第8話 「奴隷たちは供物と出会った」

 霧の街で迎えた2日目の朝。

 そして、奴隷になった2日目の朝でもある。




GM:2日目の朝だけど、どこに向かう?


ヒューマ:ザバールポイントが800ポイントあるから、『運河の通行証』を手に入れて、翡翠の塔へ向かうことはできるけど……。さすがに早すぎる予感。


マリリン:うん。そうだね。さすがに。


ヒューマ:なので、まだ行っていない東に行ってみよう!


一同:おー!


GM:君たちが天幕を出て東に進んでいくと、小道は徐々に城に向かっています。


ドリル:城?


GM:まあ、「城」としか言いようがない建物ですね。もともとの形はわかりませんが、歪(いびつ)に増築に増築を重ねて、「城」としか言えないような屋敷があります。そして、入り口は完全な鋼鉄製の扉で閉められていて、扉には蛮族語と共通語の両方で「入れば命の保証なし。さっさと帰れ、このブタ野郎! 鮮血城の主」と書かれています。


マリリン:鮮血城……。


ドリル:鮮血城は……まだ早すぎるかな!


ティファーラ:だね!




 『鮮血城』という名前だけで完全にビビるパーティ。

 コワイ。

 あ、あと! ここは『骨の川』じゃないから!




ヒューマ:……えーと、ここは(怖くて)行けないから……ここからはどこに行けるの?


GM:全部の方向に行けますよ。


マリリン:広いなー。この街。


ヒューマ:じゃあ、東に行くかー。


一同:おー。


GM:そうすると、ついに城壁に突き当たるぞ。


一同:おー……!


GM:しかし、君たちが進んできた道は城壁に突き当たるけど、その手前に高い柵があるよ。そして、最近の君たちには聞きなじみのない声が聞こえる。


ティファーラ:え? どんなん?


GM:「アハハハハ!」「キャハハハハ!」という少年少女の明るい声笑い声だよ。


マリリン:どこから?


GM:柵の向こうから。この柵は、よくある学園モノの敷地を囲っている柵のような感じだね。大体の場所はレンガなどで覆われているけど、一部が柵になっている感じ。そしてその中から明るい声が聞こえるという。


マリリン:見えないってこと?


GM:いえ、覗けば見えますよ。


ドリル:覗いてみよう。


ティファーラ:見て見てー。


GM:そうすると、門柱には『供物牧場』と書いてあります。


ヒューマ:え? 供物?


GM:そう。お供え物の「供物」です。


ヒューマ:少年少女が……。まあ、ちょっと覗いてみよう。


GM:了解。覗くのであれば、アーチから覗いてみるか、周りにある木に登って中を見てみるか。


ヒューマ:どっちの方が見やすいの?


GM:木の上に上った方が高いですから良く見えると思いますよ。


ヒューマ:えーと、木登りをしないといけないのか?


GM:するなら筋力で。冒険者レベルでできると思うよ。確か。目標値は10。金属鎧は着てないよね?


ヒューマ:ハードレザー。じゃあ、いきまーす! ……(コロコロ)……失敗。


GM:では、途中で落下する。受け身判定。レンジャーかスカウトの技能判定で、使う能力は敏捷。達成値と同じだけダメージを減らせる。


ヒューマ:てーい。……(コロコロ)……12。


GM:そうすると、落下したけど、受け身が取れたのでダメージは受けなかった。


ドリル:じゃあ、僕がいきまーす。……(コロコロ)……失敗。受け身は……(コロコロ)……。


GM:ああ、落ちたけど、受け身を取って無事でした。何を2人で遊んでんの?


ヒューマ:ってドリル、飛べるんじゃん。


ドリル:飛べるよー。


ヒューマ:飛べよー。最初から。


ドリル:だって木に登ってみたいじゃん。よし、飛びまーす!


GM:パタパタパタ。そうすると……今は「昼」か。あなたが覗いたところは大理石でできたプールがあります。そして、向こうでは全裸の少年少女たちがプールの中で戯れています。


ヒューマ:少年少女って何歳くらいなの?


GM:見てみると、下が3つ4つ。上は20歳そこそこまで。


ヒューマ:(大声で)なんていかがわしい場所なんだ!!!


