第2話 「奴隷たちは霧の街に放たれた」
ぴろろぴーん。
ヒューマたちは「どれいのこころ」を手に入れた!
GM:ところで大切なことを説明しておこう。まず、君たちがいる、この『霧の街』では「時間」というものがあります。
ティファーラ:時間?
GM:「朝」「昼」「夕」「夜」「深夜」「未明」の6つ。
マリリン:夜、多いなー(笑)。
GM:うん。そして「夜」から「未明」の間にウロウロしているのは非常にキケンです。ワンダリングモンスターが出ます。
ドリル:え? 街の中なのに?
GM:そう。霧の街だからね。ちなみに今は「昼」が終わったから「夕」に入るところ。君たちにとっては、しばらくの間、今いる三色の天幕が拠点になりますね。出かけてもここに帰ってくれば休むことが出来ます。
ヒューマ:あ、ここで休めるんだ。
GM:そう。で、やらなきゃいけないこととしては、1日に1回は食事をとること。取らないと体調がおかしくなってくるよ、と。
下げ友:まあ、一応、保存食は買っておいて良かった。
GM:それと、もう1つは睡眠を取らなくてはいけない。サイクルの間に最低1回。
ドリル:「夜」とか「未明」とかが1回ってこと?
GM:そうそう。それが最高でも2回。3回はダメ。1回分眠るとMPを半分、HPを1割回復できる。端数切り上げで。ただし、どこでも休めるわけじゃない。「ここで休めるよ」というところでしか休めない。今の天幕みたいなね。
ティファーラ:そっか。
GM:というわけで、君たちが装備をあれこれと揃えていると、ザバールが君たちに「ボクの考えによると……なかなかに似合っているよ」と言ってくるよ。
ヒューマ:ザバールって、そんな感じなんだ。
GM:「その似合った格好で、探し物をひとつ、してもらいたい。……これは……君たちが使えるかどうかを見るための『試験』だ」と言います。
一同:………。
「試験」というワードを聞いた瞬間にテンションが下がるパーティの面々。
だって、失敗したら、アレなんでしょ? きっと。
マリリン:「……何を探してくればいいんでしょうか?」
GM/ザバール:「ああ、欲しいものは……『ペンダント』だ」
ティファーラ:「ペンダント?」
GM/ザバール:「特徴としては……赤い宝石がはまっている。場所は『骨の川』に落ちているハズだよ」
ヒューマ:「『骨の川』?」
マリリン:「『骨の川』っていうのは、街の中を流れているんでしょうか?」
GM/ザバール:「ああ。もちろん、この霧の街の中には幾つもの川が流れている。見つけるまでの間、この黒の天幕に帰ってきて休んでもらって構わないよ」
ティファーラ:「あざーす!」あ、違った。「ありがとうございます」
ヒューマ:なんだ、その「あざーす!」って(笑)。
GM:ノリがすっかり体育会系(笑)。
ティファーラ:いや、違うよ? 今、私、言ったわけじゃないよ? 私、今、心の中で思っただけ。「あざーす!」って。
ドリル:ちょっと意味わかんない。
マリリン:ハッキリと口に出てたけどね(笑)。
ティファーラだけがこんなノリなのか。
それともエルフという種族がこういうノリなのか。
やっぱり何百年も生きる種族は少し感覚が違うところもあるんでしょうね。きっと。
ヒューマ:えっと。「……期限はあるんですかね?」
GM/ザバール:「それなりに時間が掛かるだろうからね。『骨の川』の場所も探してもらわなきゃいけないだろうしね」
ドリル:しかも、そこで潜らなきゃいけない! ……のか?
マリリン:えーと……ザバールは、『骨の川』の場所を知らないって……コト?
ヒューマ:いや、それは知ってるんじゃない? だから、その場所を探すことも含めての『試験』ということなんだと思うよ。
マリリン:あー。そういうことかー。
GM:そこまで言うと、ザバールは黒の天幕から出ていってしまいます。さあ、どうする? もうこの黒の天幕には用がないんじゃないかな?
ヒューマ:えーと、さっきの2人はいるんだよね。ルーンフォークの。
GM:もちろん。双子はここにいるから、君たちが何かを持ち帰ってくれば、買い取ったりしてくれるよ。そして、買い物もできる。
ヒューマ:「よーーーし! いくぞーーー!」
一同:「おーーー!」
ヒューマ:あ、でも、『骨の川』ってどうやって探せばいいんだ? 歩き回るしかないのか?
GM:そうだねぇ。そうこうしているうちに、君たちの周りを覆っていた霧が晴れて、東西南北に進めるようになっているんですが。
ヒューマ:!? マップがあるの?
GM:ありますよ。
ヒューマ:いや、「ありますよ」って簡単に言うけど、それってダンジョン並に地図を書かないと迷うということだよね?(笑)
GM:イヤイヤ、まさか街中で迷うとかあり得ないと思いますよ?(笑)
ティファーラ:それって絶対に迷うヤツじゃん!
