第56話 真・魔法少女ホワイトリリー!

「タマァ……」

「チィー……」


 ホワイトリリーの前で倒れる玉子怪人とチーズ怪人。


「うそ……」


 ほんの一瞬前には、勢いよくホワイトリリーに襲いかかっていたのに。


 怪人の身体からは、ぷすぷすと煙が。見たことがある。ホワイトリリーのビーム攻撃を食らったときの状態だ。


「さっきまでの私とは違うわよ」


 凛々しい声を放つ彼女の手には――きらりと光るハートのステッキ。


「まさか……あの一瞬でビームをうったっていうんか? そんな素振りなかったやろ」

「うん。私も……見えなかった」


 今までの戦いだったら、少なくとも攻撃しようとする動作は見えていた。


「あれが、ホワイトリリー本来の速さよ」


 エリーさんが言う。まさに『目にも止まらぬ』速さ。


「もう暴れまわるのは終わりよ」


 残り1体となった牛丼怪人にステッキを向ける。怪人も形勢逆転を理解しているのか、たじろいでいた。


「ギュギュギュ……」

「諦めなさい。今の私の攻撃なら、あなたは避けられないわ」


 ホワイトリリーがさとす。もう勝負は決したと。


「反省するなら、まちの人たちを怖がらせたことは許してあげるわ」


 だけど私には――プリピュアで何百回も戦いを見てきた私にはわかる。そんな言葉で大人しく降参するはずなんかないって。


「ギュー! そんなの知るかギュー!」


 だって彼らは『悪の組織の怪人』だ。他の誰の言うことをきいたとしても、敵である魔法少女の言葉になんか、耳を傾けるはずがない。


「避けられないなら、攻撃あるのみだギューッ!」


 力強く言うやいなや、ため・・の姿勢をとる。


「うまい、やすい、はやい……」


 そして聞いたことのあるフレーズ。なにが繰り出されるかは、言うまでもない。


「つゆだくアタック!」


 全体重をのせた体当たりが、等身大サイズのどんぶりの弾丸が、ホワイトリリーめがけて向かってきた。前回の戦いで、彼女を敗北に追い込んだ決め技。


「無駄よ!」


 だけど、ホワイトリリーは恐れることも、あせる様子もない。真っ向勝負でぶつかるつもりなんだろう、ステッキからビームを放つ。


「ホワイトスター!」

「ギューッ!」


 ビリビリビリ! 激しい音を立ててぶつかり合うビームと牛丼怪人。バチバチと火花が散る。

 数秒せめぎあいが続いたかと思うと、バチンと弾けた。


「ギュッ!」


 ぐるぐるぐる、と空中をバク転しながら離れた位置に着地する牛丼怪人。かたや、一歩も下がっていないホワイトリリー。


「……」

「……」


 そして――ひざをついたのは、怪人の方だった。

 しかも、よく見れば腕のあたりがチリチリ、と少しだけげている。


「やった、効いてる!」

「おお! ええかんじや!」


 確実にダメージを与えている。対するホワイトリリーには、目立ったダメージはない。


「わかったでしょ?」


 牛丼怪人に近づいて、ステッキを向ける。


「もう降参しなさい」


 再び諭す。


「ギュギュギュ……」

「仲間もやられて、あなただけでは私に勝てないわ」

「せや! 今日のところは暴れるのをやめるんや!」

「そうじゃ! ワシの言うことを聞いて、一緒にくるんじゃ!」


 ベルとハカセも乗っかって説得する。


「ギュー……」


 敵味方からの敗戦勧告。それを受けて力なく、牛丼怪人はつぶやく。


「わかったギュー……」


 よかった、これで戦いは終わり――


「なーんて、誰が言うかギューッ!」

「「「!!」」」


 全員が驚いたスキをついてた立ち上がり、ムキムキのポージングをとりながら叫ぶ。そして、


「まだ終わりじゃないギューッ!」


 どんぶりのフタが、ぱかっと開いた。

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