エピローグ:試練と罰を乗り越えた先
緑がいなければ、きっと私はここにいない。
当たり前の様に流されて、脅されて、抱かれて……神様を欺いた罰として最悪の結果になっていたと思う。
でも違った。
これは罰であり、罰ではなかった。
——与えられたのは、試練だった。
私が、緑が、乗り越えるべき壁だったんだ。
原因は私にあるけれど、間違いなく本当の自分を見せて、話をするべく為に作られた時間だったと今になっては思う。
こんなにも簡単だったことを難しくしていたのは、私達が向き合っていなかったから。
だからこうして今は隣に居られる。
それだけでこんなに幸せを感じることが出来るようになれたのだ。
気付かなかったのは私だけ。
ずっとこれは罰だと自分に言い聞かせ、自らその方向へと歩いていた。
やけくそになってもう無理だ、こうなる運命だって、これは罰だから仕方がないって。
だけど、正してくれた。
緑が私を本来の道に戻してくれた。
お前の歩くべき道は、こっちだと。
いつだって緑は私の為に奔走してくれていた。
私のせいって分かっているのに、更に追い打ちをかけるように自己嫌悪に走って、余計に話をややこしくさせ、そこに落ちて行った。
もっと気持ちを話し合えば……いや、違うな。
もっと私が自分の気持ち素直になっていれば、迂回して、障害物に阻まれたりすることはなかったのだ。
つまり、神様が私に与えた罰は——気持ちを隠すこと。
そしてそれを乗り越えるための試練であった。
乗り越えた先にあるものを神様は知っていたんだね。
ありがとう、本当に。
嫌なことばかりじゃなかったよ。
だから、ありがとうございました——あと、すいませんでした。
♢
ぱちんと弾けた泡は戻ることはない。
だったらもう一度作ればいいだけの話だった。
答えはいつも簡単に出来ていたのに、複雑にしていたのは自分だった。
試練、か。
神様は本当に意地悪だな、まじで。
自分の気持ちを全て見透かして、お前はどうあるべきなんだと問いかける。
お前はどうしたいんだ、彼女とどうなっていきたいんだと。
これから与える試練は向き合う心とそして自分の気持ちに素直になることだ。と言われて、現実として突きつけられた気がしていた。
まさにその通りだったのだ。
殻に閉じこもった自分が気持ち悪くて仕方がなく、いつまでも殻を破って外に出ることを拒んだ。こうである、こうでないとおかしいと決めつけ逃げていた。
薄い殻を分厚い殻に変えていたのは自分自身で、相も変わらずいつも通りだったのだ。
取り繕った会話、ぎこちない笑顔。
そうして作られた現実を当然のように過ごすのは気持ち悪いもの。
彼女を見ていなかったのは自分。
見てくれていたのは、瑞希。
何もかも簡単な事だ。
向き合えてなかったのは俺だ。
だからこうなったまで。
どうあるべきか、なんてもう分かったよ。
本当に感謝しかない。
これからは瑞希と一緒に新しいものを作り上げていくよ。
なあ、神様。
——本当にありがとうございました、それにすいませんでした。
♡
気持ちよく眠っていた。
いつもは飲まない久しぶりのアルコールは美味しく感じ、缶一本で酔いが回りこのざまだ。
スカートははだけて、パンツが見えそうになっていた。
寝かしてくれたのは緑だろう。
だけど、その張本人は何処へ?
周りを見渡しても姿が見えない。
トイレの電気もついていないし、シャワーを浴びている様子もない。
外は話していた頃よりも薄暗く、日は傾き始めている。
……それほど寝ていたわけじゃないのね。よかった。
目を擦り、大きくあくびをすると、玄関が開いた。
何やら電話をしていたようで、じゃーなという声と共に家に上がってきた。
「おお、起きたか」
「うん」
誰と電話してたの? って聞いてもいいのかな?
ええい! 聞いちゃえ!
「えっと、その、電話は……男の人?」
「ん? ああ、新だよ」
「そっか……」
良かった……。
「それでなんだけど……」
「なに?」
「瑞希、引っ越さないか?」
また突然。
どうしてそうなってしまったんだろうか。
*****
あとがき
こんにちは。えぐちです。
えー、今話にて第二部は完結です。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
目標のフォロワー1000人も突破し、星も500を超えることが出来ました。
とても嬉しいです。
ありがとうございます!
皆さんのおかげでここまで来れました!
第三部は少し時間を空けてからの投稿になることを、どうか許してください(笑)
いつもコメントしてくる皆さんへ。
毎回嬉しいコメントをありがとうございます!
最近、返信が遅れがちでごめんなさい(笑)
いつもありがとうございます!!
これからも頑張ります!
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