第3話 「奴隷たちは浮民との違いを噛みしめた」

 何か時間の進め方の説明がややこしいので、メンドくさくなり出発した奴隷パーティの面々。

 とりあえず、翡翠の塔の反対側を目指すことに。コワイから。




GM:じゃあ、霧の中を南に進んでいくと……、細い小路を抜けるとかなりひらけた場所に出る。そこには年季の入った鋼鉄製の大きな扉があるよ。大門だね。

                                                                                                                                                      

ヒューマ:むう。どうやってマップを書けばいいのかわからない……(かきかき)。


GM:で、その大門は開いている。そこは広場になっている。そして広場の中央には、何と! 泉があって、多くの奴隷や浮民がそこで水を汲んだり飲んだりしています。えーと、つまり、もともとこの街は人間の街だったけれど、蛮族に占領されてしまったわけだね。その時、有能な人物たちは外に逃げ出したけど、そうでない取り残された大多数の人たちは、蛮族に支配されて、こんな感じで過ごしているという。


ティファーラ:ふーん。


マリリン:じゃあ、まあ浮民だからって即座に命のキケンがあるってわけじゃないんだ。


ヒューマ:ククク……浮民には何したっていいんだぜ?


マリリン:いや、それはよくわかんないけど(笑)。


ヒューマ:おい、浮民ども! 持ってる物を……。あれ? もしかして、浮民だから弱いってわけじゃないんじゃないかな? もしかしたら。だって、こうして生き残ってるわけなんだよね。


ティファーラ:もしかしなくてもじゃん?


ヒューマ:ヤバイ、俺たちよりも強いとか。


マリリン:もしかすると、何も持ってないから襲われないのかも。……あ、食料にはなるか。


GM:え? ドワーフの!?


ヒューマ:「マリリンはニンゲンが大好物だから~☆」みたいな。


マリリン:いや、私の食料じゃないよ? わかってると思うけど。


ヒューマ:で、ここは浮民と奴隷しかいないんだ。でも「泉」ってここで湧いてるの?


GM:もともとは公園にあるような立派な噴水があったところだね。中央のところには何かの像だった物が立っているんだけど、胸元まで壊されていて何だったかはわからないよ。


ヒューマ:あ、泉はそこで湧いているから、川はないってことなのかな。


GM:そうですね。まあ、この場所の地下にはあるかもしれませんが。


ティファーラ:えー、あっても入りたくない。地下とか。


ヒューマ:じゃあ、そこの浮民やら愚民やらに質問でもするか。『骨の川』の場所を。ちょっと誰か話しかけてー。交渉係のひとー! ……って交渉とかするのに必要な技能とかあるの?


GM:交渉に必要な能力は知力だね。


ヒューマ&ドリル&マリリン:(ティファーラに向かって)ちりょく♪ ちりょく♪ ちりょく♪ ちりょく♪


ティファーラ:あ、私の知力ボーナスが一番高いね。+4。


マリリン:すごーい。


ヒューマ:オイ、おめーら! この首輪が目に入らねぇのか! オレっちはザバール様のなぁ! ドレイなんだよぉぉぉ! おめーら浮民とは訳が違うんだよぉぉぉ!


一同:(笑)。


ティファーラ:めっちゃ威張ってるじゃん!


ヒューマ:あ、ここの水はキレイなの?


GM:うん。ここの水はみんなが飲んだり汲んだりしているからね。汚染されている様子はないよ。


ティファーラ:じゃあ、そこにいる人に話しかけてみよう。「こんにちは~」


GM:そうすると、普通の街の人々とは全く反応が違う。声を掛けられた瞬間、みんな「ビクン!」として逃げる。


ティファーラ:逃げないで~……。どうしよう。


ヒューマ:じゃあ、1人殴って……。


ティファーラ:それじゃ余計逃げるし! 「あ、逃げないで下さい! 待って下さい! 聞きたいことがあるだけです!」って。


GM:では、動きを止められるかどうか……。冒険者レベル+知力ボーナスで判定をどうぞ。目標値は9。


ティファーラ:「待って~!」……(コロコロ)……15。止まった!


マリリン:ドレス着て、ぬいぐるみ持った人が呼びかけたから?(笑)


ヒューマ/ティファーラ:「待って下さい! 私、奴隷なんです!」


マリリン:意味わからん(笑)。


GM:では、逃げようとしていた人々のうち、1人の男がチラチラとあなたの方を見ながら話を聞こうとしている。


ヒューマ:腐った死体が立ち上がり、仲間になりたそうにこちらを見ている。


ドリル:サイアクだなー(笑)。


ティファーラ:「すみません。私たち、『骨の川』っていうところを探しているんですど、そういう場所っていうか川を知りませんか?」


GM:「骨? いや、そんな川は見たことも聞いたことも俺はない」と言います。「ただ、言えることは……」そう言ってあなたの身につけている物をチラチラと見ていますが。


ヒューマ:やらしい目で見るなぁぁぁ!(笑)


GM:チラチラ。もの欲しそうな顔で見ています。


ティファーラ:リボンならあるけど。


ドリル:それは、多分、いらないね。


ヒューマ:保存食でもやればいいんじゃない?