一同:………(沈黙)。




 思ったよりも場を寒くしてしまったセリフであった。

 ちなみに録音を確認した結果、ヒューマの叫びの後、16秒の沈黙が確認された。

 これがラジオであれば、完全な放送事故である。最近、そう勉強した。

 良かったわー。ラジオじゃなくて。


 波よ、(俺の叫びを)聞いてくれ!




ヒューマ:……さて。ここは何もないから……。


GM:いや、リルドラケンの人。柵の中の誰かが話しかけてくるんだが。「ねえ、そこのあなた、誰?」


ドリル:どこから?


GM:プールよりはあなたに近い場所だね。そこを散歩していた真っ赤な髪の少女が話しかけてきました。歳の頃は14~15歳。


ヒューマ:「誰って……。ただの通りすがりの奴隷ですけど」


マリリン:(笑)。


ドリル:えーと……。


GM:あ、とりあえず降りて欲しいんですが。そんなに長く飛べないんで。


ドリル:あ、そっか。降りる降りる。


GM:では柵越しになりますね。


ドリル:じゃあ、「ちょっとそこまでお使いに行くだけだけど」って。


GM:そうすると、赤い髪の少女は「へぇー。私、柵の外の人を見るのは初めて」と言います。柵越しに手を伸ばしてきて、あなたに触ろうとします。


ヒューマ:ホラ、いい機会だぜ? 友達になれよ。「ねえねえサカロスの薬酒ちょうだい?」みたいな。


GM:会話になってねー!


ドリル:じゃあ、握手して。「どうしてこの中にいるの?」って聞く。


GM:そうすると赤い髪の少女は、「私たちはヤーハッカゼッシュ様に捧げられるために、ここで毎日、体を鍛えたり、踊りを習ったりしています。もし、年に1人選ばれる『供物』に選ばれることができたなら、どこかにあるっていう『翡翠の塔』で翡翠の像に変えてもらえるの」と目をキラキラさせながら言います。


ドリル:「『ヤーハッカゼッシュ様』は、翡翠の塔の主なの?」


GM/赤い髪の少女:「ええ。翡翠の像に変えてもらえなくてもカーニバルの生け贄の20人になれるだけでも」


マリリン:カーニバル?


GM:「謝肉祭」です。


ドリル:食べられるってこと? あ、これは言わないけど。なんでそんなに喜んでいるんだろう……。


マリリン:信仰ってそういうものだから。


ドリル:抜け出したいとか思っているんじゃないんだね。うーん。「僕はドリル。名前は?」って聞く。


GM:そうすると、「私はハイネ」と答えます。……という話をしていると、向こうの方で鐘が鳴り始め、ハイネは「行かなきゃ」と言います。


ドリル:「またね、バイバイ!」


GM/ハイネ:「また会いに来て下さい」


ヒューマ:しかし、どうやって会いに来たら分かるんだろう。


ドリル:その「ヤーハッカゼッシュ」という人が翡翠の塔の主で、年に1回、ここから1人を選んで翡翠の像に変えているんだね……。何のためにそんなことをしているんだろう?


ヒューマ:しかし『供物牧場』とは恐ろしい……。


マリリン:うん。


ドリル:でも、次に会う時に「中にある珍しい物、持ってきてー」って頼んだら持ってきてもらえるかな?


ヒューマ:サイアクだな、サイアク。


ティファーラ:サイアクやー。




 つい先ほどまでハイネとほのぼのとした会話をしていた人物が、内心考えていたことを垣間見てしまった瞬間であった。




ヒューマ:次か。えーと、じゃあ、どこに行く? 東は行けないから、北か南。


一同:うーん……。


マリリン:翡翠の塔、コワイから南?(笑)


ヒューマ:じゃあ、南に行くかー。


GM:了解。




 しかし、『供物牧場』のネーミングはヤバイ。

 「ソードワールドってこんな感じだっけ?」と改めて感じた瞬間だった。

 恐るべしソードワールド!

 

 正直、ハイネが供物になる未来しか予想できないよ!


 いや、実際、供物とかには、マジでなりたくないんだけど!

 絶対、選ばれるヤツやん!

 俺、ザバール様の奴隷で良かった!

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