第83話 魔法少女大計画

 透き通るような青色が広がる空だった。

 今日は、洗濯物がよく乾きそうだ。


「ラ……ララ。ラ…………」


 ピンク色の髪を風になびかせながら、ベランダで洗濯物を干す。夫のワイシャツの隣で、娘の幼稚園スモックが風にはためいていた。

 風はほのかに甘い花の香りがした。もうすぐ、春がやってくる。空っぽになったカゴを抱えて私は室内に振り返った。

 娘がテーブルに突っ伏して痙攣していた。

 テーブルの上に置かれたホールケーキ。灰色のクリームの中に顔を突っ込んで、幼い娘がビクビクと小さな体を震わせている。


「ラララ……」


 私は鼻歌を歌ったまま部屋に戻った。

 小さな体を抱きかかえ、ふっくり膨れた頬にキスをする。頬のクリームを舐めれば、舌先にとろけるような甘さが広がった。

 丁寧に石を砕いて灰色の粉にして。それを生クリームに混ぜて、ケーキに盛り付けた。

 ママの手作りケーキを気に入ってくれただろうか。


『わたしは魔法少女ピンクちゃん……。世界を守る、正義のヒーローよ……』


 流しっぱなしのビデオから魔法少女の声がする。

 私が大好きな魔法少女ピンクちゃんのビデオは、幼稚園の娘もお気に入りで、毎日毎日飽きずに見ているのだ。幼稚園に遅刻しそうなときでも、どれだけ眠たいときでも、ビデオを最後まで見届けなければ気が済まない子だった。

