第8話

「おーい、敦史」

リリスは、俺の頬をペチペチと叩いている。俺は、リリスの声とその少しの振動で目を覚ました。

「俺は…」

時刻を見ると13時を回っていた。

「やっと、起きた!敦史、大丈夫?」

一瞬リリスが俺の彼女に見えたのは気のせいだろうか。


「そういえばね、またピンポーンってなったんだよ。リリィ、音がなったところに行ってみたらね、女の人がいたんだ。普通の人なら、リリィのこと見えないのに。なんか、リリィのこと睨んでいるように見えたんだ」


もう一回鳴っただと?もしかして、またあの女か?それにしても、怖すぎる。もはや、男につきまとうストーカー気質の幽霊みたいじゃんかよ。

「それ、何分前だ?」

リリィは、指を折って数え始める。

「うーんとね、あの時計が12をちょうど指したとき」

ちょうど12時。1時間前か。それにしてもちょうどって…やはり人間ではないな。


「あ、そうだ!」

リリスは、何かを思い付いて台所へ向かった。何をするかと思えば、小瓶に入った塩を俺のところに持ってきた。

「あのね、敦史が気絶ねむっている間にテレビの電源つけたの。そしたら、しんれいとくしゅうやってて終わりごろに塩を撒いてたんだ」

…それは違うんじゃないのか。そもそもその小瓶に入っている塩のメーカー知らないし。


「気持ちは嬉しいが、それは普通の塩だと思うぞ」

俺は、適当に教えてあげた。

「じゃあ、敦史は、あの女のゆうれいに呪われるの?」

リリスは、遠慮なく言った。もしかしたら、リリスが一番怖いかもしれない。それに呪われるのは俺ではなくて親父な気がする。


「魔界にはゆうれいがいないからよくわかんないよ」

確かに。いたとしても、サキュバスとは縁がないと思う。

「と、とりあえず、もう忘れようぜ」

俺は、自分に言い聞かせるようにリリスに言った。





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