第2話 終わりのない答えさがし

みんながよく聞く

「なんで髪の毛ないの?」

という問いの答え。

私も1番知りたい答え。

いや、今言うならば

昔の私がとても知りたかった答え。


答えはない。


私がこの世に産声をあげた時、

しっかり髪の毛は生えていたのだ。

むしろ、

新生児にしてはしっかり過ぎるくらいに

ちゃんと髪の毛が生えていたのだ。

日本ではなかなか見かけないような

天然物のアフロヘアー。


ちなみに、私の両親は、

いわゆる直毛と

ちょっと猫っ毛気味の直毛だ。

渦を巻くようなアフロヘアーの我が子に

両親も驚いただろう。

どうやら父の遠い親戚に

アフロヘアーの親子がいるようで、

隔世遺伝???

まあ今は無い髪の話なので、

そのルーツはどこでもいい。

そんなフサフサでフワフワのアフロヘアーが

徐々に徐々に抜けていってしまった。


「髪が抜けた原因 "かもしれない"」

と医師に言われたのは、

生後4ヶ月頃に細気管支炎で

熱性けいれんを起こした時に

命を救うために強い薬を使ったこと。

あくまで、「かもしれない」の話。

結局、原因の特定は難しい。

つまり、これといった治療はできないのだ。


大学病院では、

「頭皮を切り取って研究に回しますか?」

と聞かれた。

そこまでして、痛い思いをしてまで

知りたいとは思わなかった。


だから、

私が本当に知りたかった答えはない。

そして、みんなの「なんで?」は

こんな難しい答えを

求めているのではないのだ。


「莉子ちゃんはなんで髪の毛ないのー?」

「莉子ちゃんはなんでハゲてるのー?」


「赤ちゃんの頃にね、病気しちゃったの。

髪の毛はないけど、今は元気だから遊べるよ。

仲良くしてね。」

母がいつも私の代わりに答えていた。


「そうなんだ!

莉子ちゃん、あっちで遊ぼう。」

「うん、行こう。」

子供って素直だ。

また母の返答も秀逸だ。

聞いてくる子供に悪気がないことを

120%理解したうえで、

その会話の後に嫌な空気が残らない、

すぐに楽しい世界に戻れる

最高の答えだと思う。



「なぜ私には髪の毛がないのか。」

この終わりのない答えさがしを

私はいつの間にかやめていた。


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