ティファーラ:じゃあ、保存食を渡そうっと。


GM:では、男は保存食をひったくるようにもらうと、周りの連中の注目を浴びる前に慌てて口に押し込み、むせて苦しくなったのか、噴水の方に行って手で水汲んでゴブゴブと飲むというのを2回くらい繰り返します。


ドリル:そのまま喉を詰まらせちゃった。


マリリン:ご臨終です。


ティファーラ:オイ!(びし)


GM:男は「ダメだ、お嬢ちゃん。この広場から逃げろ!」と言います。


ティファーラ:「? 何でですか?」


GM/男:「ここは良い水が出る。こんな汚染されていない水が出るのは、霧の街だと、ここくらいしかないんだ。だから、みんなが水を汲みに来るんだが……蛮族たちはそれを黙認してるんだ! ……なぜだと思う?」


ティファーラ:「……うーーーん? なんでですか?」


GM/男:「……ここに来れば、いくらでも人間が手に入るからだ!」


ティファーラ:「あー、なるほど」(ぽむ)


ヒューマ:ヤバイよ、ここ!


GM/男:「この有り難いシェランセ様の噴水でも……」


ティファーラ:「シェランセ様?」


GM/男:「シェランセ様は、この街を造った方だ。それが、あの忌まわしい蛮族たちが来た時には、あの泉の水が……縊り殺された人々の血で真っ赤に染まる」


ヒューマ:つまり、「ここは危ない」と。


マリリン:そうなんだね。


GM:そう言うと、男は人々の方に戻っていきます。


ティファーラ:「ありがとうございました」


ヒューマ:ねえ、ここ危ないってー。


ティファーラ:早く、お水汲まなきゃ。


ドリル:いや、水は持ってるでしょ?


GM:うん。ザバールの天幕に戻れば水はありますからね。


マリリン:そういう目的ではないよね(笑)。


ヒューマ:どうする? 先に進むかー。


ドリル:怖いから戻ろう。


ヒューマ:いや、それじゃ何も進まないし(笑)。


マリリン:あ、そうだ。大門がいつも開いてるか、ちょっと聞いてみよう。


ティファーラ:「あの、すみません。あの大門っていつも開いてるんですか?」


GM/男:「それが、あの大門が閉まる時が……あの縊(くび)り屋の連中が……人狩りを始める時なんだ……!」


ティファーラ:え……。


GM:楽しそうですね♪


ドリル:じゃあ、早く帰ろっか。


ヒューマ:やたらと帰りたがるなー。……そう言えば、大門って1ヶ所なの?


GM:いや、ここは4方向すべてに大門があって、今はそれがすべて開いている。で、普段開いてるんだけど、狩りが始まると「ガシャン!」とすべて閉まるという。


ヒューマ:いや、それって「狩り」じゃなくて「漁」だよね。


GM/蛮族:「入れ食いだぜぇ!」


ティファーラ:養殖って感じ?


マリリン:養殖(笑)。


ヒューマ:しかし、この大門はいつ閉まるのか。今は「夕」だから、おそらく「夜」以降は危険だな。今のうちに移動しておくしかないような……。そうしないと、寝る時間やモロモロを考えても、時間がムダになるよね。


ドリル:じゃあ、移動しよう。


GM:東西南北どこでも行けますけど。


ヒューマ:このまま南に行くのは危険だよな。戻る時に大門が閉まっていたら、迂回をしなくちゃ行けなくなるし。


ティファーラ:あ、でも【ロック】で開くんじゃない?


GM:魔法が掛かっていなければ開きますね。




 後に【ロック】は鍵を掛けるという呪文であることが判明。

 正解は【アンロック】。まだ使えなかったけど。




ヒューマ:いや、それ以前に、大門が閉まっている時間帯に大門を開けて中に入ったら……


ティファーラ:あ、そうか! 指名手配されちゃうね!


ヒューマ:イヤ、そういうことじゃないんだけど……。何だよ、指名手配って。……東か西か。……うーん。じゃあ、西かな。太陽に近いから。


マリリン:何それー。




 とりあえず、記念すべき第一歩である「噴水広場(仮称)」は「霧の街の漁場」であることを知ったパーティの面々。

 時間帯により、起こるイベントも違うのではなかろうか、ということを推測したところで、「この場所へは暗い時には立ち寄らないようにしよう」と固く心に誓うヒューマ(の中の人)だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る