レイン先生の魔法教室
◆
◆ウィッタード王国 王城 客室◆
◆勇者レグザス視点◆
朝目が覚めると、メイドが伝令を伝えてきた。
なんでも王が「
とりあえず即答でメイドを通して異世界での資金に変えたい旨を伝えた。
気絶した召喚士長いわく「切れ端だけで城がいくつも建つ」代物だとか。それが5~6メートルの巨人が身に着けられるぐらいのサイズ分あるのだ。
まあ、今後欲しいものが出た時に夢で終わらせたくないしな。正しい選択だろう。
俺はその後身支度を整えると、昨日挨拶をした魔術師長レインを尋ねた。
魔術師長とは腰のひん曲がった黒ローブの、杖を着いた超婆さんである。
目的はもちろん、アレである。異世界の醍醐味…そう、魔法である。
そもそも俺は8年前に
付いた二つ名は「倉庫前のNPC」もしくは「廃人王」
サーバー1番の廃人ギルドのギルドマスターで、かつ"朝から朝まで"倉庫前でアイテムを売り続け、とまあ、いかにもなネトゲ廃人をやっていた。
その時にありとあらゆる
リアルではスポーツはテニスとバドミントンとゴルフしか好きになれなかった。
要は、リアルでもネトゲでも、「遠距離でドカーン」タイプなのだ。
ちなみにテニスはホームラン連発、バドミントンはアウト連発、ゴルフはドライバーに命をかけていたぞ。がはは。
「―――とまあ、そんなわけで俺は魔法が大好きだ。だがまだ使えない。っつーわけでよろしく頼む。」
「…魔法をお主が好き好むのは分かった。しかし、ふうむ…あらためて考えてみると、魔法ではない術法で魔王を倒せるようなお主が魔法を学ぶ意味が分からないのじゃが…?」
魔術師長レインは昨晩の宴会で魔法を教えることを快諾した割に、どこか魔法を教えることに気乗りしない雰囲気を見せる。
「いや!ロマンだよロマン。俺の居た世界には魔法なんてものは無かったんだ。だからこそ使いたいし、知りたいんだ。残る魔族だって居るんだろ?役に立つかも知れないし。」
「ふうむ…良いじゃろ。最早お主には無意味だとは思うがな。魔法は知識と探求が主じゃから、根気がいるものじゃよ。」
「おお!ありがとう!」
「ではまず、座学からじゃ。あと、わしのことはレイン婆さんとでも呼んでおくれよ。ほっほ。」
~1分後~
「…であるからして、魔法への知識とイドからオドを用いて、マナを動かし、現象に干渉し…」
「ふうむ」
~2分後~
「詠唱は
「はあ…」
~3分後~
「"shvah zale zweast vel von"で、この意味は"火の世界より出でよ、我はたたら"で、ここでのたたらとはふいごの事で…」
「ZZZ...」
~4分後~
「ZZZ...」
「ZZZ...」
~1時間後~
「ZZZ...」
「ZZZ...!?ハッ!!!」
アッ―――!!しまった!寝てたーーー!!
つか、異世界の魔法、難しすぎィ!
