第26話 真のファンなら予習は当たり前

「ふあ~……」


 翌朝、いつもよりずっと遅い時間に目を覚ました。


 作戦会議は、なかなかに白熱した。私がある戦い方を提案すると、橋本はしもとさんたちもいろんな意見を出してくれた。さすが悪の戦闘員ファンなだけはある。

 おかげで帰りが遅くなって、お母さんにちょっと怒られたけど。


 みんなで話し合って、次にホワイトリリーと戦うときの作戦はだいたい決まった。あとはハカセがそれ用の怪人をつくって実戦に挑もう、ということで作戦会議はお開きとなった。


 それにしても。


「今日が土曜日でよかったー」


 平日だったら、たぶん学校に遅刻していたに違いない。ひっそりと生きていたい陰キャの私にとって、遅刻なんて悪目立ち、最悪だ。


「ん~……」


 見れば、枕もとのスマホがぴかぴか光っている。LINEの新着メッセージっぽい。


「……まさか」


 ベルじゃないよね……?

 いきなりの集合はなしってキツーく何度も言ったけど、あのバカ猫のことだ。数日経ったら忘れてそう。

 目もとをこすりながら、スマホを見る。うう、画面がまぶしい。


 そこには、


『乃亜☆:今日の映画、楽しみだね!(07:30)』

『乃亜☆:待ち合わせ、10時でよかったよね?(08:30)』

『乃亜☆:もしかしてちーちゃん、まだ寝てる?(09:00)』


「……」


 目をぱちくり。ごしごし。


 うん……と。見間違い、かな。それか夢で寝ぼけてたんだ。きっとそうに違いない。

 よし、今度はしっかりと目を開けて、と。


『乃亜☆:新着メッセージ3件』


「……ゆ」


 夢じゃなかったああああ!!


 私はまるでバネでもついているみたいにベッドから起き上がる。同時に、頭の中を数日前の記憶がマッハで駆け抜ける。


『ちーちゃんも知ってると思うけど、週末からこれ、始まるでしょ?』

『よかったら、一緒に見に行かないかなーと思って』

『今映画、楽しみだね! よろしくね!』


 そ、そうだった!

 今日は乃亜のあさんと映画に行く約束してたんだった!


 怪人さわぎに作戦会議で完全に頭から抜けていた。ていうことは私、プリピュアの映画の存在も忘れてたってこと!?


「くっ……」


 プリピュアファンとして、一生の不覚……っ! 飾ってあるフィギュアに土下座して謝らないと。


 って、そんなことしてる場合じゃない!


 時刻は――9時20分。待ち合わせ場所は駅前だから……

 今からなら、まだ間に合う!


 着替え、寝ぐせ直し、ハミガキ。私史上、最速で準備を済ませる。


「あら優月、朝ごはんは」

「いらない! 行ってきます!」


 ああ、もう! ほんとならゆったり準備して、なんならCDも聞いて、好きな話の録画を見返してから行くのに!


 やっぱり悪の組織に協力なんてするんじゃなかったー!

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