第109話 成田さんへの思い
それでも、もし仮に私がナミさんに惹かれていても、私達がどうこうなることはないのだと思っていました。
ナミさんは私にも優しくしてくれますが、他の人にもいつも優しいのです。私のことを特別に思ってくれているとは考えていませんでした。
ナミさんと作業や車の中でふたりきりになることが何度もありましたが、私達は男女らしい雰囲気になるわけではなかったのです。ナミさんにとって私はそういった相手ではないのだろうという気がしていました。おそらく同志のような、気を遣わなくてもよい異性の友人といった位置づけかもしれなくて・・・
それで構わないのでした。私は成田さんとお付き合いしていて、愛されていると感じていました。彼は知り合った頃から積極的で、私自身も初めから、彼に惹かれていました。
私の恋人は成田さんであり、ナミさんよりも先に出会ったのは成田さんです。
パリまで会いに来てくれた時は感激しましたし、特別な時間を過ごすことができました。その後も私の仕事について協力してくれたこと、私との関係をつなげていてくれたことに感謝していました。
私はずっと、成田さんの独特の雰囲気にどきどきしていて、いつも秘かに彼のことを見入っていたい気持ちになるのでした。どちらかと言えば受け身のようにしていたものの、内心では彼に夢中でした。
多少風変わりなところがあり、世間ずれしていると感じる時もありましたが、正直な人なのだと思っていました。
意外にお料理も上手で、いろいろ美味しいものを作ってくれて、尽くされている幸せを感じていました。そんな男性がこの世にいたのかと感銘をうけました。
立派に事業をされていて経済力があるのも素敵ですし、金銭感覚も私とはまるで違っていましたが、それでいて私にも合わせてくれる気遣いがありました。
機嫌のよい時、“私のゆりか”と呼ぶところも。くすぐったく、嬉しい気持ちになりました。
だから成田さんも、心配なんてしなくても良いのに。私は成田さんのことが大好きで、彼との関係を大切にしてゆくつもりでした。
この頃は、確かにそう思っていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます