第57話 好きな牛丼のトッピングは?

「まだ終わりじゃないギューッ!」


 立ち上がるって叫ぶ牛丼怪人。同時に、ぱかり、と身体のどんぶりが開いた。

 というかあれ、開くんだ。


 身体が大きいから、どんぶりの中身がどうなっているかは見えない。でも湯気が上がってるってことは、ほんとに牛丼が入ってるのかも。


「くるんだギューッ!」


 なんて考えていると、再び叫び声。


「タマーッ!」

「チーッズ!」


 いち早く反応したのはなんと、やられたはずの2体の怪人だった。


「いったいなにを……」


 驚きつつもステッキを構えることをやめないホワイトリリー。

 と、直後。


 倒れている玉子怪人とチーズ怪人が、引きずられるように動き始めた。


「なっ」


 ぎゅるるる。

 牛丼怪人の開いたふたが、まるでブラックホールになったみたいに、怪人たちがぐるぐるうずえがいて宙を舞う。あっという間に2体の身体が吸い込まれたかと思うと、


 ――かぱん。

 ふたが、閉じた。


「ギュギュギュ……」


 さっきまでと同じような鳴き声。だけど、どこか笑っているようにも聞こえる。

 よくわからないけど、たぶんヤバい!


「ホワイトリリー! 早くやっつけちゃわないと!」

「! ホワイトスター!」


 ホワイトリリーも危機感のようなものを察知したのか、至近距離でビームを放つ。第2形態で強力になったやつを。

 だけど、


「ギューッ!」


 驚くべきことに、牛丼怪人は華麗に跳んでそれをけてみせた。


「えっ?」

「うそっ」

「ギュギュギュ……さっきまでと同じとは思わないことだギュー」


 体操選手みたいに着地を決めると、意趣いしゅ返しのようにホワイトリリーのセリフをそのまま返してくる。


「牛丼怪人、あなた……」


 ホワイトリリーが言うと、牛丼怪人は「ちっちっち」と指を振って、


「俺はもう、ただの牛丼じゃないギュー」

「……どういうこと?」

「ギュギュギュ、俺は生まれ変わったんだギュー」

「生まれ変わった?」

「新しい俺の姿、目に焼きつけるがいいギュー」


 すると、さっきは開いたふたが今度はパリン、と真っ二つに割れた。その破片が消えると同時、怪人の高らかな声が、駅前広場に響き渡った。


「俺の名は……温玉☆チーズ牛丼!!」

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