第99話 夜の訪れ
「――じゃあ、ベルに頼まれたのがきっかけで、ボスが悪の組織をつくったわけじゃないんですね」
ボスの話を聞いて、私はやっと悪の組織の成り立ちがわかって――前にお風呂でベルと話したときからずっと疑問だったことが解消された。
ベルが自分のことを宇宙から来たって言ってたから、てっきりボスもそれと似たようなかんじなのかと思ってたけど……ボスも私と同じ人間だったんだ。
「でもなんで『ボス』なんですか? 組織をつくったのはベルなんだから、ベルがボスをすればいいと思うんですけど」
「僕も最初はそう言ったんだけど、『自分のような愛らしい猫がボスをやっても威厳が出ないし
「はあ……」
まあたしかにベルの主張はわからなくもない。魔法少女であろうと敵であろうと、猫みたいな動物といえば使い魔と相場は決まってる。単に自分がやるのがめんどくさかっただけかもだけど。
しかも愛らしいって……ただのナルシストじゃん。
「それから僕とベルは、3つのことを条件に契約をしたんだ」
「3つのこと?」
「ひとつは、僕が持つマイナス感情エネルギーは、ベルが好きにしていいこと。
ふたつめに、ボスになる以上は組織の最終意思決定は僕に委ねること。
そして最後に、僕の正体は誰にも話さないこと」
まあ、君にはバレてしまったみたいだけどね、とボスは小さく笑う。
「あ、あはは」
ほんとはベルにカマをかけたからわかったんだけど……そのことは黙っておこう。ベルのために。
「さて、と」
キィ、と再び金属のこすれる音が鳴る。ボスがブランコから立ち上がっていた。
「そろそろ帰ろうか」
「え」
「暗くなってきたし、君のご両親も心配するからね」
言葉のとおり、周囲は公園にきたときよりも光が少なくなっている。親戚のお兄さんと一緒という
だけど、
「あの」
「うん?」
「その前にもうひとついいですか?」
私は訊く。これを逃すともう教えてもらえるチャンスがないように思えたから。
「えっと……どうして急に決戦をすることにしたんですか?」
少し前にベルから告げられた、明後日の決戦。それを決めたのは、ほかでもなく目の前にいる人だ。つまりは理由も目的も、すべて彼の中にある。
「そうだね……」
少し
「君には話すことにしようか」
小さくうなずいて、こっちを向いてくれた。
だけど同時に、表情に影が落ちる。夜がすぐそこまで近づいてきているからか、それとも彼自身の暗闇からくるものなのか。
「……」
目を離したら夜の中に溶けていってしまいそうな姿を見つめていると、ボスはゆっくりと口を開いて、こう言った。
「僕がこの世界に……そして魔法少女に絶望したからさ」
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