ヒューマ:うーん……これってマップの上の方から始まるの? 下の方から始まるの?
GM:ここは、ほぼ真ん中。四角いブロックが集まっているというイメージでいいかと。で、霧が晴れていくと……、北のところに緑色の澄み切った巨大な塔が見えますよ。
ドリル:塔?
ヒューマ:お! じゃあ、そっち行ってみっか。塔の上からなら、河の場所がわかるかもしれないから。
GM:えーと、その前にまず……セージの判定を。難易度は11。セージ技能がない人は平目で。
ヒューマ:それってつまり、サイコロ2個振って、出た目だけで11を出すってことなんだが。
ドリル:きびしー!
一同:とりゃー!(……コロコロ……)
ここはセージ技能を持つティファーラのみ成功。
やっぱり技能の有無は判定に大きく左右する事実。
ヒューマ:やっぱ、成功はティファーラだけかー。
GM:では、ティファーラは思い出すぞ。……あれは、紛れもなく巨大な翡翠から削り出された翡翠の塔!
ティファーラ:すごっ!
ドリル:すげー! ほしー!
ヒューマ:じゃあ、その塔のところまで行って、翡翠を削り出せば……!
マリリン:そんなことしなくても塔の下に落ちてるんじゃない? カケラとか。
GM:……そして、その翡翠の塔の持ち主は、この霧の街(ミストキャッスル)の領主。塔の頂上には、この街の領主がいて、いつでもこの霧の街を見渡しているという話をカシュカーンにいるころに聞いたことがあるのを思い出す。
ヒューマ:カシュカーン? ああ、最初に依頼を受けたという街だっけ。ここから近いの?
GM:いや、この街とはかなり離れているよ。そうだね。船で行かなければならないくらいに。
ヒューマ:そっかー。しかし、これで、その塔に行っても何も得られないというか、大変なコトになることがわかった。ので良かった!
マリリン:ホントだねー(笑)。
GM:……あ、イカン。君たちがそんなことを話していると、ザバールが君たちの方へ再び来て、何かブツブツと呪文のようなものを唱えるよ。すると、君たちの耳は耳鳴りがして、舌が痺れ、頭痛がします。
ドリル:どういうこと?
GM:ザバールは「君たち、言葉が通じないと不便だろうからね」と言います。君たちは全員、蛮族語の会話が出来るようになります。つまり、この霧の街にいる間は、蛮族語のことを気にしなくていいことになりました。
一同:おおーーー!
ティファーラ:いい人だー。
ヒューマ:よし、行こう! でもどこへ行けばいいんだ? 北には行かないからそれ以外で。いずれにしても誰かに『骨の川』の場所を聞いたりしないといけないな。呪文使いの人たち、呪文で何かできないの? だって、俺たちは、剣を振るうだけのお仕事なんだからよぉ?
ドリル:そうだそうだ。俺たちは尻尾を振るだけのお仕事なんだよぉぉぉ!
ティファーラ:しっぽ?
GM:うーむ、それは意味が違っている(笑)。
ティファーラ:できなさそう……かなー。
マリリン:じゃあ、ここにいる双子のイケメンに聞いてみよー。
GM:そうすると、イケメン2人は、お互いの顔を見合わせてから「「この任務については、あなた方にお任せするよう、ザバール様から言われております」」と拒絶します。
マリリン:ですよねー。
ヒューマ:まーダメモトだから。じゃあ、とりあえず北以外の安全なところを目指そう。
マリリン:そうだそうだー。川のニオイのする方に進もー。
ヒューマ:お! そう言えば、川のニオイってするの?
ティファーラ:何か、臭そうだね。川のニオイ。あ、「マスク」買っておけば良かった!
マリリン:「マスク」なんてあるの?
ティファーラ:うん。あった。買ってないけど。
マリリン:じゃあ、仕方ないね。
ヒューマ:よし、とりあえず塔の反対側から行ってみよう! つまり、「南」から!
GM:りょうかーい。
マリリン:あ、でも、これで出かけちゃって大丈夫なの? 夕方になっちゃうんじゃないの?
ヒューマ:まだ「昼」だから大丈夫なんじゃないの?
GM:移動して、そこでイベントがあると「夕方」になる。
ヒューマ:ん? ってことは、移動してイベントがあって、その後、帰ろうとするしたら、「夜」になってるってコト?
ドリル:つまり、ワンダリングがあるってこと?
GM:移動して「夕方」になるけど、そこでイベントが発生せずに戻れば、ワンダリングはない。
ヒューマ:ふうん? まあ、取りあえず行くしかないかー。
マリリン:そうだねー。
移動のルールはイマイチわかんないけど、取りあえず先に進む!
進まないと何も進まないからね!
でも、「夜」以降はとてもヤバイことはわかった!
具体的には、ワンダリングとかワンダリングとかワンダリング!
あと、GMがやたらと夜にしたがっていることとかね!
……ところで、ワンダリングって……とりあえず、ゴブリンしか出ないってことでいいんだよね?
だって、ワタシたち、まだ駆け出しの奴隷なんですよ?
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