レベルアップして勝手に習得していない時点で察するべきだったのか…。
あれか、本を読みまくって反復練習をして魔法を習得するタイプの異世界なんだろうか?そうするといきなり習得するのは無理ってことか。まいったな…。
「婆さん!レイン婆さん!」
俺は魔術師長こと、レイン婆さんを起こす。
「ハッ!寝ておった!すまんかった!!で続きじゃが…」
「いいいいや続きはいい!俺には難しすぎた!すまん!」
「ほっほ、そうじゃったか。まあわしも生まれてこの方80年間魔法一筋じゃからのう。それでやーっと知識が完璧になったのがつい14年前じゃよ。難しいじゃろうて…」
(うっ…66歳でやっと卒業かよ…。今から何十年もかけて魔法を習得するのなんて無理だな…)
「いつかは学んでみたいが、よかったら今日のところは見せてもらうだけにしてくれないか?」
「ふむ…。まあええ、んじゃ修練場じゃの。」
意外にスタスタと素早く移動する、魔術師長レイン婆さん。
俺も置いていかれないように足早に付いていくと、修練場へと辿り着いた。
修練場は広大な王城の敷地の裏手、開けた屋外にあった。大体学校のグラウンドぐらいの広さだろうか。城の大きさと言い、この修練場と言い、このウィッタード王国の繁栄が伺える気がする。
普段は騎士や兵士や魔術師、そしてその見習いでごった返している場であったが、特別休――実態は「二日酔い休」とやらで、今日はちらほらとしか人が居ないらしい。
それでもあちらこちらで木剣の重なり合うカーンという音が響き、魔法使いらしき黒ローブと、多種多様な獣を伴っている召喚術師らしい白ローブが戦っている。
今日は二日酔い休か!こりゃ好都合!と、レイン婆さんは一角の「◎」みたいな弓の的が等間隔に立ち並ぶエリアへ俺を案内した。
「ふうむ…どれ、見ておれ―――」
レイン婆さんが呪文を唱えると、掲げた杖にポワッと炎が宿り、矢の形に変化して射出された。
炎の矢は30メートル先の的の中央に目にも留まらぬ速さで命中し、黒い焦げ跡を残して消えた。
「おおおおおおおおおお!!すげええええ!!!!!」パチパチパチパチ…
「ほっほ、これがファイヤーアローじゃ。ま、初級中の初級じゃな。」
「レイン婆さんすげえ!異世界っぽい!!!」
俺のテンションはぶち上がっていた。これが小説やアニメの世界なら、ファイヤーアロー?鼻ホジーで済むだろうが、よく考えてみ?人が炎を出せるんだぞ?
恥ずかしい技名をいくつも叫びながら、中学校を入学から卒業まで完璧な"中ニ病"で過ごした俺にはもうドンピシャ。心にグッと来る事やってくれるレイン婆ちゃん。
「ほっほ!まだまだ魔法はいっぱいあるでの!」
「おおおお!見てみたい!!でも俺もやってみていいか?」
「ふぁ!?いくらお主でも、知識と呪文なしには無理じゃぞ?それに、魔法の開花は不発を繰り返し―――」
「
両手のひらをパーに、そしてそのまま両手首を合わせ"呪文"を唱えると、俺の手元に青白い光が集まってくる。
「ってなんで手元が光ってるんじゃああああああああああ」
「
「やめるんじゃああああああああああああ」
「
両手を正面に向けると、俺の両手から巨大な青白いエネルギー球が放出され、真っ直ぐ的へ伸びる―――!!
バキィッ!!
そしてエネルギー球は的を突き破り、そのまま空へと消えていった。
「ふうぅぅぅぅぅ…。出来た…出来てしまった…!」
「い、い、いまのはなんじゃああああ…!」
「オッスおら野●雅子!御年83歳の、デェベテランだ!」
「!?!??!?」
「いえ…
「ほげええええええええ!!!??わ、わしにもその魔法を教えてくだされ!!レグザス殿!!」
ふっふっふ…!なんだかよく分からんがいけるッッッ!俺は魔法が使える!!!!!!!そしてこれが…!
「そしてこれが俺の全力全開ッッッッッ!!!」
俺は両手を空へ掲げ、先程婆さんが放ったファイヤーアローを想像する。いや、
「ま、まだやる気かあああああああああ!!!!」
「ファイヤアアアアアアアアアアアアア・・・・・」
俺の頭上に
「おい婆さん!!魔王軍の本拠地はどっちだ!!」
「ヒイッ!?き、北に400kmの地点じゃ!!」
「よし分かった!!」
俺は目を閉じ集中すると"スキル:霊視"を発動させ、魔王軍の本拠地の実態を捉える。
そして――――
「まさかお主―――」
「―――アロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!」
ブオンッ!とその柱を放り投げるイメージで手を前にやると、巨大な柱はさながら地獄の炎を纏った
「ヒイイイイイイイイイ!!!!!!!」
大質量を持ち音速を軽く凌駕する"それ"は、衝撃波で大地をめくり上げながら爆進した。
叫ぶ婆さんを尻目に、俺はすかさず右腕を力強く振り上げ、叫んだ。
「スッテエエエエエエエエエエエエエエエエッッッッッッタスウウウウウウウウウッッッッ!!!!!!!」
「ヒイ!!?・・・・・ステータス・・・???」
【名前】レグザス
【年齢】34歳
【職業】霊能者
【レベル】5,631
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・???」
右腕を天へ掲げた俺、目をまん丸にしたレイン婆さん。
そこには沈黙の時間が流れる。
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まだまだ続きますよー!
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