「アタシの中にはさ、龍が宿ってんの」

【7の巻】


 とまぁ剣士としての冷静な部分で、そんなことをつらつら考えている間にも、


「秘剣『燕返し』!」


「わっととっ!」


「秘剣『燕返し』!」


「せいやっと!」


「秘剣『燕返し』!」


「よいしょー!」


 佐々木小次郎コジローの猛攻は続いていく。

 よーしゃない連続攻撃だ。


「ははっ、ほんとに強いじゃん。佐々木小次郎コジローのことマジ見直したんだけど」


「ぬかせ武蔵! ただ逃げ回っているだけのくせに――!」


「――でもま、こんなもんかな」


 その言葉と同時に、アタシの右目に『龍』が宿った――。


 直後、


 ガキン――!


 佐々木小次郎コジローの何度目かのツバメガエシを、アタシははじき返してみせる。


「なん……だと……!?」


 驚愕にゆがむ佐々木小次郎コジローの顔。


 !Σ(゚Д゚)

 こんなかんじ。


「馬鹿な……拙者の秘剣『燕返し』をいとも容易くはね返すなどと……考えられん! 何が起こったというのだ!?」


 再び襲いくる佐々木小次郎コジロー大上段からの振り下ろし――それをアタシは飛び上がって避けた。


「勝機! 動けぬ空へ逃げるとは愚かなり! 落ちよ武蔵、その不敗の名声とともに――! 秘剣『燕返し』!!」


 佐々木小次郎コジローが、アタシの回避運動を狙いすました瞬時の切り上げツバメガエシで追撃する――!


 それを――、


「ひょいっと」


 アタシはまたもや空中でくるっと回転してかわしたのだった。



【8の巻】


「なにぃ――っっ!!??」


 立て続けにツバメガエシをかわされ、目ん玉をひん剥いて&口をあんぐり開けちゃった佐々木小次郎コジロー


「ぐぬぅ、このようなこと、まぐれに相違ない! ――秘剣『燕返し』!」


 ひょい!


 それを再び空中で身をよじって華麗かれーにかわすアタシ。


「んがっ――!?」


 ふっふーん、驚いてる驚いてる。


「馬鹿な……飛ぶ燕すら落としてみせる我が秘剣。そう易々と破れるものではないはずだ――! 武蔵、貴様なにをした!?」


 必殺技を完全に見切られた佐々木小次郎コジローなんかめっちゃ困ってるみたいなので、アタシは解説してあげることにした。

 アタシってばほんとやさしーよね。

 なんちゃって、ウケるww


「だってさ? 飛んでる燕を落とすだけの技なんだから、燕よりはやく動けばいいだけっしょ? イッツ・ベリー・イージー、OK?」


 こんな簡単なこと、なんでみんなわからないんだろうね?


「ざ、戯言ざれごとを――」


「ざれごとじゃ、ないんだよね。アタシの中にはさ、龍が宿ってんの」


「――は?」


 こんどこそ本当にぽかーんとする佐々木小次郎コジロー


 そうだよね、信じられないよね。

 いきなりこんなこと言われても。


 でもさ。

 間違いなく、アタシの中にはただ強さだけを求めて荒れ狂う一匹の龍が宿ってるんだ――。

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