 はじめて食べた薬物は娘を容赦なく眠らせた。最後まで見届けられなかったビデオが、どこか物悲しげに流れている気がした。

 明日もきっと、この子はビデオを最後まで見られない。

 今日はケーキに。明日はカレーに。明後日はハンバーグに混ぜるつもりだから。


「おやすみなさい、愛しい子」


 娘の唇にキスをする。口端にくっついていたクリームがボタッと垂れて、床を灰色に汚した。

 白い部屋。柔らかく差し込む風。ある平和な昼下がり。

 娘のあたたかな体を抱きしめながら、私はふと思い出す。

 過去。私が、都会にやってきたばかりの頃を。




***


 山田花子、魔法少女になるための大計画。

 【ステップ2。可愛くなろう!】




 信頼できるお友達に母の世話を任せ、私は十八で村を出た。

 大した荷物はない。着の身着のまま、母のボストンバッグに詰められるだけ石を詰め、それ以外は全て故郷に置いてきた。

 降りる街は特に決めていない。だから何となく電車を乗り継いで適当な所で降りた。都会であればどこでもよかったのだ。

 その街は名を「楽土町」と言った。

 不動産屋で選んだ物件はボロボロのアパートだった。空気は一年中じっとりと湿り、そのくせ隙間風は多いという、素晴らしい物件である。

 しかしそこは私にとって最高の城だった。はじめての都会、はじめての一人暮らし。母から離れて暮らす六畳一間の部屋は楽園だった。

 私はその部屋を住処に、都会生活を満喫した。

 都会は見るものすべてが新鮮だ。

 キラキラ星のように輝くネオン。店頭に並ぶ美しいファッション、立ち並ぶオシャレなカフェの数々。

 村にいれば一生味わえなかった娯楽の何もかもが私の胸をときめかせた。


 朝、起きてふわふわの甘いパンケーキとココアでお腹を満たして。

 昼、可愛いお洋服を着て街で楽しいショッピング。

 夜、ふわふわお姫様みたいな大きなベッドに飛び込んで楽しい夢を見る。

 信じられないくらい幸せだった。

 まるで、天国にいるかのような気持ちだった。



「……お金がない」


 けれど現実は容赦がない。

 すっからかんの財布を振って私は重たいため息を吐いた。もう、お金がなかったのだ。

 村を出るときにいくらか毟り取ってきた母の貯金ももう尽きかけている。一人暮らしはとにかくお金がかかる。都会であれば尚更。


「働かなくちゃ」


 金を稼がなけばならない。しかし普通の仕事をしようにも私には最低限の知識も教養も欠けている。

 ならばどうするかとしばし途方に暮れ……私はふと一つの結論に辿り着いた。

 私にはまともな頭がない。

 だけど、頭から下には体がある。



「お隣失礼しても?」


 甘苦い煙草の煙が漂う大人のバー。私は夜になるとそこへ向かい、一人でいる人間に声をかけるようになった。

 必要なのはほんの少しのアルコールだけ。

 それだけで数時間後には、初対面の相手が私の隣で眠っているのだ。


 毎晩私の横には違う男、ときには女が眠っていた。

 性別も年齢もバラバラな彼らは、朝になれば数枚の札束に姿を変えていなくなる。

 この仕事を娼婦と言うのだと、何度目かの夜に知った。

 たった一晩で何万円も稼げる仕事はあまりにおいしくて、母があれほど忙しなく働いていたのが馬鹿らしく思えるほどだった。

 金が増えるのに比例して私はどんどん美しくなっていった。

 高価な化粧品を覚え、柔らかな生地のワンピースを身にまとった私はもう田舎出身の野暮ったい娘ではなかった。

 通りすがる男達が思わずハッと振り返るのが当たり前になるほど、私という女は洗練されていったのだ。


「……俺は、ずっと一人だったんだ」

「ずっと?」

「親父もお袋もいつも兄貴ばかりを見ていた。出来の悪い俺のことなんてどうでもよかったんだ。俺はずっと苦しくて、誰かに愛されたかったんだ……」


 事を済ませた後、私はよく彼らに話をせがんだ。都会の一般的な知識を学ぶためだ。

 けれど彼らがする話は大抵自分のことだった。寝物語のように語られる話は、辛い過去のトラウマだったり、上手くいかない現状だったり、未来への漠然とした不安だったり……とにかく色々な悲痛の話であった。


 叶えられなかった夢がある。

 私の客となる人には、不思議とそういう人が多かった。


 将来なりたいものになれなかった、好きだった人と結婚できなかった、母に愛されなかった。彼らは様々な夢を抱えて、それを諦めてしまった人達だった。

 私は彼らの話を哀れに思っていつも泣いた。

 彼らの抱いてきた苦悩や悲しみを思うと、胸の奥がチクチクと痛くなって仕方がなかった。


「本当に辛かったでしょう」


 私はいつもそう言った。裸の胸で彼らを抱きしめ、熱い涙を零すのだ。すると、決まって彼らも泣きながら私に縋りつく。

 薄暗い部屋の中、乱れたシーツの上、窓から差し込む薄い月光に二人分の涙が青くきらめいた。

 痛々しい傷に貼る絆創膏のように。乾ききった喉にしみこむ一杯の水のように。彼らのボロボロになった心を私の涙が埋めていくのだった。


「大丈夫。大丈夫よ」


 嗚咽をもらす男の唇にキスをした。舌を絡め合うキスの後、そっと唇を離せば、男はだらりと脱力した眼差しで私を見つめていた。

 私はいつもキスで彼らを慰める。

 灰色の粉を隠すには、口の中が一番都合がよかったのだ。

 こうすれば彼らはまた私を求めてやってくる。より多くの金を握りしめて。


「私はあなたを愛してあげる」


 客の口から口へと私の存在は広まっていった。

 するといつしか、私と寝たいという客だけではなく、私と語りたいという客が増えていった。

 元々、私には聞き手の才能でもあったのかもしれない。それに美人であったから。皆、私が彼らの人生話に切なく頷くだけで、涙を流して救われたような顔をするのだ。

 まるで宗教みたい。


 セミナーを開きましょう、と客の誘いで私は小さな集会を開くようになった。

 なんてことはない、ただのお悩み相談会である。夢破れ苦しんでいる人達が集まって「自分の夢」を語る。そんな会。いつからか股を開くよりも、セミナーを開くことの方が多くなっていった。

 思えばその頃から、私は一人の娼婦ではなく、彼らに光を灯す存在になっていたのだろう。



「山田先生!」


 はた、と私は足を止めて振り返った。

 今日のセミナーの会場は教会だった。長い廊下をステンドグラス越しの光が鮮やかに照らしている。

 奥から駆けてきたのは一人の女子中学生だった。今日のセミナーに参加していた子だ。


「本日は貴重なお話をありがとうございました」


 彼女は興奮冷めやらぬ様子でセミナーの感想を語った。私の話にとても感動したと、自分の夢を皆の前で語るときは思わず涙が出たと、頬を薔薇色に染めながら。

 一度でいいから母に愛してほしい。確か、彼女の夢はそんなものだったはずだ。

 語り続ける彼女の髪はストレスで所々ハゲていた。骸骨のようにやせ細った手首には、煙草を押し付けられた痕がマーブル模様を作っている。


「山田先生の言っていたように、私ももう一度母と話し合ってみようと思います。そうすればきっと、母も……」

「山田先生って私のこと?」

「はい」


 山田さん。花子さん。セミナーの参加者たちはまだ娼婦だった頃の客が多く、私のことを大抵そう呼んでいた。

 先生と呼ばれたのはこのときがはじめてだったのだ。


「……うふふっ」


 山田先生だなんて! と私は思わずお腹を抱えて笑った。突然笑う私を、少女はキョトンとした目で見つめていた。


 私の母も、山田先生と呼ばれていた。

 堅実な人生を歩んできた母と、堕落しきった人生を歩んできた私。私達の人生は真逆だった。

 それなのにいつの間にか私も、山田先生と呼ばれて慕われる存在になっていた。そう思うとなんだか可笑しくてたまらなかった。

 皮肉なことだ。私はどうやら、母のカリスマ性だけを受け継いでいたらしい。


「わたし変なこと言っちゃいました?」

「いいえ。私も、お母さんの娘なんだなって思っただけ」

「はぁ……」


 ふと、母に会いたくなった。

 成長した私の姿を見せたら母はどんな反応をするだろうか。立派になりましたね、と私を抱きしめてくれるだろうか。あの暗い檻の中で。


「先生って呼ばれるのは嫌いなの」


 私は母のような人間にはなれない。母から山田先生という名を奪うのは、おこがましいことだった。

 少女は少し戸惑ってから「それじゃあ……」とおそるおそる私を上目がちに見つめる。


「聖母様、とか」


 彼女は私の背後を見つめていた。教会の長い廊下、その突き当たり。

 そこにはマリア像が立っていた。ミルク色の石を削って作ったマリア像は、石とは思えぬほどなめらかな曲線を描いて私達を見つめていた。

 ステンドグラスの光がマリア様を幻想的に照らす。

 マリア様の慈悲深い微笑みは、私の微笑みとよく似ていた。


「聖母様と山田さんってよく似ていると思うんです」

「あら、本当?」

「どちらも、私達のことを救ってくださるから」


 まっすぐに私を見つめる少女の目は、ステンドグラスの光が反射して、綺麗だった。

 私は目を丸くしてしばし黙った。それからゆっくりと微笑んで、少女の骨ばった頬をそっと撫でる。


「嬉しい」

「え……?」


 私は少女に口付けた。カサついた唇を、しっとりと濡れた私の唇が食む。少女の目が大きく見開かれた。

 薄く開いた彼女の口にシャリ、と石の欠片を押し込んだ。

 驚愕に固まっていた彼女の体から、少しずつ力が抜けていく。真っ赤な顔でその場にへたり込んでしまった少女の頭を私はそっと撫でる。石は、私に新しい名前をくれた少女へのプレゼントだった。

 私を見上げる彼女の目に、恍惚とした光がギラギラと輝いている。


「あなたが夢を叶えられますように」


 聖母様という名前を私はこれからも使い続けることになる。

 とろけた顔で家に帰った少女はその晩、母親と無理心中をしたらしい。

 恐怖に顔を歪めた母親の死体の横で、少女の死体は恍惚の笑みを浮かべていたのだと、噂で聞いた。



「夢を諦めないで」


 一人から二人、二人から十人。十人から百人。私の周りには少しずつ人が増えていった。

 都会にはたくさんの夢があった。

 叶えられなかった夢、潰された夢が、たくさんあった。


「あなたの夢は誰にも否定できない。どんな夢にだって、叶える権利がある。夢を抱いていたときの輝く瞳を、どうか今、思い出して」


 虐待をしてきた親を殺したいという夢を持つ者は二十五人いた。

 幼子に××なことをしたいという夢を持つ者は十五人いた。

 人間を食べたいという夢を持つ者は三人いた。

 ×××な×××をしたいという夢を持つ者は一人いた。


 私は彼らの夢をなんでも叶えてやった。犯罪にだって手を染めた。殺人だって数えきれないほどした。

 はじめて殺した人の顔はもう覚えていない。でも、叶った夢に涙を流して喜んでいた子の顔だけは、今でも覚えている。


「私があなた達の夢を一つ残らず叶えてあげる」


 灰色の粉は彼らの脳味噌をぐずぐずにする。そこにしみこむ私の声は、まるで天使の声のようだったといつか誰かが言っていた。


「だから」


 夢を否定され続けた私達の人生に未来はなかった、光はなかった。私達はずっと夜に生きていた。

 それでもいつかきっと夜は明ける。

 夜明けの世界で。私という乙女が、彼らの光となって現れよう。


「あなた達も、私の夢を手伝って」


 私はその会を『黎明の乙女』と名付けた。






 ずっと夢を見ていた。幼い頃からずっとずっと、一つの夢だけを見つめていた。

 いつか魔法少女になるという私の夢。

 宇宙人と約束をした大切な夢。


 夢が叶わぬまま、私は二十歳の誕生日を迎えた。



「…………」


 最後にゴミを捨てたのがいつか覚えていない。

 部屋の中はすえた生ごみの臭いが充満していた。私はベッドにぼうっと横たわって、半ば微睡んだようにテレビを見つめていた。数ヵ月間洗っていないシーツには汗の臭いがこもっている。

 ノイズが走るテレビ画面に、ピンク色の服を着て魔法のステッキを振り回す女の子が映っている。


『ワ。わた――しはマホ魔……法少女――ピンクちゃ……! 世界を守。る……豁」鄒ゥのヒーロー…………』


 幼い頃、母がいない隙を狙って魔法少女のビデオを撮ったことがある。

 ゴミ捨て場にあったピンクの布を切って張って魔法少女の衣装を作り、墓場で拾った木の枝を塗って魔法少女のステッキにして、伊瀬くんの家にあったダンボールで怪物のハリボテを作った。

