第117話 内覧
「リビングの広さはまあまあですね。こちらはキッチンですか、広いですね。おっ、これは、一度交換されていますね。」
築年数が40年近くの古い物件でしたが、意外とキッチンは新しく見えました。
「そうなんですよ。バスルームも、どこかの時点で入れ替えされているので程度は悪くないと思います。」
川谷さんが説明して下さり、キッチンから続くバスルームも見せてもらいました。清掃は必要でしたが色合いも明るく悪くない造りでした。
「おお、ユニットバスですね。昭和のタイル風呂だと敬遠されますからね。水回りがリフォーム済みだと有難いですよね。」
ナミさん達の物件では古いタイル張りのバスルームも見たことがありました。ナミさんは床に専用のシートを貼ってリフォームをしましたが、ユニットバスならばそれらの作業は必要なく、費用や時間のコスト的にも好ましいのでした。
「ここは売主さんが貸家として回していた家なので、ある程度修繕されながら住まれていたようです。今回は売主さんがもうご高齢で、少しずつ物件を手放したいとの事で・・・」
「なるほど。壁もキレイめだし、このまま行けるかもですね。修繕も手がかからない方だと思います。ゆりかサン、いかがですか?」
「そうですね・・・駐車場も広いし、全体的にきれいで条件は良いと思います。2階も見せていただいて良いですか?」
「もちろん、どうぞ。階段は急なので気を付けて下さい。」
川谷さんが声をかけてくれました。
「古い家ってたいてい階段が急ですよね・・・」
「片側は手すりがついていますね。この存在、大事ですよね。」
「うん、思いやりですかね・・・?」
などと話しながら2階の部屋を見せてもらいました。絨毯を敷かれた六畳ほどの和室と小ぶりな洋室がありました。洋室とはいえ、古い床板の模様が昭和感満載でした。
「この絨毯は・・・微妙にサイズが合っていませんけど、畳の上に敷いているのかな?」
ナミさんは和室の絨毯をめくって下の畳をチェックしました。
「おお、下の畳はキレイですよ。オーナーさんが、畳が傷まないように敷いたんでしょうね。この部屋の床は修繕しなくて良さそうですね。」
「そうですね。壁紙は、少し古びているから替えたくなりますけど・・・私でもできそうですね。」
畳が綺麗なままならば、壁を張り替えれば心地よい和室になりそうだと思えました。
「隣の洋室は、もう少しキレイにしたくなりますね・・・化粧合板の壁と床の模様も古くさいので・・・でも、私は床の修繕はやったことがないので厳しいです・・・」
昭和時代の木目調の壁は溝があるのでそのまま壁紙を貼ることはできませんが、ナミさん達がパテで溝を埋めてから新しい壁紙を貼る作業を一緒にしたことがありました。手間はかかりますが、現代らしい壁に生まれ変わらせることは可能でした。
「床は、クッションフロアを貼るなら1日でいけますよ。ワタシがやっても良いですし。天井も塗り直しですかね。これも1日かな。」
ナミさんはこともなげに言いました。
「え、それは有難いですけど・・・でも外の換気扇の交換も私はわかりませんし、コーキングも・・・自分ではできない、わからない事が多すぎます・・・」
これまで見てきて、この物件が貸家として魅力的なのは理解していましたが、自分で修繕、管理をすると思うと腰が引けてしまうのでした。
「そもそも私、クルマも持っていないですし・・・考えてみたら、ここに通うだけでも難しいかも・・・」
いままでナミさんや鈴さんのお手伝いを続けてきましたが、いざ自分が物件を持とうとすると、多くのハードルがあることに今さらながら気づかされていました。
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