第6話 幸運にも本性を知る
私にとっての嵐のような日々は
6年生でやってくる。
これはそれよりも前の話。
4年生の時だった。
給食の時間。
男子2人、女子2人の4人ずつ
机を向かい合わせて、
お喋りしながら食べている。
その日のメニューには
トウモロコシがあった。
男子2人がトウモロコシの食べ方の綺麗さ
について話している。
「お前の汚いな、
トウモロコシがハゲてるみたい。」
「そんなことねーよ、
お前もやってみろよ。」
「成瀬さんと同じだね。」
場が凍りつく。
この最初の会話で出てくる「ハゲ」は、
良くも悪くも私を意識することなく
発せられた、おちゃらけ男子の戯言だ。
それをわざわざ、
「成瀬さんと同じだね。」
と嫌味に変えたのは、
その会話に1ミリも入っていなかった
もう1人の女子だ。
男子2人の驚いたような、
そして気まずそうな顔。
だから彼らに悪気はなかったのだ。
しかも、すぐ隣で給食を食べていた先生が、
立ち上がって居なくなった
タイミングを見ての一言。
この一連の出来事も、正直
嫌がらせのレベルとしてはかなり低い。
ただ、この女の子、
クラスでは、いや学年の中でも
いわゆる大人受けのよい"優等生" だった。
聞き分けがよく、積極的に発言し、
時にはお説教役なんか買って出たりして、
ひとつ間違えば、
「あの子を見習いなさい。」
とかお手本みたいにされちゃうようなタイプ。
これが私が今でも
この程度のことなのによく覚えていて、
思い出すと腹が立つ理由だ。
それ以降その子が褒められるたびに、
「この子本当はこんなこと言いますよー!」
って大声で叫んでやりたかった。
「髪の毛のことがあるから、
他の人が気づかないその人の本性や本質が
垣間見えることがあるかもよ。
ラッキーじゃない。」
と、母が言っていたことがあった。
ラッキーがどうかはさておき、
それに初めて納得した出来事だった。
悪気がなかったのに、
私に申し訳なさそうな顔をした男子2人の
優しさもよくわかった。
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