グイグイ来る後輩に理由を聞いたら『好きだからですよ』と言われたけど、それで?

グイグイ来る後輩が怖い

「センパイ!」

「センパーイ!」

「センパイ♪」

「セーンーパーイィーー!」

「セーンパイ♡」


…………


「なぁ」

「?、なんですか?センパイ」

「どうして俺に構うんだ?」

「それは……」

「それは?」

「好き、だからですよ。センパイ」(もじもじ)

「そうか……」

「あ、あのセンパ」

「それで?」

「……それで?」(ぽかーん)

「?、ずいぶん間の抜けた顔をしているけど、俺は何か変なことを言っただろうか?」

「え〜と、‘それで’って何のそれでなんですか?」

「言葉の通りだ。それで、他には?という」

「他には?」

「そう、他には」

「何の他にはですか?」

「だから最初から言ってる通り、俺に構う理由だよ」

「えぇー?だから……好きですって、言ってるじゃないですか。……これでも恥ずかしいんですよ?」

「……それだけ?」

「??、そ・れ・だ・け・?」

「まさか、本当にそれだけなのか?」

「そりゃあ、そうですよ?」

「……弱いな」

「弱い!?」

「理由が弱い」

「理由が弱い!?」

「弱いなぁ……」

「このセンパイ、頭おかしいんじゃないですか?やばいんじゃないですか?」

「俺はてっきり金銭目的なんじゃないかと思ってたんだよ」

「私をなんだと思ってたんですか」

「だってほら、よく帰り道で一緒になって買い食いとかしてただろ?」

「……だって、センパイと、ちょっとでも長く……一緒に居たかったんです」

「休日には買い物まで付き合わされて」

「休日も会いたかったんですよ……。口実が欲しくて………って、それくらい分かってくださいよ!」

「だから俺は真っ先に、『あぁ、これは俺の金が目的なんだな』と思った」

「人をなんだと思ってるんですか!?」

「だから買い物する時、実は後輩の財布からこっそりと後輩の分の代金をあらかじめ引いておくことにしてた」

「何やってるんですか!?センパイ、割と最低なことしてますよ?……だからあんなにお金の減りが早かったんですね……。センパイとこんなに一緒に居れるから、その代償としてお金が消えていくのかと思ってました」

「俺が言うのもなんだけど、後輩も結構変わってるよな」

「本当にセンパイが言わないでください!」



「それで、結局なんで俺に構うんだ?金銭目的でもないんだろ……?」

「なんで本当に不思議そうにしてるんですか……。だから!好きなんですよ!」

「誰が?何を?」

「わ、た、し、が!セ、ン、パ、イ、の、こ、と、を!」

「それは一般的に愛と呼ばれる類のものか?」

「類ってなんですか類って。……えぇ、そうです!愛です!愛!恥ずかしいから何回もこういうの言わせないでください!」

「それはカレーパンやオムライスなどに対する愛とは違いますか?」

「違いますよ!別次元ですよ!」

「そうか……」

「……でも、食べちゃいたい、っていうは……あるかもしれません」

「やっぱりそうなのか!?」

「センパイがお茶とか飲んでる時、『あぁ、あのペットボトルになりたい。さらに欲を言えばその中身のお茶になりたい』って思ったこともありました」

「本当にやばいのは俺じゃなくて後輩では……?」

「違いますよー、一般的な考えですよー!」

「でもこの場合、食べられるのは俺じゃなくて後輩じゃないか?」

「食べます?」

「よっぽどの食糧難になったら真っ先に候補にあげよう」

「助けてーー!センパイが朴念仁を通り越してもはやただのサイコパスになってるーー!」

「それ、よく本人を目の前にして言えるよな」

「やぁ、僕は通りすがりのイケメンB」きらりん

「何か出てきたな。まさかイケメンという単語にBという字がつくとは思わなんだ……」

「さぁ、子猫ちゃん、僕が来たからにはもう安心だよ!」きらりん

「きゃー!なんか変な人が湧いて出たー!」

「ひどい言われようだな、イケメンB」

「助けてー!センパーイ!」

「ほんの数秒前まで俺のことをサイコパスとか言ってたやつのセリフとは思えないな」

「きらりん、きらりん」きらりん

「ほら、こいつ後輩に湧いて出た呼ばわりされて、とうとう『きらりん』しか言わなくなったぞ」

「きもーい」

「ぐはっ」きらり…バタッ

「ほら、普段言われ慣れてない言葉を聞いてこのイケメンB、倒れたぞ」

「あ、どこか行きましたね」

「なんだったんだ今のは……」

「はぁ……まったくですよ」

「後輩が助け呼んだんだけどな?」

「それは置いといて」

「置いとくのか……」

「はい。……それで、あの、返事〜とかは……?」

「返事?何の?」

「好きです、に対して何か無いんですか!?」

「ありがた迷惑?」

「考えうる限り最悪の答えです!」

「いや、違うぞ?‘ありがた’というのがみそだ。ただ迷惑と言うのではなく、一応‘ありがた’と言うことで、一瞬勘違いをさせることができる」

「最悪じゃないですか。思っていた何倍もひどいことされてますよ?私」

「その隙をついて俺は逃げ出すことができる」

「逃がしませんよ?何言ってるんですか?地の果てまでも追いかけて、捕まえて、私の部屋に閉じ込めて逃がしませんよ?」

「お前、よく俺にサイコパスとか言えたな」

「これが愛ですよ」

「それはスニーカーに対するものとは違いますか?」

「もういいですよ!このくだり!」

「じゃあ、そういうことで」

「本当に逃げましたよこのセンパイ」





次の日の朝


「センパーーイ!!」

「まさか昨日の今日で話しかけられるとは思わなんだ」

「へへーん。私のセンパイへの好感度は一日でリセットされるんですよ」

「便利な設定だな」

「設定とか言わないでください!」

「というかよく一日でリセットされる好感度で俺に好きだとか言えたな」

「最初からマックスなので!」

「チートだ……」

「えへへぇ〜」(ぎゅ〜)

「なんだろうか、俺が一体何をしたというのだろうか?」

「神様〜ありがとうございます〜♪」

「かみさま〜助けてくださいぃーー」

「縁結びの神社に足繁く通った甲斐がありました」

「よっしゃ、ちょっくら縁切りの神社にいってくる」

「お供しま〜す♪」

「ちょっとー、縁切ろうとさえさせてくれないんですけどー」

「えへへ〜♪」(すりすり)

「そんで、さっきからなんで顔を擦り付けてくるの?」

「マーキングですよ」

「ちょっとクリーニング屋行ってくる」

「私が代わりに持っていってあげます。ささ、脱いでください」

「怖ーい、制服をどうするつもりなんですかー?」

「大丈夫です、新品みたいにピカピカになりますよ〜」

「それ、本当に新品なんじゃないですかー?」



「俺、『グイグイ来る後輩が怖い』ってタイトルで何かを話作れそうだよ」

「私、メインにして絶対にしてオンリーのヒロインですね!」

「そうだな、不憫にして滑稽にしてロンリーの怪物だな」

「もー、センパイの照れ屋さん♪」

「どなたかちゃんとした翻訳家の方はいらっしゃいませんか?」

「あなた専属の翻訳家がここにいますよ、セ〜ンパイ?」

「事実をねじ曲げてくるのでダメです」

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のら学園ラブコメはお好きですか?(ラブコメ集) ジュオミシキ @juomishiki

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