第17話 ほっとけない

今、クラスには来年Sクラスに入るためという名目で僕が魔法をみんなに

教えている。

恐らくSクラスなど亀とウサギのように実力は離れているはずだ。

しかし、一つ問題がある。

淡い青色の髪をした華奢な体の少年だ、

クラスで最も立場が偉いはずの伯爵家の少年が協力的ではない。

というか、生きる希望を失ってる感じなのだ。

「ねぇ、リク。あの、伯爵家のラディス=ラウス君と話してきたら?」

「はい、確かにそうですね。」


「よろしいですか?ラウス君?」

「あ、リーゼロッテ君。僕のことはラディスって呼んで。

リーゼロッテ君はすごいね。

まだ1年生なのにあんなに魔法を理解してるなんて。」

「僕のこともどうぞリクとお呼びください。

教えてくれませんか?あなたがそんな顔をする理由を。」

「もう、僕は何も信じられないんだ。だから、誰とも仲良くしない。

どうせ僕なんか………」

「あなたと同じ目をした人を知っています。」

「!?」

「君も信じていた人に裏切られたのですね?」

「うん。」

「話すだけでも楽になると思います」

「僕には幼馴染が3人いてね、男の子一人と女の子2人

4人とも貴族で3人は公爵家と侯爵家と辺境伯家で

僕が4人の中だと一番身分は低かった。

でもみんな身分なんて関係なく仲良しだったんだ。

去年12歳になった時冒険者に誘われたんだ。

僕は反対だった。貴族がなるものじゃないし

何より僕は臆病だから魔物なんか倒せないから。

だけど1人の女の子が言ったんだよ

「いつでも4人一緒でしょ。」って

僕はその言葉を聞いて決心したんだ。

最初は簡単な薬草取りとか探し物。

でも半年ぐらい経って日輪の凄さを知って、

皆んなでダンジョンに潜ったんだ。

日帰りのはずだったのにもっと深く潜りたいから

泊まろうって3人が言い出して、僕は抗議したけど

1人じゃ帰れないから了承したんだ。

翌日ボス部屋までなんとかたどり着いた僕たちは

好奇心に負けて挑んだら、当然負けて死にかけた。

僕は幼馴染の女の子の一人が好きだったから盾になろうとしたら‥‥‥

背中を押されて置いてけぼり。」

「そんな!酷い。」

隣で話しを聞いていたマリアも声を上げる

「でも、僕は死ななかった。

大怪我を負いながらなんとか逃げ延びたんだ。奇跡だった。

そしてギルドで3人に会うと、「君が自ら名乗りでたんだ。」

もし周りに伝えたら、家を潰すって言われたんだ。」


「だれですか?」

「へ?」

「その人物は今どこにいるのですか?」

放っておくわけにはいかない。

壊れたらいけない。

前の僕とおんなじ目をしているこの少年に。

「Sクラス一人とAクラスの二人なんだ。適性属性も多いから。今も休日に冒険者やってるみたい。」

「パーティー名は?」

「モノロギア。」

「わかりました。それでは、休日の昼に冒険者ギルドに来てください。」

「リク君!やっぱりいいんだ。僕が、僕が我慢すれば………。」

「そんなのだめだ、血が滲むくらい拳を握りしめて、

息ができないくらい、心が締め付けられて、そんなんじゃ、

前なんて向けません!」

「だけど……じゃあ、どうすればいいんだよ!」

「ぶちのめすのです。」

「ぶちのめす?」

「そう、過去と決別するのです!」

「……わかった、僕やるよ。」



「あ、リク君。」

「ラディス君行きましょう。」今回はマリアとラーは留守番だ。

復讐の舞台に二人は立たせられない。


「すいません、モノロギアというパーティーはどこに?」

「申し訳ございません。お伝えできません。」

「これが僕のギルドカードです。」

「うそ!?申し訳ございませんでした!

