終の巻 『二天一龍』

【終の巻】


 アタシの使う二天一流とは、これすなわち『二天一龍』。


 この世界のそらだけでなく別の世界のそらすらも、自由自在に天翔あまかける一体の龍のごとし――。


 つまりアタシがその龍ってこと!

 言わせんなよ、ちょお恥ずかしいじゃん!

 羞恥プレイか!


 まぁつまりは――、


「思いあがるなよ佐々木小次郎コジロー。たかだか飛燕ひえんを斬ったくらいで、二天を疾駆かける龍を打ち落とせるなどと、ゆめゆめ思うなかれ――!」


 なーんてね!

 なーんてね!


 はいはい、こーゆー堅っくるしいのはナシナシ!


 趣味じゃないし、なにより楽しくないもんね!


「じゃあもう、そろそろ終わりにしよっか。アタシに本気を出させたんだから誇っていいよ。うん、ほんと楽しめたよ、佐々木小次郎ささきこじろう――」


 いまや天ける龍の化身となったアタシは、


「きぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいいいいっっっっ!!!!」


 今までで最速となる佐々木小次郎コジロー渾身のツバメガエシをかいくぐると、


「じゃあね、ばいばい――」


 一刀のもとに佐々木小次郎コジローを斬り伏せたのだった。



「武蔵……みご……と……な、り……」


 最後にそう言い残して事切れた佐々木小次郎コジロー


 それと前後して、荒れ狂う龍が再びアタシの中で眠りについてゆく――。


「悪いけど、感傷とか感慨って気持ちはないんだ」


 アタシはどこまでもそういう人間だった。

 アタシは、アタシが最強であることにしか興味がないから。


 負けたやつのことなんかイチイチ覚えていても無意味だから。


 ――でも、ちょっとだけ頭の片隅で覚えておいてもいいかなってくらいには、楽しい戦いだったかな。



「さーてと、決闘も無事終わったし、本土に帰ってお茶でもしよっと。新作のお団子もう出てるのかな? 楽しみ~」



 まぁそういうわけでして。


 アタシ宮本武蔵はガンリュー島(漢字むずい)の決闘で佐々木小次郎コジローを倒して。

 晴れて、名実ともに「日本一の剣豪」となったのだった。


 ちゃんちゃん。



 現代語訳「巌流島の決闘」――完。



 温かい応援ありがとうございました!(*'ω'*)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アタシ宮本武蔵! 今からガンリュー島で佐々木小次郎と決闘するんだけど…… マナシロカナタ✨2巻発売✨子犬を助けた~ @kanatan37

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