第142話 アヤちゃん
「ところでさ、ゆりかさんって~、ナミちゃんのことどう思ってるの?好き?」
一緒に鈴さんの物件の壁紙貼りをしていたところに、突然のアヤちゃんの質問に空気が止まりました。学生の頃の飲み会トークを思い出しましたが、この作業の間に素面で切り出してくるとは、どういう風の吹き回しであったのか。
「ん・・・?なに、急に?」
いくぶん動揺し、短く返すのがやっとでした。
「ナミちゃんはゆりかさんのこと好きだと思うし、なんか、じれったくなっちゃって・・・言いたくなかったらいいんだけど。」
アヤちゃんは楽しげにつぶやきました。私はあたりを見回しました。ナミさんや鈴さんは外で作業をしているはずでした。子ども達も、この日は外で遊んでいました。
「えーと・・・そうだな~・・・それはもちろん、いつもすごくお世話になっているし、良い人だと思うし・・・うん、好きは好きかな。」
少しまごつきましたが、なんとか答えました。本当はもっと、私は彼のことを深く慕っていましたが、軽く言葉にすることはできませんでした。
「それって、いい人ってだけ?男性としては見れていないってことかな?」
さらに詰めて質問するアヤちゃんに困惑しました。この人は何を言わせたいのか。困ったものだと思いました。
「ん・・・そんなことないよ。ナミさんは男性としても素敵な人だと思ってるけど・・・でもあの人は出来すぎていて、私にはまぶしいんだよね。優しいし、子ども好きだし、面倒見も良いし、いろんなことができて、頭も良いし・・・純粋な人だから。」
ナミさんの美点はいろいろありますが、すべてを一度に言うことはできないと思いました。
「は・・・?ゆりかさんにはナミちゃんってそんな風に見えてるの?なんか予想外・・・そこまでとは思ってなかったんだけど。」
アヤちゃんは声をたてて笑いました。別に笑うところじゃないのにと思いました。
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