第100話 一線
成田さんを、好きになっても良いのかな・・・?
彼のマンションを後にしながら、まだ信じがたい気持ちで心の中で呟きました。
いや、私はもう彼を好きになっている。好きになって良いとか悪いではなく、もう私は彼を好きになってしまった。あんなに素敵な男性が他にいるだろうか?お料理ができて、パンまで作れるなんて!
そのうえ、今日はキッシュを作ってくれると言うし・・・
そう言えば、昨夜私達は一線を越えてしまった。もうお互いに大人だし、普通のことかもしれないけれど、どうしよう・・・
この点は、私にとって深刻な事実でした。私はかつて、体の関係を持った相手とは結婚するという考えの持ち主でした。過去の人である須藤との交際はこの限りではありませんでしたが、そして世の人々がこのような考えではないらしいことも承知していましたが、私にとっては根強い感覚でもありました。
成田さんは、結婚とか、考えているわけではないのかな・・・?
彼の年ごろならば既婚の方も多いはずだと思いました。確か、結婚したことはないと言っていたので、ずっと独身だったのでしょう。
彼と知り合った頃は、きっと既婚者だろうと思い込み、須藤との関係のようになるのは嫌でした。そして彼が独身だと知った時には嬉しく思いました。
ですがこうなってみて、彼はもしかして、独身主義の方なのでは・・・と想像すると、戸惑う自分がいました。
そしてそんな自分に再び驚きました。私はもう結婚なんてしたくはないと思っていたはずでした。それなのに・・・
急に、自分の思いが心もとなくなりました。私は何を考えているのだろう?成田さんと私はお付き合いしていると言えるかどうかもまだわからないのに。会社の人にも秘密にしておきたいと言われましたし、彼が真剣なのかどうかもわかりかねました。
まだ私達は、始まったばかりだから・・・
いまの段階で、考えすぎても仕方がないと思いました。いまは、彼を好きだという気持ちだけで良いのかもしれない。結婚とか、将来とか、そんな考えは気にしなくて良いのかもしれない。また誰かを好きになれたことを喜んでもいいのに。
ですが私は、真剣じゃなければ嫌でした。本気で愛し合っている人としか、触れ合うのは嫌でした。
そんな自分は重い女なのだろうかと心をよぎりました。
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