第16話 最悪の再会
中学を卒業し、附属高校の入学前物販。
そこで、最悪の再会を果たしてしまう…
私が通っていた学校は
高校がかなりのマンモス校で、
中学が1学年約250人に対し、
高校は650人を超える。
つまり、外部からの入学者が400人ほどいる。
個人的には、
知らない人が多くなればなるほど
「カツラの私」を意識せずに
過ごすことが出来てラッキーだと思った。
ただ、私立とはいえ市内の学校。
同じ小学校出身者がまた何人も現れても
おかしくはなかった。
物販会場のホールには、
ものすごい数の人。
これが全員同級生とは…
当たり前だが、廊下ですれ違う人が
同学年なのか他学年なのかは
靴の色を確認しなければ全く分からない。
卒業アルバムを見て
初めて知る人もたくさん。
余談はさておき、
この芋洗い状態の生徒の中に
日置を発見してしまった。
ドクン…
心臓に冷たいものが流れた感覚だった。
血の気が引いたというか。
寒気がしたというか。
走馬灯のように
生々しく全てが蘇った。
何が楽しかったのか思い出せない小6の日々。
まただ。
また地獄の日々が始まる。
涙目になりそうなのを必死に堪え、
ひとまず、
私に気づいていなさそうな日置に
気づかれないように行動した。
「私の高校生活、終わったわ。」
帰宅して母にこぼした一言。
「どうして?」
と聞く母に、大粒の涙で答えた。
「今日、物販に日置がいた…
なんで?ねぇなんでよ?
よりによって、なんであいつなの?
もう終わりじゃん。」
母は黙って聞いていた。
というより、考えたような顔をしていた。
結果、母は日置家に連絡した。
日置、日置の母、私の両親の4人で
ファミレスだかカフェだかで
会って話すことになった。
「小学生時代に、あなたが
うちの娘にしたことは覚えていますか?」
日置は、詳細なことは覚えていなかったが、
私に嫌がらせをしていたことは覚えており
認めたそうだ。
「娘は、入学前物販であなたの姿を見て、
自分の高校生活は終わった、と
地獄の再来だと言っていたのだけれど。」
母は、怒る訳でもなく、
感情的になる訳でもなく、
淡々と話したらしい。
そして、日置は当時のことを両親に詫び、
高校であの時のようなことは決してしない、
と言ったそうだ。
中学で改心して部活に打ち込んだらしく、
まともな価値観の青年に見えたとか。
「それを約束できるなら、
加えてもう一ついいかしら?」
「高校でもし、あなた以外の誰かが
娘のカツラのことで騒いだり、
何か嫌がらせのようなことをしているのを
見つけたら、
それを止める、辞めさせる立場に立つと
約束してくれる?」
「はい、約束します。」
母は、日置と2つの約束を交わして
帰ってきたのだった。
夢を叶える〜ハゲと笑われた女の子の物語〜 成瀬莉子 @Ricooo
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