 魔法少女に扮した私が怪物のハリボテをやっつける短いビデオ。伊瀬くんに手伝ってもらって撮った『魔法少女ピンクちゃん』は、私の宝物だった。

 コピーした同じビデオは何本かある。けれど私は一本のビデオを、何度も繰り返し見るのだった。擦り切れる寸前のビデオはもうノイズと砂嵐だらけでまともに見れやしないけど。

 ブツン、とビデオが消えた。


「あ」


 真っ暗になったテレビに私のうつろな顔だけが映っていた。その顔を見た瞬間、ドキンと心臓が痛くなる。私の顔はすっかり大人の女の顔になっていたからだ。

 ビデオの中の魔法少女ピンクちゃんは、随分大人になってしまった。

 ニ十歳。私はまだ、魔法少女にはなれていない。


「――――ッ!」


 絶望と怒りが同時に込み上げる。私は顔を真っ赤にして立ち上がり、取り出したビデオテープを乱暴に床に叩きつけた。


「うるさい、うるさい、うるさい!」


 十四までは楽観的だった。十六、十八の頃はまだよかった。だけど二十。子供から大人という節目を迎えた今、はじめて焦りが浮かんだ。

 いつまでも待っているとあのときは言ったけど。本当は、とっくに待ちくたびれていた。


「魔法少女になるって約束したんだもの。絶対に、なれるんだから! 私は! 私は……」


 いっぱい準備をしてきたの。都会に出て、可愛い女の子になって、応援してくれる仲間も作った。足りないものはないはずだ。あとは魔法の力を手にするだけ。

 もう二十歳よ。大人だわ。魔法少女になるには旬を過ぎてしまった。変身することもできずおばあちゃんになって死んだらどうしよう。

 繝斐Φ繧ッ縺ョ縺ャ縺|?$繧九∩は私のことを忘れてしまったのかもしれない。


「魔法少女なのよぅ……」


 ずるずるとその場に崩れ落ちて、私は声も出さずに泣いた。布団にずるりと頭をぶつければ、枕元にあったリモコンが落ちて、その拍子にスイッチが付いた。

 ちょうど魔法少女のアニメが放送されている時間だ。けれど今日ばかりは見たくない。

 苦々しく唇を噛み、私はテレビを消そうとする。けれどその直前、魔法少女が放った魔法の光が敵の怪物を貫く姿が、私の両目に映った。


「……あ」


 ぷつ、と頭皮に嫌な汗がにじむ。

 画面いっぱいに映る、魔法少女と怪物の姿を眼球に光らせた。


「怪物……」


 怪物だ。

 そうだ、なんで思いつかなかったんだろう。まだ足りないものがあったのだ。魔法少女になるには敵がいなくちゃ。

 ヒーローは単体ではヒーローになれない。だって倒すべき敵がいないんだもの。私が魔法少女であるためには、きっと敵が必要だったのだ。

 怪物さえ用意できれば完璧な舞台ができる。そうすれば繝斐Φ繧ッ縺ョ縺ャ縺|?$繧九∩だって戻ってきてくれる。そのとき私がおばあちゃんになっていようとも、きっと彼の宇宙パワーで若い姿に戻ることだってできるかもしれない。


「っ」


 だけど怪物が必要ったってどうすればいい。

 生半可な敵では駄目だ。魔法少女と対等に戦える強い怪物を用意しなければ魔法少女が目立たない。

 ならばどうする。どうやって怪物を用意する。私の理想通りの怪物を、どうやって。

 …………あ、そっか。


「そうよ、作ればいいんだわ」


 簡単な話だ。理想の怪物がいないなら一から作ればいい。

 私自身が、理想の怪物を産み育てればいいのだ。


 スッと頭の中が冷えていく。モヤモヤと渦巻いていた不安が一気に晴れるような気持ちだった。

 私はまだ、大丈夫。


「ふふ」


 理想の怪物を作ろう。いつか魔法少女が倒すための敵を作ろう。

 全てはわたしが「皆から認められる魔法少女」になるために。




【魔法少女計画。ステップ3。怪物を作ろう!】




「山田花子です。よろしくお願いします」


 私はある会社の事務員として働きはじめた。

 信者の一人がそこの社長だったのだ。学がなくともコネがあれば、会社員になれるのだと学んだ。

 金が欲しいわけじゃない。目的は、もっと違うものだった。

 男性社員達は皆私に優しかった。最初は嫌な顔をしてきた女性社員達も、悩み事の相談に乗ってやれば、ころっと手のひらを返して優しくなった。

 ろくに仕事ができずとも、社会で生きていくのは案外簡単だった。


「ね、山田さん見てよあれ」

「はい?」

「姫乃さんたらまた叱られてる」


 同僚とランチをしに外で出る途中。通りがかった営業部から、凄まじい怒鳴り声が聞こえてきた。

 怒られているのは営業部の男だった。気弱な顔にびっしょり汗をかき、怒鳴る上司にペコペコと頭を下げ続けている。そんな彼の周囲にいる営業の人達は、我関せずという様子で昼食を食べたり、談笑しながらコーヒーを飲んでいた。

