第135話 奇遇

 仕事の空き時間、中心部のカフェで食事をしていると見覚えのある人の姿が目に入りました。成田さんに似た人だと思っていたら、どうやら本人のようでした。つい嬉しくなって声をかけたくなりましたが、他の人もいるとわかり思いとどまりました。一緒にいたのは女性で、小さな子を連れていました。


 声をかけるのは遠慮しましたが、成田さんの相手の人には興味をひかれました。仕事のお客さんなのか、あるいは古い同級生とか・・・長い黒髪を束ね、どこかはかない雰囲気の綺麗な女性でした。まだ2歳か3歳ほどの、愛らしい女の子が隣に座っていました。


 どのような知り合いなのか想像しましたがわかりかねました。旧友であれば、もっと気のおけない雰囲気があっても良いような気がしました。お客さんならば、カフェで会うというのも妙な気がしました。


 違和感があったのは、成田さんとその女性の空気感です。楽しそうな、朗らかなものとは言いかねました。よそよそしく、冷ややかな感じすらしました。小さな子どもを連れて会うならば、ある程度親しい友人とか、親戚のような気がしたものですが・・・あのように気づまりそうな相手とはいったいどのような間柄といえるのか。


 次第に疑問が深まりましたが成田さんに聞いてみれば良いのだと思いました。街で偶然、彼を見かけたことを・・・多少の違和感はありましたが、どんな知人であったのか、確かめてみたい気がしていました。

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