第133話 磁力

 体の結びつきとは強力なものです。他の人にとってはわかりませんが、私は体の絆ある人とは、たやすく離れられない気がしたものでした。


 後になって思えば、私と成田さんの関係は、かつての私と貴之との関係にも似ていたような気がします。


 成田さんは貴之よりも優しく、美点が多くあったので気付かずにいました。そして体を重ねた男性は、私にとって絶対的な存在でもあったのです。


 貴之と成田さんが似ているとは言いたくないのですが、私は成田さんとの関係に、次第に心削るようになっていました。気を遣ったり、顔色をうかがったり、対等な恋人同士としては、いくぶん不健全な方向へ傾きつつもありました。


 時に冷たくされ、心離れてしまったときほど私は彼を求める気持ちが強くなりました。距離を置こうとしても、強力な磁力に引きつけられるように、私は彼へと引き戻されていました。


 折に触れ浮かび上がるこの人の冷たさ、不安定さ、幼稚さとも言える側面に心乱され、ストレスフルに違いないはずでした。なのにどういうわけか、そういった激しいやりとりもまた、ふたりを強く結びつける作用があったようなのです。


 冷静な、客観的な視点があったならば、私達の関係はそう長く続けるべきものではないように映ったかもしれません。


 私は貴之との結婚生活で学んだはずではなかったのか。なのに気付かぬうちに、かつてのような関係に陥ったのは皮肉な事実でした。


 成田さんとぶつかったり、悩むことがあっても、彼と別れるつもりはありませんでした。

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