 いつものことだ。最初こそ驚いたその声に、今はもうすっかり慣れた。


 営業の姫乃という男はいつもいじめられていた。

 地味な男だった。常に自身なさげに背を丸め、「すみません」が口癖になるほど謝罪ばかりを繰り返す、冴えない男だ。

 営業部の一員として働いているものの、毎月彼がノルマを達成したことはない。


「でも仕方ないでしょ。あの人、新人にも契約数負けてるし」

「あの顔で姫乃って名前でしょ? 笑っちゃうっていうか……なんか哀れ、みたいな?」

「営業は体育会系で可哀想だよねぇ。事務の方が向いてるんじゃない?」


 私は知っている。

 彼がノルマを達成できないのは、その新人のミスを庇った上に成果を奪われたせいだ。

 確かに彼は綺麗な顔ではないけれど、酷いブサイクというわけじゃない。姫乃という可愛らしい苗字だってさほど不格好にも思えない。

 事務の人間も、彼を可哀想だと言いながら、給湯室で彼の悪口で盛り上がっているのをよく目にする。

 私は全部知っている。事務の人達も営業の人達も、当然知っている。

 姫乃はただ、暇つぶし程度のいじめのターゲットに選ばれただけの、哀れな男だった。


「姫乃さんって絶対生涯独身でしょ。ねえ。山田さんもそう思うよねぇ」

「どうかしら」


 姫乃への揶揄で盛り上がる優雅なランチタイムだった。私はサンドイッチを齧りながら、適当に相槌を打って同僚の話を聞く。私の反応があろうとなかろうと、彼女達は彼の悪口を楽しんでいた。

 会社に帰ったとき、営業部の怒号は止んでいた。見れば姫乃はコンビニに昼食を買いに行ったようだった。私は同僚にさっきの店に忘れ物をしたのだと嘘をつき、席を離れた。

 数分もしないうちに彼は帰ってきた。走ったせいで赤かった顔はしかし、入口の名札かけを見てサッと顔色を青くした。かけていったはずの名札がなくなっていたのだ。

 些細なことだ。だが名札をかけずに戻れば、彼の上司はまた適当な理由を付けて彼を怒鳴る。数分後の未来を想像したのか、彼の顔はどんどんと蒼白に染まっていった。

 ……今だ。


「あの。名札、落ちてましたよ」


 タイミングを見て私は彼の前に現れた。姫乃と書かれた名札を持つ私を見て、彼はあっと声をあげる。

 姫乃は何度も礼を言った。過剰な勢いで頭を下げる彼に、私は静かに微笑んだ。名札を隠したのは当然私だ。けれど彼はそんなことちっとも気が付かない。

 目的はただ、私の優しさを彼に見せること。


「姫乃っていい苗字ですね」


 私は彼の名札を見て柔らかな微笑みを浮かべた。

 皮肉だと思ったのだろう。姫乃は苦笑して俯き、その背をまた丸める。


「……ありがとうございます。ぼくみたいな男には、似合わないですけど」

「どうして?」

「え」

「何でそんなこと言うんですか。私は好きですよ。姫乃って苗字も、あなたのことも」

「…………」

「……素敵ですよ」


 汗ばむ彼の手にそっと手を重ねる。視線を合わせ、ゆっくりと瞬きをして彼の目をまっすぐに見つめる。それだけでよかった。それだけで、姫乃の顔は薔薇のように真っ赤に染まった。

