第3話 ハゲジョの発明

私は小学校4年生の終わりまで、

毎日懲りずにハゲ頭で生活していた。

7歳の七五三の1日を除いては。



3歳の私が既にリカちゃん人形の

ツインテールに憧れていたように、

髪の毛への憧れはずっとあった。


細長いフェイスタオルを

左右に長く頭にのせて

髪の毛のように耳にかける。

実はこれ、

左右のタオルそれぞれにゴムをかければ

ツインテールに、

左右のタオルを後ろにまとめれば

ポニーテールになる優れ技。


誰が思いついたのだろう?

母か?それとも私か?


幼稚園から小学校にかけてだろうか、

私は毎日のように

これで家で楽しんでいたので、

本当に天才的な発明だ。


そして人間は、

強い興味があると創意工夫に余念がない。

なんと、

タオルのカツラで前髪だって作れたのだ。

ちょうどおでこにあるタオルの繊維を

適当に引っ張ってみる。

糸がたらーんと簾のように顔にかかる。

少し長めにしておいて、ハサミでカット。

立派な前髪の完成だ。

夏休みの自由研究は頑張れないのに、

ロングヘアごっこのためなら

こんなことも思いつく。

調子に乗って、私がダメにしたタオルは

全部で何枚あるだろうか。


次第にツインテールとポニーテールの

二択には飽きたのか、

鏡に映るその姿のシュールさに虚しくなったのか、

母のリアルな髪の毛をヘアアレンジするのが

私の好きな遊びに変わっていった。


そのために、自分が使えもしない

ウサギのついたヘアゴムや

キラキラの髪留めも買ってもらった。

それを使って、本当は自分がやりたい髪型を

何パターンも飽きずに母に施した。


自分の頭でやったことがない割に

器用に母の髪を結んでいた。

我ながら、子供なのに上手だったと思う。

学校で三つ編みがほどけてしまった友達を

助けてあげたこともあったほどだ。

なぜこんなハゲ頭が

三つ編みを得意とするのか、

友達だって不思議だったに違いない。



「ママこれじゃあ外に出れないよ〜。」

「宅急便が来たら困っちゃう〜。」


子供のような髪型にされた母が、

よく言っていた。

いつも母は笑っていた。









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