第11話 名指しの落書き
校内で問題視されていた6年2組。
じきに、学区内の公園の遊具への落書きが
話題に挙がるようになる。
もちろん、落書きしたのも
うちのクラスの奴らだ。
書いているところを見たわけではないが、
書かれている内容を見れば一目瞭然。
もともと古い落書きが
いくつも残っているような
ちょっと治安悪めな公園だった。
古くなって消えてきた落書きの上に、
新しくデカデカと落書きが追加されたのだ。
ある日、担任の大原が言った。
「あそこの公園の落書きをみんなで消しましょう!」
クラス内でボランティアを募ったのだ。
そもそも、この発案が全くの意味不明。
自分が全くクラスの統制を取れず、
荒れた生徒たちがクラスメイトの悪口を
名指しでいくつもいくつも書いているものを
みんなで消しに行こう?
名指しで書かれた自分の悪口を
頑張って消すことになる生徒が出てくると
想像出来なかっただろうか?
そもそもこの女教師のえこひいきが
学級崩壊の大元の原因だが、
この期に及んでそんな誘いが
出来てしまうあたり、
大人としても、教師としても、
私はこの人を許せなかった。
当然本人は公園の落書きを下見している。
いじめに遭っていた東のことだけでなく、
名指しで死ねとか消えろとか、
ブリッコとか書かれてる女子もいた。
もちろん大原の悪口も。
その全てを見たうえで、
クラス内でボランティアを募る謎。
書いた張本人たちに消させたい、
というのが真意だろうが、
そんな奴らがボランティアに参加する
わけがない。
結局、書かれた側が
わざわざ傷つきに行くだけだ。
そして当然、私のことも書かれていた。
今でも忘れない一文だ。
「ハゲ成瀬、そのヅラわかってんだよ」
大体誰が書いたのか想像がつく。
ボランティアに参加して、
油性ペンで書かれたその一文を
自分で一生懸命消せというのか?
あまりに酷だ。
落書きは消すべきだと思ったが、
そのボランティアに参加する気には
到底なれなかった。
そして、
そんな落書きがあったことを知っても、
担任から私へは
何のフォローも気遣いもなかった。
授業中にひどい言葉が飛び交っても、
注意するどころか、
言われた側の様子を見て
泣いたりしていなければ放置するような人だ。
この人のクラスだったことは
実にアンラッキーで、
担任が違う人だったら、
もっと相談できたんじゃないか、
と思ったこともあった。
当然私は例のボランティアには
参加しなかった。
担任の大原の唾がついた
仲良しの女の子数人が行ったのだろう。
私のことが書かれた落書きを
誰が消したんだろうか?
本当にちゃんと消えたんだろうか?
その場にいた人たちの中で
話題になったりしたのだろうか?
大原はなんて言っただろうか?
そんなくだらないことが
しばらくの間は気になった。
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