 女に慣れていないのだろう。ろくに話したこともない美しい女が急にアプローチをしてきても、疑いもせず言葉通りに受け取ってしまう、無垢な男。

 だからこそ私は彼をターゲットに選んだのだ。


「週末お茶でもしませんか。姫乃さん」


 そこからの展開はとにかく早かった。



 私達は何度もデートを重ねた。ぐいぐい積極的に迫る私といるうちに、姫乃もだんだんと本来の明るさを取り戻していった。私達が結婚するのに時間はかからなかった。

 突然の私の寿退社に会社中が驚いた。その相手が姫乃だと知って、皆は更に驚愕した。

 弱みを握られている。B専。美女と野獣……。数々の遠慮ない言葉に構わず私達は結婚式を挙げ、私は山田花子から姫乃花子になった。

 夫となった彼はとにかく私にベタ惚れだった。ロマンチックなデートに山のようなプレゼント、たくさんの愛情をくれた。

 そして、


「赤ちゃんができたの」


 結婚して半年が過ぎた頃、病院から帰ってきた私は夫に言った。

 食器洗いをしていた夫はぽかんとした顔のままグラスを落とした。私は飛び散ったガラスをスリッパの裏で踏んで、テーブルの上に母子手帳を置く。


「もう六週目なんですって」

「…………」

「男の子かしら。女の子かしらね。私とあなたの子よ、きっと素敵な子に育つわ」

「……赤ちゃ」

「私達、パパとママになるのよ」


 直後、彼は勢いよく私を抱きしめた。濡れたままの手が私の服に泡をくっつける。

 痛いわと言っても彼は私を離してくれなかった。熱く震える体と、耳元で聞こえる彼の泣き声が無性にくすぐったかった。

 いつか赤ちゃんが欲しいねと以前彼は言っていた。子供好きな人だったのだ。スーパーやデパートで子供とすれ違うとき、彼はいつも優しい眼差しを向けていた。


「あ、あ、あい。あ」

「うん」

「あい、愛してる、よ」

「うん……」


 私は思い出していた。昔のことを。会社に入ることを決めた日のことを。


 欲しいものがあったのだ。だから体と薬を使って、何人もの会社勤めの男と寝た。

 彼らは私がねだれば簡単に会社の名簿を渡してくれた。社員全員の個人情報が載った分厚い紙の、名前の欄だけを見ていった。

 七瀬、秋月、早乙女、泉、東雲、一縷、宇佐美、如月…………。可愛い苗字も、素敵な苗字もたくさんあった。姫乃という苗字を選んだことに特別な理由はない。響きが可愛かったから、そして苗字の持ち主である男が、純粋で鈍感な……つまりは扱いやすい男のようだったから。それだけ。

 山田という苗字をさっさと捨てたかったから。


 魔法少女になれるのは可愛い女の子。だから私は、とにかく可愛くなろうと努力してきた。

 外見だけじゃない。名前だってそうだ。山田花子より、姫乃花子の方が、よっぽど可愛い。

 それからもう一つ欲しかったもの。それは怪物の元となるもの。私の理想の敵に育ってくれるもの。

 赤ちゃんだ。


「私も愛してる」


 泣きじゃくる夫は気付かない。私が、冷たい眼差しで夫を見つめていることを。

 この男は今日で用済みだ。

 私が欲しかったものは。彼の苗字と、精子だけである。





「ありす」


 もうすぐ春が来る。

 白い日差しが差す、あたたかな日だった。


「ケーキを焼いたの。食べるでしょう?」

「けぇき」


 生まれた娘に、私はありすと名前を付けた。

 可愛い子だった。パッチリと大きな瞳に桃色の唇。姫乃ありすという可愛らしい名前がよく似合う。

 性格は引っ込み思案。幼稚園でも友達と遊ぶより絵本を読んでいる方が好きだった。甘いものが大好きで、好きな色は白色。将来の夢はニコニコ屋さん……。

 私は娘を大切に育てた。手作りのお菓子を与え、欲しいとねだられたものは何でも与えた。

 遊び相手のぬいぐるみだって私が作ってあげたのだ。宇宙人の繝斐Φ繧ッ縺ョ縺ャ縺|?$繧九∩をイメージして作ったピンク色のぬいぐるみ。繝斐Φ繧ッ縺ョ縺ャ縺|?$繧九∩という名前は言いづらそうだったから、あの晩彼が分けてくれたチョコレートにちなんで、チョコという名前にした。チョコ、チョコ、とありすはぬいぐるみを気に入っていつも一緒に遊ぶ親友になっていた。


 さて。ありすが生まれて四年がたった。

 そろそろ、無茶をさせても死なない体ができてきたと思うのだ。


「けーき、しろくないのねぇ」

「今日のケーキは特別なの。灰色は、好きじゃない?」

「しろがよかった」

「明日は白いクリームにしてあげる」


 今日のケーキはいつもと違う。灰色のスポンジに、灰色のクリーム、苺の赤色だけが目立ったケーキにありすは目を白黒させていた。

 それでも渋い顔でケーキを一口食べた娘は、その甘さに顔を輝かせた。大きなスプーンですくうようにケーキをむさぼり、とろとろと頬を緩めて幸せそうにぬいぐるみのチョコを抱きしめる。


「おいしー」


 私は微笑んで、娘を部屋に残しベランダに洗濯物を干しに行った。

 ありすはパクパクとケーキを食べ続けている。まだ幼すぎて疑問にも思っていないのだ。いつも小さく切り分けられているケーキがなぜホールで出されているのか。灰色のクリームに何が混ざっているのか。

 私は鼻歌を歌いながら洗濯物を干した。異変を感じたありすが「ママ」と私を呼ぶ声に気が付かないフリをするように。ありすが激しく咳き込んで、ケーキに突っ伏して痙攣しはじめたのに気が付かないように。


