第4話 そんなこと知りたくなかった

あの告白の返答から一日たった。今日も綺沙と佐伯は2人仲良く下校している。


「そういえばな、佐伯」

「なんだ?」

「いや、やっぱ言うのやめるわ」

「なんでだよ。話せよ」

綺沙が話すのをやめようとしたが佐伯は続けてくれと言った。

「本当にいいのか?」

「ああ。」

綺沙は注意したが佐伯は大丈夫だと答えた。

「昨日な、俺の部屋にGが出たんだよ」

「うわ。きもちわりぃ」

佐伯は顔を歪ませた。

「まぁ俺はそういうのは大丈夫だったから速攻殺して捨てたんだがな」

綺沙は自慢げにそう言った。

「お前スゲーな。そういうとこ」

「大したことねえよ」

佐伯が褒めると綺沙が照れくさそうにそう言った。

「Gって結構すごいんだぜ。」

「そうなのか?」

「あいつは1mmでも隙間があれば通り抜けられるらしいんだ」

「へぇ〜」

佐伯が言うと綺沙はなるほどという顔で反応した。

「あとな、あの粘着テープのせいであいつの脚は屈強になったらしいんだ」

「うわ、まじかよ。きもちわりぃ」

今度は嫌そうな顔をした。

「まだあるぞ」

佐伯は自慢げに言う。

「あいつは自分に危機がおとずれると飛べるようになるらしい。そして飛んだあいつはビビってる子供や女性の方に向かっていくらしいんだよ。」

「うわ…なんだよその火事場の馬鹿力みたいな能力」

今度はおぞましいといった表情をしている。

「あと1個だけある」

「聞かせてくれ」

「あいつはな自分が死ぬ時に卵を産むらしいんだ」

「え?まじ?」

綺沙が聞き返した。

「まじだ」

佐伯が言う。

「俺、昨日のGゴミ箱に入れたわ。」

綺沙は青ざめた顔でそう言った。

「まじかよ。あいつは卵からかえるのに1日もかからないんだ。しかも1つの卵から何十匹も生まれるらしい。」

「俺もう家帰る!G潰す!」

そう言って綺沙は走って行ってしまった。

「最後のは嘘だったんだけどな。」

佐伯のつぶやきを綺沙が聞いているはずもない。

少しからかってしまったなと反省している佐伯なのだった。



その頃綺沙は…

「やべえ、あいつはそんなにすごいやつだったなんて、油断してた。」

佐伯の話を聞いて全速力で帰宅していた。

「帰ったら俺の部屋はもう見る影もなくなってしまっているのか?」

綺沙は部屋をGに埋め尽くされている様を想像した。

そんなのいやだ!と心の中で叫んだ。

「はぁ…はぁ、ついたぞ。ただいま!」

帰ったことを知らせると同時に部屋へ一目散にかけて行った。

ガチャ

勢いよくドアを開いた。しかしそこに広がっているのはGの大群ではなく、単なる静寂だった。

「……何もいない?」

綺沙はもう一度部屋を見た。何もなかった。

「嘘じゃねえかァァァァ。騙されたよちくしょォォォォォ!」

綺沙の叫びはちょうど外を歩いていた佐伯にも聞こえたらしい。

その佐伯はしてやったりと笑みを浮かべていた。

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