えっと、ダンジョンに潜ってます。2時間ほど前ですね。」

「ありがとうございました。」

「え?教えてくれたの?」

「はい、少々知り合いが多いので。」



「ここは!?」

青ざめた顔をしている。

「僕が裏切られた場所です。」

「最高の舞台です。いきましょう。」



道には魔物の死体ばかりで魔物は出てこない。


「ここまででいないということは、ボス部屋のみですね。」

「そうだね。」


「あ、戦ってるのはラルムとテテルとカペル、幼馴染みです。」

少年1人女子2人がボスと戦っている。やや劣勢か。

「確かに、あのレベルはあなた方では不可能ですね。」


「退いてください。こいつは僕が片付けます。」

「あ!何だ急に乱入してきて。」

火超級魔法<獄炎殲滅砲ギガ・デストロイ・レイ>

ボスの頭上に巨大で複雑な魔法文字が散りばめられた、

魔法陣が展開され、ボスを焼き尽くす。


「報酬は僕たちがいただきます。それにボスの報酬も。」

「何言ってんの。ってラディス?なんでそんな強い人と一緒なのよ!」

「早くお帰りください。ボスの報酬を受け取りたいので。」

「あの、俺たちにも少しわけてくれませんか?僕たちの闘いましたし。」

「あなた方の攻撃など関係ありません。

たとえ相手が全開で戦おうが一撃で仕留めました。」

「な!それはいくらなんでも酷いわよ!強いからって何してもいいの?」

「酷い?くくく、権力で裏切った仲間を黙らせる所業をするあなたたちが?」

「ラディス、あんた話したのね!もういいわ、家ごと潰してやる。」


「潰されるのはお前らだ!もう、言ってしまいましょう。

僕は日輪。冒険者ギルドSSランクの日輪です。」

「そ、そんな。嘘よ。日輪が私達と同じくらいの歳なわけない!」

「これをどうぞ。」相手に僕のギルドカードを見せる。

「嘘!?本物?」

「僕が狙うのは、あなた達ではない。家、家族、権力、

その全てを破壊しますかねぇ。くくく。」

「ふ、不可能だ。そんなこと。」

「王に伝えれば直ぐでしょう。国が滅ぶか、はたまた、

馬鹿な子どもに育てた貴族。どっちを切ればいいかは明確だ。

しかし、チャンスをあげましょう。

もし、そこのカペル君がラディス君に一対一で勝てたら考えます。」

「本当か?」

「えぇ、ついでにボスの報酬も差し上げましょう。」

「やったね、頑張ってカペル!」

「頑張るまでもない。」

「リク君、僕はカペルに勝てないよ。」

「誰が決めたんですか?」

「そんなの今まで一回も勝てたことないし。」

「勝ちたくないんですか?裏切られ、死にかけ悔しくないんですか?」

「悔しいさ!僕だって勝ちたいよ!」

「ならば勝てます!僕を信じて。」

「わかった。」


「カペル!僕は生まれ変わる!君を倒して!」

「かかってこい。」

相手は剣も魔法も使うタイプか。

ラディスは魔法のみ。近接戦に持ち込めないな。

「くらえ!」魔法を懸命に放つラディス。

その全てを回避し距離を詰めるカペル。

「当たらない。どうして。」

「焦ってはいけません。確実に狙いましょう。」

「雑魚のくせに僕に立ち向かうなぁ。」

ザシュ!カペルの剣がラディスに刺さる。

「これで逃げられないよね。」

「何?」ドン、ドンドン!!

剣に貫かれながら魔法を放つラディス。

「よくやりました。」

僕はカペルを蹴り飛ばし、ラディスにポーションを使う。

「ごめん…リク君、僕、勝てなかった。」

「いいえ、勝ちました。  過去の自分に。」


「ねぇ、これで許してくれるのよね?」

「許す?何を?今から僕に蹂躙されるんですよ。」

「約束が違うじゃない!」

「僕は考えると言いました。本当です。

しかし…あなた方のクズさにそんな考え飛んでいきましたね。」

かつての仲間が刺されてもなんの心配もせず、自分の事ばかり


僕は魔法で死ぬ直前まで追い込み回復させた。

「まだ、体が恐怖で動かないでしょう。

もし、僕の正体、このダンジョン内の出来事を話したら、

あなた達にこれより辛いことをしますからね。」

「ひ!?」

「わかりましたか?」

「はいぃぃ。」


「では、行きましょうか。」

「うん。」



無言で帰っていたのだが突然ラディスに話しかけられた

「リク君!今日はありがとう!僕も前を向く!」

「はい!それがいいです。」

「リク君が日輪なんて驚いたよ!でも、これからよろしくね。」

「よろしくお願いします。」


























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