「ラァ。ラララ……」


 私は彼女を理想の形に育てたかった。そのためには、私に従順な子に育つように躾ける必要があった。

 もっと明るい性格になるように。私と同じ熱量で魔法少女を愛する子になるように。怪物になるにふさわしい、常に気が狂った子になるように。

 教育本はいらない。愛情もいらない。薬物だけがあればいい。


「いっぱい食べて、大きくなってね。ありす」


 返事は返ってこなかった。


 その日から私は毎日ありすの料理に薬を混ぜた。

 最初は少しずつ、慣れるほどに量を増やした。薬物の風味を隠す味の濃い料理ばかりが食卓に並んだ。

 夫はぶくぶくと醜く太っていった。私とありすの体は細いままだった。体質の違いだねと夫は言ったけど、それが薬物のせいであることを私だけは知っていた。


「ママ、聞いて! 今日も学校の子にいじわるなこと言われちゃったのよ」

「おかえりなさい、ありす」

「魔法少女なんか現実にいるわけない、って言うの。嘘ばっかり。魔法少女は本当にいるのにね」

「あらあら」


 高校生になったありすは私の理想通りの子に育った。

 明るく無邪気な性格に。何よりも誰よりも魔法少女を夢見る子に。そして、頭のネジが外れて皆から避けられる、おかしな女の子に。

 夫も、そしてありす本人も、それは生まれ持った性格なのだと思っている。幼稚園時代は引っ込み思案だった性格が、成長と共に本来の姿を取り戻していったのだろうと。

 私だけだ。ありすが本当はもっとまともな性格であることを知っているのは。

 本当は約十一年間ずっと、食事に混ざった薬物のせいで、性格を歪ませられているだけなのに。


「お腹空いちゃった。晩御飯はなぁに?」

「ママ特製の濃厚カレーよ」

「やった!」


 ママのカレー大好き、とありすは私に抱き着いてふくふくと微笑んだ。

 私の特製カレーはありすの大好物だ。とろみのあるルーと、ハチミツたっぷりの甘い味。レストランで食べるものよりずっと濃厚なカレーライス。

 多少薬物を多めに混ぜたところで、この子はちっとも気が付かない。


「いっぱい食べてね」


 うん、とありすは笑った。

 カレーに何が入っているかを知ったら。この子は同じ返事をしてくれるだろうかと、ふと思った。




 怪物を作ろうと決意してから二十年以上がたった。私はもう四十代になっていた。けれど不思議と、二十歳になったばかりのときに思い浮かべていたような焦燥感はなくなっていた。

 二十年。その間に結婚して名前を可愛くした。怪物の元となる女の子を育ててきた。

 準備は全て整ったのだ。

 あとはもう本当に、宇宙からやってくる繝斐Φ繧ッ縺ョ縺ャ縺|?$繧九∩を待つばかりだった。

 夢が叶う瞬間は突然訪れる。幼い頃に見た流星群のように、突然私達のもとに降り注ぐ。


 それは本当に突然だった。




***


『楽土町北高校のグラウンドに、局地的な隕石の落下が発生しました』


 付けっぱなしのテレビから聞こえた声に私は顔を上げた。

 もうすぐ夜になるという時間。くつくつとカレーを煮込み、夫と娘の帰りを待っていたときだ。

 速報だ。険しいアナウンサーの声と共に流れているのは、ここから遠くない北高校を映したライブ映像である。激しく揺れる画面。空からキラキラと雨のように降り注ぐ光が、校庭に直撃して、炎をあげている。

 サイレンの音がやかましい。救急車の他、何故か何台ものパトカーが映っている。まるで凄惨な事件現場を映したものみたいだった。

 北高校はありすが通う高校だ。


『百を超える流星群が降り注いだ北高校は壊滅的な被害をもたらしています。生徒や教員にも複数の負傷者が見られており、現場は騒然としています』

「流星群……」


 私はハッとしてテレビに駆け寄った。肘がぶつかってグラスが落ちる。飛び散ったガラスを足の裏で踏んで、私はテレビを食い入るように見つめる。

 足から流れる血なんてどうでもよかった。


『また校内に避難した生徒達もパニック状態に陥っており、状況は…………え、あ? な、なんだ、あれ!』


 アナウンサーの声が裏返った。映像いっぱいに、『それ』が映ったからだ。画面を食い入るように見つめていた私もそれを直視した瞬間、ゾッと心臓が凍り付いた。

 校舎の窓からそれが顔を覗かせていた。黒い体をしていた。人間の形をしているのに、人間ではなかった。

 怪物。


「ヒュ」


 その体は暗闇よりも暗かった。

 三メートルはあろうかという巨大な体の表面を、ぬるりと粘液に濡れた触手がざわめいている。

 おぞましい姿の生き物だった。それは誰がどう見たって、地球上の生き物とは思えぬ、未知の生命体だった。

 かぱりと赤黒い口が開いた。びっしり生えたノコギリみたいな歯の奥から、突然、眩い閃光が放たれる。


「キャア!」


 画面越しだというのに光は強く私の目を焼いた。咄嗟に目をつむり、しばらくしてからおそるおそる目を開け……愕然とした。

 何もなかった。

 怪物が放った光の先にあったものが、何もかもなくなっていた。

 そこにはパトカーや救急車が止まっていたはずだ。何人もの人間がいたはずだ。しかし今は焼け焦げた地面があるばかりで、他にはなんにもなくなっていた。

 ボロボロになった校舎だけが映っている。視聴者も、アナウンサーもが茫然とし、重たい沈黙だけが広がっていた。ニュースが放送中断の画面に切り替わったのは数秒も過ぎてからのことだった。


