第二部
プロローグ:罰と試練と決別と
これは神様からの罰だ。
神前で嘘をつき、大衆を欺いた罰。
長い時間をかけてきた関係は瞬きをする間もなく、破綻する。
そう——壊れる時は一瞬。
トランプで積み上げられたタワーの様に、少しでも触れてしまえば崩れ落ちていく。
繊細で、脆くて、些細なことで壊れてしまうのだ。
取り戻したくても、時間を戻したくても、何を言っても、取り返しのつかない現実。
——きっと彼は私に幻滅した。
冷え切った声音が、態度が、顔が、そう言っていた。
私が悪い。分かってる、そんなこと。
縛り付けられた過去に、私は未だに決別できていないと知った。
電話一本で、心の隙間に土足で踏み込んでくる。せっかく変わろうとしていたのに、ずけずけと。
期待ばかりして、裏切られてもなお、まだ過去に縛り付けられて、鎖に縛られて。
いい加減、こんな自分に嫌気が差してきた。
私は緑が好き。これは変わらない想い。
でも、繋がれた鎖は私を縛って離してくれない。
せっかく築き上げた関係は、私が壊してしまった。
——さよならをする時が来たのかもしれない。
だから丁度良かったの。
あなたにさよならを告げる日が来た。
あの日流せなかった涙を、今——ここで。
♢
きっとこれは神様から与えられた試練だったのかもしれない。
神様を騙し、大衆をも欺いた俺達に対する試練。
これまでの時間を弾けさせるように壊してしまった。
まるでシャボン玉のように。
触れてしまえば、パチンと弾けて消え去るように。
それだけ脆くて、表面しか取り繕っていない関係だったと言ってしまえたら楽だったかもしれない。
あれは本心——じゃなくて強がりだ。
結局、上辺だけの関係を取っ払おうと言ったのは俺なのに、現実を突きつけられて逃げただけなのだ。
言いたかった。
でも、言えなかった。
いつだって俺は嫌な物から目を背けて逃げて。
本当の自分を見てほしいとばかり人には押し付けているくせに、自分自身は彼女を見ようともしない。聞きもしなければ、違う話をして場を和ませることに必死になってしまう。
自己保身に過ぎない。
勝手に決めつけて、殻に篭る。
目の前に起こる現実をなかったことにして、新しい現実を、偽物の現実を作り出す。
ある意味、これがきっかけになって良かったのかもしれない。
いつまでも過去から逃げ出せずにいた自分に吐き気がしていたから。
決別をしよう。向き合って、ちゃんと話して。
だからその涙は俺がちゃんと受け取るよ。
——きっと、大丈夫。
明日からはいつも通りに戻るさ。
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