご飯がまた食べられるんならな…!



開闢歴かいびゃくれき14997年9月2日夜◆

◆ウィッタード王国 王城 客室◆

◆勇者レグザス視点◆

 その後また宴会が開かれ、二日酔いに迎え酒という形でどんちゃん騒ぎが行われた。


 更にはその場の22歳以上の全員を(ギコちゃんの調整により)14歳~21歳までの希望の年齢までグループ分けしてサンクチュアリで若返らせると、全員が号泣して鼻水を流しながら感謝をしていた。

 魔王の時以上に感謝していたのは―――見なかったことにしておこう。


 この日の宴会ではなぜか、魔王軍の残党の大幅な討伐よりも、若返りの方がメインとして扱われていた。


 やはり魔王を討伐した段階で、この戦争はほぼ終結していた、という事なのだろうか。まあいいか。


 しかし、アルスガルティア全体を滅ぼしかけた件はウヤムヤになったので、まあ良しとしよう…!

 その晩に寝床でステータスを見てみる。


【名前】レグザス

【年齢】16歳

【職業】霊能者

【レベル】390,416

【H P】5,954,942

【M P】7,380,761

【攻撃力】167,898

【防御力】277,100

【素早さ】189,443

【知 力】664,583

【幸 運】224,169

【称 号】異世界より来たりし者、魔王を討伐せし者、クレームは辞めて下さい、あの…私にもサンクチュアリを掛けて欲しいんですけど…

【スキル】森羅触(X)・霊視(X)・天啓(I)・ギコちゃん(X)

【魔法】ファイヤーアロー(X)・ファイヤーボール(X)・ヒール(X)・サンクチュアリ(X)


 年齢が見た目年齢の記載になっていた。あとは魔法の項目が4種類追加されていた。

 それ以外にめぼしいものは無い。本当に無い。無いものは無いんだ。OK?


 いやー、最高じゃないか異世界。

 剣と魔法のファンタジーワールド!

 憧れが現実になるって、素晴らしいことだな!


 んじゃおやすみ。

 明日は何しよっかな。どーせ暇だしな。


◆カクヨム用

まだまだ続きますよー!

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