「…………」


 心臓がドクドクと脈打っている。無意識のうちに、頬を熱い涙が流れていた。

 床に落ちた携帯がさっきから鳴りやまない。多分、夫からだ。私はそれを取り上げさえもしなかった。

 頭の奥が興奮でズキリと痛かった。ぶるぶると震える唇にふと血の味がしたと思えば、鼻血が出ていたらしい。両鼻から伝う血を舐めながら、私はテレビを消して、暗くなった画面に映る自分をぼんやりと見つめた。

 興奮した顔はどす黒い赤色に染まっていた。

 真っ赤な顔の中。その目だけがギラギラと燃えるように光っていた。


 私は家を飛び出した。玄関の鍵もかけず、エプロンを付けたまま、体中を汗だくにして夜の街を駆け抜ける。

 その日の夜空を一体何人が見ただろう。藍色の空を流れて北高校に落ちていく流星群。次々流れていく光の雨。

 それは夢のように美しい光景だった。


「通して。お願い、通してください」


 北高校の正門前。騒動に駆けつけ悲痛に我が子の名前を呼ぶ保護者達の中をくぐり、私も必死に叫んだ。


「チョコ!」


 けれどそれは、娘の名前ではない。


「いるんでしょう。チョコ!」


 デコボコになった校庭を走った。抉れた地面に埋まる流星群はまだほんのり輝いて、キラキラ明るい星空が地面に映っているようだった。走りながら私は泣いていた。嬉しかったのだ。ただただ、胸には希望が満ち溢れていたからだ。

 空にきらめく美しい流星群。

 私はそれを、七歳のあの夜からずっとずっと待っていた。


「いてて……。まったく、なんてこったい。人違いをするなんて!」


 草むらから声がした。

 覗き込んだものの、そこに人間はいなかった。ただ汚れたピンク色のぬいぐるみが落ちている。ありすの親友であるチョコのぬいぐるみだ。

 そのぬいぐるみが、うごうごと蠢いていた。


「花子ちゃんだと思ったから目の前に落っこちたのに! いとこかなぁ? うーん、早いとこ花子ちゃんを探さなきゃ。どの学校にいるんだろ。今は多分、中学生くらいにはなったのかなぁ……」

「……チョコ?」

「んお?」

「繝斐Φ繧ッ縺ョ縺ャ縺|?$繧九∩?」


 私は彼の名を呼んだ。するとぬいぐるみはパチッと目を丸くして、わあっと私に飛びついた。


「うそ、花子ちゃん? 花子ちゃんだろっ。大きくなって!」

「チョコ!」


 夢じゃないかと頬をつねる。ジンジンと痺れるような頬の痛みが、腕の中のチョコの柔らかさが本物なのだと教えてくれた。何度も夢に見たチョコの声が、今、私の目の前から聞こえてくる。

 胸の奥から感動が沸き上がってきて止められなかった。

 抱きしめた体はほんのりとあったかい。汚れたピンク色の毛に頬をすり寄せて、大粒の涙を次から次へと零していく。

 私は子供のように泣きじゃくって何度もチョコの名前を呼んだ。


「ま、待ってた、のよ」


 ずっと。

 ずっと待っていたの。

 十年、二十年、三十年。ずっと。


「会いたかった…………」


 私はもうすっかり大きな体になっていた。若者という年齢も過ぎた大人になっていた。それでも心はいつまでも、あの七歳の夜のままで止まっている。

 顔をぐしゃぐしゃにして泣く私の頭を、チョコの手がもふもふと撫でた。


「随分待たせたみたいで、ごめんね」

「ううん……」

「僕は君の夢を叶えに来たんだ」


 私は涙をぬぐってチョコを見つめる。作り物の目玉に、私のキラキラと光る目が反射していた。ただ深く胸に広がる喜びに、熱い溜息を吐き出した。

 暗い夜ばかりだった私の人生にようやく夜明けが訪れた。


 ここから始まるのだ。

 山田花子の。本当の魔法少女の物語が。


「さあ、魔法少女になろう。山田花子ちゃん!」




 山田花子、魔法少女になるための大計画。


 【最終ステップ。魔法少女になろう!】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る