第5話 嵐の前の静けさ

小学校に上がり、ハゲ頭で通学していたら

とても有名になった。

入学式の時から目立っていただろう。

最初のうちは、

校内ですれ違う上級生の視線も気になった。


ただ、幼稚園の頃と違って

周りも分別がついている。

それまでぶつけられていた

「なんで?」の疑問は聞こえなくなった。


クラスメイト、同級生、

そんな仲間意識も芽生えるのだろうか。

知らない場所に行くと

同じくらいの年齢の子たちに

指をさされたり、笑われたりすることは

まだまだあったが、

不思議と学校ではそれは少なかった。


先生たちも、決して私を特別扱いしなかった。

私と両親もそう願っていたからだ。



「成瀬さんはとてもたくましいですよ、

男の子とも対等です。」

三者面談や家庭訪問でもそう言われた。

実際にそうだっだと思う。



髪の毛がないこと、

余計な他人の視線を感じること、

笑い声が聞こえてくること、

これらは当時の私にとって

常に気になっていたことに違いはない。


それでも、髪の毛がないことで

受ける嫌がらせは、

この頃はまだ数えられるほどで、

当時の私は傷ついただろうが、

あくまで日常の一部だった。

大人になった今その一つ一つは

思い出せない程度のものだった。


思い出せるのは、周りのお友達の

小さい女の子特有の可愛い髪型を見て、

羨ましいなぁと思っていた記憶。



だから、この頃は

普通に学校は楽しかった。


時にはお友達と喧嘩したり、

先生に怒られたこともあったけど、

平和で平凡な毎日。


この数年後に、同じ場所で

嫌気がさす嵐のような毎日が来るなんて、

想像もしていなかった。






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